ロシア中央銀行が、銀行の時価会計の凍結や外貨換算レートの例外を認めるなどの措置を取るという記事。
「ロシア中央銀行は17日、通貨ルーブルの急落に対応するため、銀行が保有する有価証券の時価会計を一時凍結すると発表した。外貨建て取引の際に現在の為替相場を適用せず、7~9月期のレートを使う例外措置も認める。」
「外貨建て取引の際に」というより、期末の為替換算のときに、まだルーブルが大きく下落していない7-9月期のレートを使うということでしょう。さすがに、外貨建ての取引を決済するとき(たとえばロシアの会社がドル建ての借入を返済するとき)には、その時点のレートを使わざるを得ないと思われます。
Russia Tries Emergency Steps for Second Day to Stem Ruble Plunge(BloombergBusinessweek)
こちらの記事によると、リスク資産の評価において第3四半期の為替レートを使うことを銀行に対して容認するということのようです。また、ロシアの会社は3月末までに返済しなければならないルーブル建てでない借入や債務が約203億ドルあるそうです。
The package of measures allows banks to use the third-quarter exchange rate in valuing risk-weighted assets and imposes a moratorium on mark-to-market accounting. Russian companies face about $20.3 billion in non-ruble loan and debt repayments before the end of March, according to data compiled by Bloomberg. The ruble has dived 35 percent this quarter.
会計処理を変えたとしても、これだけの外貨を調達しなければならないという事実は変えられません。
現在のレートでは銀行監督上の自己資本比率を満たせなくなる銀行もあり、換算レートの例外措置は重要な措置だそうです。
“The most important measure is this use of third-quarter valuation for risk-weighted assets,” Natalia Berezina, banking analyst at UralSib Capital, said by phone. “This is a big boost as some banks would fail to meet central bank regulatory capital ratios at their current levels.”
Bank of Russia Bolsters Lenders as FX Debt Payments Loom(Bloomberg)
当局が、銀行に損失計上を遅らせることを認めていた例として、バブル崩壊後の日本において貸倒引当金不足を当局が容認していたことや、2008年の世界的金融危機の際に保有資産の一部の損失計上を遅らせることができるように、欧米の監督当局がルールを変えたことなどを挙げています。(日本がロシアのお手本だったということでしょうか。)
Authorities throughout the world have a long history of letting banks delay taking losses. In the 1990s, after the Japanese housing bubble popped, regulators allowed banks to keep loan loss reserves at historic lows for years and postpone implementing new global capital rules.
At the height of the 2008 crisis, U.S. and European regulators relaxed accounting rules so that banks could delay taking losses on some holdings. While regulators toughened global capital standards, they delayed implementing them for more than 10 years to give banks more time to recover. European regulators permitted banks to mark euro-zone government bonds at prices that didn’t reflect Greece’s default and the decline in other member countries’ debt.
日本の旧大蔵省・金融庁が損失先送り政策をとっていたというのは、世界の定説になっているようです。
ルーブル暴落ショック、「ロシア売り」止まず(東洋経済)
「第一の理由はロシアがその後、外貨準備高を積み上げ、約3700億ドルあること。これはロシアの月平均輸入額の15カ月分に相当する。民間債務は2000億ドル程度で余裕がある。ただし、相次ぐ通貨介入でその減少は避けられず、原油安がどこまで長引くかに懸かる。
第二にロシアに対する海外銀行の与信の規模が小さいこと。特にロシアと関係が深く景気が低迷している欧州は不安視されるところだが、みずほ銀行の唐鎌大輔チーフマーケット・エコノミストは「14年66末のBIS(国際決済銀行)統計によれば、欧州系銀行の与信の55%は欧州域内向けであり、ロシア向けは1%未満にすぎない」と説明する。・・・」
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