会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

9月入学「今年度は17カ月」案浮上 入試・費用負担など論点(日経より)

9月入学「今年度は17カ月」案浮上 入試・費用負担など論点

政府・与党の9月入学検討で、今年度は17ヶ月とし、来年度(2021年)から9月入学とする案が浮上しているという記事。

「政府・与党による9月入学の検討が2021年以降の導入をにらんで進むことが明らかになった。現在の議論では、学校の始業や入学の時期を5カ月遅らせる案が浮上している。21年9月から開始した場合、延長期間を合わせて1学年が17カ月になる。」

「自民党は月内にも政府への提言をまとめる。14日の会合では、議員から「新型コロナウイルスという危機時に決めなければいつまでも変えられない」との声が上がった。

別の議員は「日本がグローバル化に対応する象徴にすべきだ。教育界や経済界を含め、世論のうねりを起こそう」と呼び掛けた。」

9月入学がなぜグローバル化になるのか、よくわかりません。例えば、3月末生まれの高校生が、卒業後すぐに海外留学するケースを考えてみると、現制度では、18歳で高校を卒業し、5ヶ月間のブランクののち、18歳6ヶ月目から海外留学が始まるわけですが、9月入学の場合は、18歳と5ヶ月で高校を卒業し、18歳6ヶ月目から海外留学が始まるわけで、海外留学が始まる年齢は今と同じです。海外留学生を招くには9月入学が有利なのかもしれませんが、それは、高校までの入学・卒業時期をいじらなくても、大学の段階で、4月入学だけでなく10月入学も出来るようにするなどすれば、解決できるでしょう。

この記事では、9月入学制の問題点も一応書いています。

「移行までの5カ月間が生む課題も指摘されている。小学校入学を9月にずらせば、義務教育の開始が7歳5カ月からとなる子どもが出てくる。世界的にも異例の遅さで、国際的な学力比較の面で懸念の声がある。

21年9月に入学する小1は、20年度中に6歳になる子に21年4~8月に6歳になる子も加わり、通常の約1.4倍の人数になる。教室や教員の確保が必要になる上、幼稚園や保育園の在籍期間が長引き、待機児童を増やす事態も招きかねない。

この5カ月間に生じる費用を誰が負担するかという問題もある。文科省は15日の衆院文科委員会で、小学生から高校生までの子どもを持つ家庭の追加負担の総額が、2兆5千億円に上るとの試算を明らかにした。」

17ヶ月となる今年度の費用負担を考えてみると、父兄・学生は実質12ヶ月分の教育内容なのに17ヶ月分の学費を払いたくはないでしょう。1年分しか、授業料を払わないとなれば、私立の学校(専門学校や予備校なども含む)はつぶれてしまうでしょう。仮に、学費については、税金で面倒を見るということになったしても、5ヶ月間就職が遅れることの機会費用や、親元を離れている学生の学費以外の生活費5ヶ月分などは、父兄・学生の負担増になります。

企業にとっては、これまでなら3月・4月に発生していた卒業・入学関連の商品・サービスへの需要が消滅してしまう(少なくとも5ヶ月先送りになる)ことや、新卒者の雇用開始が5ヶ月遅れてしまうことの影響を考えないといけないでしょう。

世論調査では9月入学に賛成が多いようです。本当にやるつもりなのでしょうか。

(補足)

9月入学に移行する際に、学年の区切りを変えない(従来どおり4月生まれから翌年3月生まれまでを1学年とする)方法と、変える(9月生まれから翌年8月生まれまでを1学年とする)方法があるそうです。後者の方法だと、移行する年の小学1年生(4月生まれから翌年8月生まれまで)の数が、1.4倍(=17ヶ月/12ヶ月)になり、大きな影響が出るようです。

9月入学で教員2.8万人不足の推計 待機児童も急増(朝日)

「新1年生を4月生まれから翌年9月生まれまでの17カ月に再編し、特に施策を取らなければ、初年度は、教員は約2万8千人が不足し、保育所の待機児童も26万人超に上り、地方財政で3千億円近くの支出増が見込まれると試算した。」

「文部科学省が主に検討しているのは、小学校開始年齢の遅れを解消するために、2021年9月の新入生を14年4月2日生まれから15年9月1日生まれまでと5カ月分増やす案だ。

研究チームの推計では、この場合、新入生は例年より42万5千人増え、1・4倍になる。14年4月2日生まれから15年4月1日生まれの児童は保育所に5カ月長くいることになるため、初年度、地方財政支出は2640億円、教員は2万8100人が追加で必要になり、保育所は新たに26万5千人、学童保育は16万7千人の待機児童が生まれる。

一方、文科省は、現行の学年の区切り(4月2日生まれから翌年4月1日生まれまで)を変えずに、新学年を9月1日から始める案も検討する。ただ、この場合、児童全体の教育が5カ月後ろ倒しになり、小学校の開始が遅い児童で7歳5カ月からとなる。欧米は6歳が主流で、韓国や中国も6歳。日本の児童はそれよりさらに1年以上遅れることになる。推計では、学校教育の支出や教員、学童保育の待機児童の大きな増加は見られないものの、保育所の待機児童26万5千人は初年度だけでなく毎年生まれ続ける。」

前者の案だと、移行時の1年生は、大学卒業までずっと1学年 1.4倍の人数のままということになりますが、教育水準は維持できるのでしょうか。公立学校は定員を増やすのでしょうが、私立学校は、その学年だけ増やすわけにはいかないでしょうから、入試における競争も厳しくなりそうです。他方、後者の案も問題がありそうです。
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