会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

監査業務における署名・押印に関する実務対応について(日本公認会計士協会)

監査業務における署名・押印に関する実務対応について(PDFファイル)

「第5回新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた企業決算・監査等への対応に係る連絡協議会での日本公認会計士協会説明資料」として、「監査業務における署名・押印に関する実務対応について」という文書が公表されました(2020年5月8日)。

政府において、新型コロナウイルスの感染拡大や感染予防措置を支援するための方策として、対面・押印の廃止について検討がなされていることや、金融庁/法務省/経済産業省が連名で公表した「継続会(会社法 317 条)について」で、決算や監査実務の遂行に当たって書面への押印を求めるなどの慣行は見直されるべきとされていることを受けて、署名・押印に関する実務の現状や、監査法人(個人事務所も同様)で予定している対応を説明しています。

具体的には、監査報告書と経営者確認書の署名・押印に関する実務の現状と対応を説明しています。

本文書によると、監査報告書への署名・押印については、以下のような対応を予定しているとのことです。ただし、個々の監査業務によって具体的な対応は異なり得るとしています。

・監査対象会社に対して、記名+㊞を記載した監査報告書改竄不能な電子媒体(例えば、PDF 形式)にして電子メール等の方法で提出する。

計算書類(最終版)と監査報告書のファイルを PDF で結合した上で、修正不能な設定とする。
→ 紙面での袋綴じを行うことなく、監査の対象を明らかにする。

・監査報告書への署名・押印と袋綴じは、株主及び債権者から閲覧請求がされ得ることを踏まえ、可能な限り、計算書類等の備置きの期日より前(会社法第 442 条参照)に行う。なお、署名・押印の対象とする監査報告書の部数は、合理的な範囲で減らすことに努める。
→業務執行社員と 事務職員の出勤を減らしつつも、公認会計士法の遵守や監査報告書と財務諸表の一体的利用を可能とすることを図る。

経営者確認書については、以下のような取り組みを進めているとのことです。

・記名+㊞を記載した監査報告書の交付と交換に、署名済又は記名済の経営者確認書改竄不能な電子的媒体(例えば、PDF 形式)でいただく。

・後日、署名・押印済の監査報告書と引き換えに、署名又は記名・押印済の経営者確認書をいただく。

監査報告書、経営者確認書とも、電子認証のようなかっこいい方法はとらないようです。後日、EDINETをみたり招集通知を入手してチェックすれば、監査済みの財務諸表と(仮)提出済みの監査報告書どおりであるかを容易に確かめることができるので、それでよいのでしょう。

ただし、先日も、監査人のレビューが未了(当然四半期レビュー報告書原本未入手)なのに四半期報告書を提出してしまった会社が問題になっていました。監査人と会社との間で、事前によく打ち合わせしておかないと、トラブルが生じるおそれもありそうです。

学校法人監査では、監査済み計算書類と異なる計算書類が文科省に提出された(監査報告書も改ざんされた)という例もあるようです。

コメント一覧

kaikeinews
最終的な目的としては、監査報告書の利用者(株主や投資家)に対し、それが真正なものであるという保証が与えられればよいのでしょう。現行制度では、金商法監査にせよ会社法監査にせよ、開示される監査済財務諸表が真正であることの確保は、被監査会社の責任です。したがって、監査報告書に関する電子認証を監査報告書利用者が直接使うような仕組みは不要でしょう。

あとは、被監査会社と監査人の間の監査報告書(監査対象である財務諸表が添付されたもの)のやりとりにおいて、電子署名の仕組みを使うかどうかという問題になります。その場面で、紙にするか電子署名付きの電磁情報にするかは、どちらでもいい(手間がかからない方でよい)ように思われます。

税務申告の場合は、会社の場合でも、日本全国で数百万の会社があり、何万人もの税理士がいるわけです。税務当局が、その無数の申告書を効率化のためにデータで受け付けるとなれば、本当に税理士がチェックしたのかを確かめるために、税理士の電子署名は必須なのでしょう。

被監査会社と監査人の間のように、1対1の関係であれば、紙だろうがデータ(電子署名が必要)だろうが、効率としてはあまり変わりはないように思われます。もちろん、監査報告書以外のコミュニケーションは、ネットなどを使って行うことも多いのでしょうが、そこでは、電子署名のような厳密な手続は不要でしょう。
 
インド会計士協会は4月に電子署名を認めることにしたそうです。電子署名の要件を満たすものです。
また、我が国でも税理士その他の士業では電子署名が利用されています。
今回の記名+〇印の編集制限PDFでお茶を濁すことになったのは、現状に照らし今回に限り緊急避難措置としてやむを得ないと思いますが、我が国会計士業界のデジタル化の遅れを露呈した出来事であり、今回はともかく、第2派以降で同じことを繰り返せば、物笑いの種でしょうね。
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