日本公認会計士協会は、法規委員会研究報告第9号「法令違反等事実発見への対応に関するQ&A」を、2008年11月5日付で公表しました(ホームページへの掲載は28日)。
昨年の公認会計士法改正の際に設けられた法令違反等事実発見時における監査人の当局への申出制度(規定は金融商品取引法193条の3)について、その概要や適用に当たって留意すべき事項をQ&A形式で取りまとめたものです。
あまりお世話になりたくないQ&Aですが、金融商品取引法に基づく監査を行う監査人であれば、基本的なところはおさえておく必要がありそうです。
そもそも制度の対象となる法令違反等事実とは何かが問題ですが、財務書類の虚偽記載にかかわるものに限定した解釈をとっています。
「法令違反等事実とは、「法令に違反する事実その他の財務計算に関する書類の適正性の確保に影響を及ぼすおそれがある事実」であり(法第193条の3第1項)、その解釈としては、仮に監査人や被監査会社において何らの対応も図られず、当該事実が放置された状態のまま当該財務書類が提出された場合に、重要な事項についての虚偽記載等が生じるような事実を指すものと解されています。」(Q4)
「法令に違反する事実」は例示に過ぎず、「財務計算に関する書類の適正性の確保に影響を及ぼすおそれがある事実」でなければ該当しないということのようです。(ということは、マネーロンダリングや、海外で裏金を作って違法に国内へ持ち込んだといった不正でも、財務書類の適正性に重大な影響を与えない限り対象外となるのでしょう。)
妥当な解釈だと思いますが、それなら、監査報告書には虚偽記載かどうかの結論を記載するわけですから、わざわざ新しい制度を設ける必要があるのかという疑問が出てきます。
また、監査人の交代との関係では、契約解除により監査人でなくなれば、申出制度の対象とならないとされているので、監査人としても、そういう状況になれば早く解約してもらった方が責任を免れることになります。監査人が解除を拒否した場合でも、会社法の会計監査人の解任は手続きが面倒ですが、金商法監査の契約だけなら経営者の意思決定で契約解除できるはずです(弁護士に聞いてみる必要はありますが)。
「監査人が当局に申出を行うに至るような状況において、監査契約の解除等により監査人でなくなった場合には、監査人の当局への申出制度の対象とはならず、また、守秘義務も解除されないことにご留意ください。」(Q9)
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