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焦点:シャープ偶発債務、鴻海再建案に不透明感 精査結果カギに(ロイターより)

焦点:シャープ偶発債務、鴻海再建案に不透明感 精査結果カギに

偶発債務により、鴻海(ホンハイ)精密工業とシャープの正式契約が延期されている問題のやや詳しい記事。

「鴻海によると、シャープが鴻海に偶発債務の存在を知らせたのは24日朝。関係者によると、シャープのファイナンシャル・アドバイザー(FA)を務めるみずほ証券から、ホンハイのFA、JPモルガンに対して送付されたメールに、債務のリストが添付されていた。

偶発債務は、今は現実化していないものの、将来において一定の条件の下で発生する債務を指す。このため現実に負債が発生する可能性を精査し、どの程度の債務規模になる可能性があるのかを判断する作業が必要になる。

シャープと鴻海は現在、監査法人を交えて、リストの仕分け作業に入っている。関係者らによると、すでに公表している案件や「2審まで勝訴で進んでいる損害賠償請求なども入っており、債務として認識されない可能性が高いもの」も含まれおり、最終的にどの程度資本をき損する規模になるのかは不明だ。

シャープは偶発債務について「会計基準に基づき、有価証券報告書、四半期報告書等で適切に開示している」としている。」

資産査定の中で当然論点となる事項なのに、なぜ急に出てきたのかという疑問もあります。

「M&Aの専門家の中にも、シャープの姿勢に疑問を投げかける声がある。ある外資系証券の幹部は「資産査定の中で当然、チェックされるべき事がら。第三者割当増資の直前にこんなかたちで(偶発債務の存在が)明らかになる例は聞いたことがない」という。

ただ、一方で「鴻海の資産査定の作業に、手抜きがあったのではないか」(別の専門家)との指摘もある。」

開示に関しては、会社は、会計基準に従ってやっているといっているわけですが、偶発債務については、基準レベルでは「企業会計原則」の「貸借対照表原則」でふれているだけで、そのほかでは、表示のルールである財規(ガイドライン含む)ぐらいしかないように思われます。

(財務諸表等規則より)

「第五十八条  偶発債務(債務の保証(債務の保証と同様の効果を有するものを含む。)、係争事件に係る賠償義務その他現実に発生していない債務で、将来において事業の負担となる可能性のあるものをいう。)がある場合には、その内容及び金額を注記しなければならない。ただし、重要性の乏しいものについては、注記を省略することができる。」

保証債務(会計士協会の指針があったはず)はどの会社もきちんと書いているでしょうが、そのほかのものはばらつきがあるかもしれません。

シャープの場合、どうなのかはわかりませんが、きっと監査人は、問題のリストを見ながら、初耳だというものがないかどうか、チェックしているところでしょう。重要なもれがあったら大変です。

もちろん、偶発債務は期末日現在の債務(+後発事象で報告日までカバー)を開示すればよいので、その後の状況変化や経営意思決定により発生した新たな債務やこれから発生しそうな債務は対象外です(その中には引当金に昇格するものもあるかもしれない)。

資産査定では、それらも含めて、チェックされるはずです。

当社と鴻海精密工業との最終契約に関する報道について(PDFファイル)

シャープ 「偶発債務」で交渉延長 契約締結は3月上旬に(毎日)

「高橋社長は会談で、偶発債務の内容が支援決定前日になって示されたことを陳謝。鴻海は「大部分が過去に協議した際、知らされていなかった。現状をはっきりさせ、完全な解決策がまとまるよう望んでいる」とする声明を公表した。ただ、鴻海関係者は「手を引くような話にはなっていない」と話し、シャープや主力行も「白紙になることはない」とみている。」

「シャープも鴻海も、認識の違いが生じた理由を説明していないが、主力行首脳は「(3500億円には)開示する必要のない相当低いリスクまで含まれているのでは」と指摘。シャープ内には官民ファンド・産業革新機構の支援案を支持する声も根強く、「鴻海の支援案に不満を持つ人たちが、出す必要がない情報まで勝手に鴻海に示した可能性もある」として、シャープの情報管理のずさんさを指摘する見方もある。」

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