5月14日に開催された第 433 回 企業会計基準委員会の議事概要によると、「財務諸表を継続企業の前提に基づき作成することが適切であるかどうかの判断規準の作成」というプロジェクトを開発テーマから除外することが決まったそうです。
「矢農常勤委員より、「財務諸表を継続企業の前提に基づき作成することが適切であるかどうかの判断規準の作成」に関するプロジェクトの方向性について説明がなされ、審議が行われた。審議の結果、「財務諸表を継続企業の前提に基づき作成することが適切であるかどうかの判断規準の作成」については、開発を行なう上では既存の基準を参考とすることを前提としていたが、既存の会計基準を参考として開発を継続することは難しい状況であることから、開発中のテーマから除外することが承認された。」(議事概要より)
新型コロナの影響で、破綻する会社が増えそうな状況では、ますます必要なプロジェクトといえそうですが、打ち切りになってしまいました。
「既存の基準を参考とすることを前提」としないでプロジェクトを進めることはできなかったのでしょうか。
除外する詳しい理由は、以下の資料に書かれています。
審議(4) 財務諸表を継続企業に基づき作成することが適切か否かの判断規準の検討(PDFファイル)
IFRSでは、IAS第1号で、財務諸表を継続企業の前提により作成しなければならない場合(これが原則)と、そうでない場合とを区分する考え方を示しています。また、継続企業として存続する能力に重大な疑義がある場合の開示についても定めています。
「財務諸表の作成に際して、経営者は、企業が継続企業として存続する能力があるのかどうかを検討しなければならない。経営者に当該企業の清算若しくは営業停止の意図がある場合、又はそうする以外に現実的な代替案がない場合を除いて、企業は財務諸表を継続企業の前提により作成しなければならない。経営者が、この検討を行う際に、当該企業の継続企業としての存続能力に対して重大な疑義(significant doubt)を生じさせるような事象又は状態に関する重要な不確実性を発見した場合には、企業はその不確実性を開示しなければならない。企業が財務諸表を継続企業の前提で作成していない場合には、企業はその事実を財務諸表作成の基礎及び当該企業が継続企業とは認められない理由とともに開示しなければならない。 」(25項)
日本の会計基準にはこのような規定はなく、監査基準や監査基準委員会報告書570「継続企業」に基づいて実務が行われているので、それらを参考にして、提案しようとしたそうです。しかし、「企業の清算若しくは事業停止の意図がある」とされる範囲や、「経営者」の意味(個人(監査基準委員会報告書)なのか「企業の経営者及び統治機関」(IFRS概念フレームワーク)なのか)について、決めるのが難しいという判断になり、プロジェクトを断念したようです。
現行実務に合わせるというのではなく、「IFRS+国際監査基準」に照らして、現行の監査基準、監査基準委員会報告書、継続企業に関する注記ルール(財規、会社計算規則など)の方を点検するという方向で、進めた方がよかったのではないでしょうか。大枠では違いはないので、放置しておこうということなのかもしれませんが...。
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