会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

東京証券取引所への「改善報告書」の提出に関するお知らせ(ENECHANGE)

東京証券取引所への「改善報告書」の提出に関するお知らせ(PDFファイル)

ENECHANGE(東証グロース)のプレスリリース(2024年9月24日)。

東京証券取引所の「改善報告書の徴求及び公表措置」(2024年8月23日)に応じて、「改善報告書」を提出したとのことです。

「改善報告書」も添付されています(全25ページ)。報告書は、東証のウェブサイトでも閲覧できます(改善報告書の公衆の縦覧:ENECHANGE(株))。

改善報告書は以下のような内容です。

過年度決算への影響は、3~4ページです。「親会社株主に帰属する当期純利益」への影響でみて、約37億円もあります(2023年12月期決算短信)。

外部調査委員会の見解、あずさ監査法人の見解、両者の差異、会社の見解(「外部調査委員会の調査結果を尊重」(12ページ))などは、4~12ページです。

マスコミ報道では、調査委員会と監査法人の見解の差について強調しているようですが、会計処理に関しては、委員会の調査前から、監査法人と会社とで、合意がなされています。

「当社は、連結財務諸表等を可及的早期に確定させるために、あずさ監査法人の指摘を受け入れ、本SPCを当社の連結範囲に含めるための対応を行うことといたしました。」(4ページ)

つまり、会計処理が間違っていたという意味での「不正」があったことは、会社も認めているわけです。(「連結財務諸表等を可及的早期に確定させるために」というところに、いやいや感が出ていますが)

会社は、もしかすると、調査委員会に、あずさ監査法人の会計処理に関する見解を覆すような調査結果を出してほしかったのかもしれませんが、表向きは、「会計処理の検討」ではなく「会計処理の検討過程の検証」などを依頼したことになっています。

「当社は、本件会計処理について、公正性を確保した調査により、前提となる事実関係を明らかにするとともに、本件会計処理の検討過程の検証、本件会計処理と類似する事案の存否、事実関係の調査及び評価、並びに内部統制上の課題を評価する必要性を認識し、2024年3月27日、独立した外部の有識者による外部調査委員会を設置し、外部調査委員会に調査を依頼することといたしました。」(4ページ)

したがって、調査委員会は、監査法人の指摘による会計処理に関しては見解を述べておらず、述べていないわけですから、不正な会計処理だったという点について見解の相違はないということになります。

改善報告書では、調査委員会とあずさ監査法人の見解の相違について、以下のようにまとめています。

外部調査委員会の調査結果においては、本件担当執行役員において、あずさ監査法人に対してなされている説明と出資者に対する説明とを、意図的に乖離させていた事実が認められたものの、城口氏及び本件担当CFOについて、同法人に対して意図的に情報を隠蔽したり虚偽の情報を伝えたりする等の不正行為があったとまでは認定できないというものでした。他方で、あずさ監査法人からは、外部調査委員会の調査報告書の内容を踏まえてもなお、城口氏及び本件担当執行役員のSlackの投稿やメールを削除した事実など、存在する多くの証拠に照らして城口氏及び本件担当執行役員の供述は信憑性を欠くものと判断し、重要な虚偽表示の原因となる不正が存在したとの認定に至ったとしております。」(12ページ)

委員会も「不正行為があったとまでは認定できない」といっているわけで、不正はなかった、濡れ衣だと主張しているわけではありません。具体的な場面でも、城口氏が本SPCの最大出資者に貸付を行うというスキームであることについて、監査法人に説明するよう、積極的に指示しなかったこと(6ページ)などは、委員会も認定しています。改善報告書でまとめられている調査結果を読んでも、限りなく黒に近いように感じられます。つまり、監査法人の見解と、それほど大きな差異はないのではないでしょうか。

次に発生原因の分析から、一部引用すると...

