著名な会計評論家はなぜ18年目にして再審請求を起こしたのか?
会計評論家(元公認会計士)の細野氏の「人質司法サバイバー国会」というイベントでの発言を取り上げた記事。
「粉飾決算のような経済事件が起こるたび、会計評論家としてマスコミからコメントを求められる細野祐二さん。
30代半ばで大手監査法人KPMG日本の代表社員になるなど公認会計士として活躍していた2004年3月、害虫駆除会社キャッツの株価操縦事件に関連して、証券取引法違反(有価証券報告書虚偽記載)容疑で東京地検特捜部に逮捕・起訴されたという過去を持つ。」
記事の前半では、細野氏の著書から、検察の取り調べのひどさが表れている部分の引用などです。
後半がイベントでのスピーチの紹介。
「「人質司法サバイバー国会」における細野さんのスピーチは以下のように始まった。
「2004年、上場企業であるキャッツが粉飾決算をしたという事件で、わたくしはその会社の会計監査をやっていた監査法人の代表社員でございましたので、粉飾の共謀ということで逮捕されました。190日間勾留されて、懲役2年執行猶予4年の有罪判決を受けて最高裁で確定した者です」
重要証人がみな、一審での証言をひっくり返したにもかかわらず、2007年7月の東京高裁判決はそれらを信用できないとして控訴を棄却。2010年5月に最高裁で有罪が確定してしまったのである。
ちなみに控訴審判決の1ヵ月後、無罪を信じて細野さんを支え続けた奥さんを白血病で亡くしているという。
「わたくしは、逮捕されたそのときから『この決算書は粉飾ではありません』ということをずっと言っています。この決算は粉飾ではないんです。粉飾ではない決算をわたしは公認会計士として正しく指導してきたわけです。だからわたしは逮捕されたときに弁護士に『先生、正しい決算書を指導するのは共謀と言わないんじゃないですか』と言ったのですが、弁護士は聞く耳を持たなかったですね。今回、事件が終わってもう18年経ったんですが、わたくしは、『どうしてもこの決算が正しかったんだ』という思いが消えませんので、大変な時間とエネルギー、もちろんお金もかけて証拠をそろえ、昨年の12月に再審請求をいたしております」
問題となった決算書に対して有価証券報告書の訂正報告書は出ていない。会計的に適正であると確定している財務諸表を作成したことで有罪になるのはおかしいではないか。細野さんはそう考え、再審請求中なのである。」
再審請求したことについては、その時の報道などを当サイトでも取り上げました(→当サイトの関連記事)。
ひどい人質司法だということは細野氏の主張のとおりでしょう(有罪を認めないからといって190日間も拘留するのはまさに人質司法)。経営者との共謀がなかったというのもそのとおりなのかもしれません。しかし、粉飾がなかったというのは、相当無理だと思います(→当サイトの関連記事)。
「人質司法にNo!」元会計士が再審請求した深いワケ(エコノミスト)(記事の中にリンクが載っていました。)
「この事件は、2000年ごろから仕手筋に株式を買い占められたキャッツを巡り、有価証券報告書の虚偽記載があったとして東京地検特捜部が摘発したもの。具体的には、大友裕隆社長(当時)が02年2月、キャッツ株を買い戻すためキャッツから60億円を借り受けたが、それを、①キャッツの02年6月中間決算の貸借対照表で「貸付金」とせずに「預け金」と記載した、②大友氏が買い戻したキャッツ株を基にポイントカード運営会社「ファースト・マイル」を買収したが、ファースト・マイル株の取得原価が多く見積もっても6億5000万円しかないのに、02年12月期の貸借対照表に60億円と過大計上した──ことが有価証券報告書の虚偽記載の罪に問われた。」
この記事に登場する厚労省元事務次官の村木厚子氏と、プレサンス・コーポレーション元社長・山岸忍氏は無罪が確定しています。
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あなたも明日、被害者になるかもしれない「人質司法」。サバイバーが国会に集い、衝撃体験を語る(第1回)(Yahoo)
この事件でひどい目に遭った人もイベントに登壇しています(長期勾留によって殺された仲間は無実の知らせを聞けなかった。「人質司法サバイバー国会」報告(第5回))。
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警視庁公安部、有識者聴取と異なる報告書作成か 起訴取り消し(毎日)
「軍事転用可能な装置を不正輸出したとして外為法違反に問われた化学機械製造会社「大川原化工機(おおかわらかこうき)」(横浜市)の社長らの起訴が取り消された問題で、警視庁公安部が有識者から聞き取った内容と異なる聴取報告書を作成した疑いがあることが、捜査に協力した大学教授ら4人への取材で判明した。毎日新聞が入手した報告書を確認してもらったところ、4人全員が「一方的に作られたものだ」と証言した。」