企業会計基準委員会は、中期運営方針を2016年8月12日付で公表しました。
「今後3年間の日本基準の開発の基本的な方針及び国際的な会計基準の開発に関連する活動を行うにあたっての基本的な方針を記載した」文書です。
(前回の公表は2010年であり、1回空いてしまったようです。)
大きく「日本基準の開発」と「国際的な会計基準の開発に関連する活動」に分けて記載されているわけですが、「修正国際基準の開発」は後者の中に含めています(ということは実際の適用は考えていない?)
以下「日本基準の開発」に関して...
まず、基本的な考え方が書かれています。
「我が国における会計基準に係る基本的な考え方としては、企業の総合的な業績指標としての当期純利益の有用性を保つこと、事業活動の性質に応じて適切に資産及び負債の測定を行うこと(適切な公正価値測定の適用範囲)などが挙げられる。」
今後の取り組み方針は、ややぶれが感じられます。
「国際的に整合性のあるものとするための取組みは、国際的な会計基準を自動的に日本基準に採り入れることを意味せず、国際的な会計基準における個々の会計処理について日本基準に採り入れる範囲を、適切に決める必要があると考えられる。
その際、国際的に整合性のあるものにすることにより、高品質な会計基準となるか否かを判断することが必要であると考えられる。また、上述したとおり、我が国における会計基準に係る基本的な考え方は意見発信の基礎となるべきものであることを考えると、国際的な会計基準における考え方が我が国における会計基準に係る基本的な考え方と大きく異ならないことも重要であると考えられる。 」
(考え方が大きく異ならないのであれば、そのまま取り入れればよいのでは)
具体的な課題としては、まず、収益認識会計基準を挙げています。
「この包括的な会計基準(注:IFRS 第 15 号「顧客との契約から生じる収益」を踏まえた収益認識に関する包括的な会計基準)については、平成 30年1月1 日以後開始する事業年度に適用が可能となることを当面の目標として、最も優先的に検討を進めていく。 」
(「平成 30年」は本気なのでしょうか。まだ基準の影も形も見当たりませんが)
収益認識以外では...
「引当金に関する IFRS の取扱いは、現在、IASB において行われている概念フレームワークの見直し及び IAS 第 37 号のリサーチ・プロジェクトに関係するため、IASB による当該審議の完了後、我が国における会計基準の開発に向けた検討に着手するか否かの検討を行うことが考えられる。 」(「考えられる」でだめ押ししているように、あまりやりたくないようです。)
「金融商品」(分類及び測定、減損、一般ヘッジ)(IFRS 第 9 号)、「連結財務諸表」(連結範囲)(IFRS 第 10 号)、「公正価値測定」(IFRS 第 13 号)、「リース」(IFRS 第 16 号)に関しては、別紙でまとめていますが、要するに先送りのようです。
税効果会計及び当期税金に関する実務指針については、公表済みの繰延税金資産の回収可能性以外のその他の実務指針についても、会計士協会から「早期に移管を図るべく取り組んでいる」とのことです。
減価償却にもふれています。
「今後、減価償却に関する会計基準の開発に着手することの合意形成に向けた取組みを行う予定である。」
(着手すること自体にも反対がある?)
全体として、「今後も、国際的に整合性のあるものとするための取組みを継続的に行う必要があると考えられる」(4ページ)といいつつも、収益認識を除き、開発計画上は具体化されていない模様です。収益認識で手一杯なのでしょうか。
(企業や監査人からすれば、収益認識の準備に集中すればよい?)
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