「(7) 会計監査人とのコミュニケーション上の課題

本SPCスキームは、新規事業にかかる複雑なスキームであることから、関係する会計基準に照らして会計処理上の論点を整理した上であずさ監査法人とコミュニケーションを取り、理解に齟齬が生じることを避けるべきでありましたが、上記(第2.1(6))のとおり、本スキームにおける会計上のリスク認識が不十分であった結果、同法人との間で適切なコミュニケーションが十分になされなかったものと認識しております。

(8) 外部専門家の活用の不足

本件会計処理については、当初外部会計専門家の起用も検討したものの、最終的には、外部専門家による包括的なサポートを得ることなく、本件担当CFOを中心にあずさ監査法人との議論を進めてきました。

この点、上記(第2.1(6))のとおり、EV充電事業における本スキームの展開は、ビジネスとしても難易度の高い非通例的な取組みである一方、各種の法令・会計基準関連のリスクについて十分に社内で検討する体制が不十分であり、これを補うために本スキームを展開していくのに必要な知見の確保をすべく、外部専門家の活用をすることが考えられましたが、本スキームの会計上のリスク認識が不十分であったが故に、外部専門家の協力を得て、本SPCを連結の範囲に含めないことも含めた包括的な会計論点を整理したポジションペーパーを作成しあずさ監査法人へ共有、理解に齟齬がないことを確認すること、当社及び同法人間の会計処理にかかる議論の進捗や合意事項について整理して文書化することは十分に行われておりませんでした

これらの事情を踏まえると、当社としては、外部専門家を活用してあずさ監査法人との合意形成を行っていくことの必要性をより早く認識した上で、同法人との合意形成をより適切に行う余地はあった可能性があります。」(15ページ)

「改善措置」から、「代表取締役CEO及び取締役退任」について。

「城口氏は、2024年3月28日に開催された当社第9期定時株主総会の決議によって取締役に選任され、同選任議案記載のとおり、同年7月30日に開催された第9期定時株主総会継続会終結時をもって取締役に就任(再任)する予定でしたが、外部調査委員会の調査結果等を踏まえ、当社は、本件会計処理に起因する一連の問題についての当社代表取締役CEOとしての責任の明確化の観点から、城口氏について、当社代表取締役CEOを退任して非執行取締役となることを含め、検討をしておりました。

かかる状況下で、当社は、2024年7月頃、城口氏が城口氏個人の証券担保ローンに関連して担保として提供していた当社株式の担保評価額の下落を受けて、当該株式について市場にて強制的な売却が行われることを回避する観点から、城口氏が、競合他社から当該証券担保ローンの返済原資の貸付けを受けるとともに、当該証券担保ローンの返済後に当社株式について当該競合他社への譲渡又は担保権設定を行うこと等を検討していることを把握し、城口氏と当社の利益相反が顕在化しつつある状況にあると判断いたしました。加えて、その当時、外部調査委員会の調査報告書に記載されている一連の事象及びこれに伴う財務諸表の修正に関連して、当社は様々な未公表の重要事実を抱えており、当該事実を適切に当該競合他社に対して開示した上で当該株式譲渡等の契約を締結しない場合には、城口氏が金融商品取引法上のインサイダー取引規制に抵触する懸念もありました。当社は、上記の事情等に鑑み、城口氏に対して、当該株式譲渡等の契約の締結を差し控えるように強く要請しました。

城口氏と当社の利益相反が顕在化しつつある状況を踏まえると、城口氏が非執行取締役としての職務を適正に行うことができない可能性もあるため、当社は、従前から検討していた城口氏の責任の明確化という点に加えて、当社の今後のガバナンス体制の健全化という観点も勘案して再度検討した結果、城口氏について、当社代表取締役CEOのみならず、当社取締役についても退任する必要があると判断するに至りました。上記の経緯を踏まえ、①金融機関など社外のステークホルダーの信頼喪失やそれに起因する事業影響、②取締役会との信頼関係喪失、③執行幹部との信頼関係の喪失や離反の懸念等を理由として、取締役会及び監査役会より、城口氏に対して、代表取締役CEO及び取締役の退任を打診しました。最終的には、城口氏より、当社取締役就任を辞退する旨の申し出があり、当社は、2024年7月29日開催の取締役会にてこれを受理いたしました。」

(再掲)有価証券報告書(2023年12月期)(PDFファイル)(←あずさ監査法人のKAMはこちらから)

営業外費用及び特別損失の計上に関するお知らせ(2024年7月9日)(PDFファイル)

「当社は、2024 年6月 21 日開示の「外部調査委員会の調査報告書の受領に関するお知らせ」のとおり、外部調査委員会を設置して調査を実施いたしましたが、当該外部調査委員会の調査費用ならびに追加の監査手続きに係る監査報酬等が発生したことにより、決算訂正関連費用引当金として 919 百万円(課徴金引当金185 百万円を含む)を計上いたしました。」

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