会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

日風力開発株はストップ安売り気配、有価証券報告書の提出が遅延(ブルームバーグより)

日風力開発株はストップ安売り気配、有価証券報告書の提出が遅延

東証マザーズ上場の日本風力開発が、2010年3月期の有価証券報告書の提出について、法定期限の6月30日までに提出できない見込みと発表し、株価がストップ安になったという記事。監査人の交代が絡んでいるようです。

「日風力開発側の発表によると、有報提出遅延の理由は新日本監査法人を6月14日付で解任し、やよい監査法人を一時会計監査人に選任した。しかし、一時会計監査人選定より提出期限までの日数が短く、金融商品取引法第24条第1項に定める期限までに提出できない見込みになったという。」

「同社によると、10年3月期の会計監査中に発覚した09年3月期中の同社従業員と取引先従業員の間で交わされた会社として認知していない文書の存在について、外部有識者による調査委員会を設置、過去の取引に影響を与えたものは認められないとする最終報告書がまとまった。これを新日本監査法人提出、会計監査の進行を依頼してきたが、同法人からは当該文書にかかわる取引等について疑義が払しょくされたとは言い切れない、との回答があり、解任に至ったという。」

会計監査人の異動及び一時会計監査人の選任に関するお知らせ(PDFファイル)

ブルームバーグの記事で言っている「同社従業員と取引先従業員の間で交わされた会社として認知していない文書」というのは、風力発電で使われる蓄電池の販売取引に関するものです。

「対象会社(注:日本風力開発)が行う蓄電池取引は,電力関連機器メーカーが製造する蓄電池の販売代理店として風力発電所の建設を請け負うゼネコンからの注文を取り扱うメーカーの販売代理店事業である。「本件覚書」には,蓄電池に係る「内示書」3通(②平成21年3月期における蓄電池10MW(メガワット)分及び同30MW分,③平成20年3月期における蓄電池27MW分)が添付されており,最終的に対象会社の子会社たるSPCがこれを購入しない場合,対象会社がゼネコンに対して蓄電池の販売代金等を支払う旨の記述が見られる。」

自社の事業で使われる機材(蓄電池)をゼネコンに販売しても単なる機材の有償支給ですから、そもそも売上にできるのかという問題はありますが、それはひとまず置いておいたとしても、こうした覚書は、販売された蓄電池に関するリスクを、この会社が負うということを約束したものですから、もしこの覚書が有効なら、売上計上自体が問題となります。

会社の調査委員会の報告書(要旨)では、この覚書は「法的に無効」である(したがって全く問題はない)という結論です。この結論が妥当なものなのかどうかについて外部からうかがい知ることはできませんが、5月には、既に代理店販売した蓄電池を売り先から買い戻して多額の損失を計上したというプレスリリースを公表しているくらいですから、監査人であれば、職業的懐疑心を発揮して、不審に思うのは当然でしょう。

特別損失の計上に関するお知らせ(PDFファイル)

ちなみに、今回の解任は、会社法第340条第1項に基づくものと発表されていますが、この条文は、監査人からするとかなりきつい文言です。

「(監査役等による会計監査人の解任)
第三百四十条

監査役は、会計監査人が次のいずれかに該当するときは、その会計監査人を解任することができる。

一 職務上の義務に違反し、又は職務を怠ったとき。

二 会計監査人としてふさわしくない非行があったとき。

三 心身の故障のため、職務の執行に支障があり、又はこれに堪えないとき。」

通常は、監査人と会社の意見の相違があったとしても、監査契約を(形式的には)円満に解消して、会社は新たな監査人と契約を結ぶということになるはずですが、この場合は何か特別な事情があったのでしょうか。
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