アスクルの株主総会で、社長と独立社外取締役3人の再任が否決されたという記事。
「筆頭株主のヤフーと取締役人事などを巡って対立したアスクルが2日に株主総会を開き、社長だった岩田彰一郎氏と独立社外取締役3人の再任が否決された。アスクルは同日取締役会を開いて新社長に吉岡晃氏を選んだ。」
「午前10時に始まったアスクルの株主総会。個人株主からは個人向けネット通販「LOHACO(ロハコ)」の再建策に関する質問が相次いだ。約45%を出資するヤフーと第2位株主で約11%を持つプラス(東京・港)は業績低迷を理由に岩田氏らの再任に反対した。背景には赤字が続くロハコを巡る食い違いがある。」
「吉岡氏は引き続き資本提携の解消をめざす意向を示した。」
「アスクルはヤフーとの資本・業務提携契約には著しい契約違反があった場合には株式の売り渡しを請求できる権利が明記されているとも主張している。アスクルが株式の売り渡し請求権を行使するかも今後の焦点だ。吉岡氏は当面行使しないとの見通しを示したが、先行きはなお予断を許さない。」
「岩田氏は2日の総会後に報道陣の取材に応じて「総会の決議は重く厳粛に受け止める」と述べ、現時点で社長復帰を目指す考えがないことを明らかにした。その上でアスクルとの関わりについて「(親会社のヤフーに)会社ごと飲み込まれるようなことになれば少数株主にとっての利益にもならない。外部から注視していきたい」と話した。」
保有している株式数で意思決定がなされるのが株式会社だとすれば、当然の結果といえますが、それなら、何のために独立社外取締役がいるのかという話になります。
代表取締役の異動ならびに取締役、監査役の選任に関するお知らせ(アスクル)(PDFファイル)
本日の取締役記者会見について(アスクル)(PDFファイル)
アスクルのサイトでも紹介されていますが...
緊急意見 日本の上場子会社のコーポレートガバナンスの在り方 (2019)(日本取締役協会)
「問題になっているヤフーとアスクルの間の社長再任をめぐる対立で、アスクルの社長候補の取締役を不再任にしただけでなく、同じ理由で、独立社外取締役まで全員不再任としたのは、親子上場企業のガバナンス上、重大な問題である。支配的株主の横暴をけん制するために存在している、独立取締役を緊急性も違法行為もない状態で解任できるならば、ガバナンスの基本構造が成り立たなくなる。」
「この不再任は、親子間の利益相反における上場子会社の少数株主保護を独立取締役に託したグループガイドラインの主旨に明確に反し、独立取締役がゼロになった状況は、金融庁・東証のコーポレートガバナンス・コード上も、会社法上も立法趣旨としては大きな問題状況を生み出している。」
「支配株主を有する上場子会社のコーポレート・ガバナンスに関する意見」を公表しました(日本コーポレート・ガバナンス・ネットワーク)
「近時報道される上場子会社であるアスクル株式会社においては、支配株主であるヤフー株式会社が上場子会社の独立社外取締役全員について再任拒絶の議決権行使をしたとされるが、かかる行為は、上場子会社のガバナンスの根幹を崩すものに他ならず、当該上場子会社の少数株主の利益を無視した行為と言わざるを得ない。加えて、支配株主自身も上場会社であるため、当該支配株主である上場会社のコーポレート・ガバナンスに対する姿勢についても投資家の疑義を生じさせ、我が国の資本市場に対する信頼を一層損なうおそれがある。」
ソフトバンクもコメントを出したそうです。
ヤフーの手法、孫氏「反対の意見」(日経)(記事冒頭のみ)
「ソフトバンクGは以下のコメントを公表した。「孫個人は投資先との同志的な結合を何よりも重視するため、今回のような手段を講じる事について反対の意見を持っておりますが、このたびの件はヤフーの案件であり、ヤフー執行部が意思決定したものです。本件はヤフーの独立性を尊重して、ヤフー執行部の判断に任せております」」
ヤフーの社長が、孫氏の意向に反する行動を採るはずがないでしょう。部下のせいにして、責任回避しているようです。
こちらの記事を読むと、総会に参加した一般株主は結果にすごく怒っているというほどではないようですが...(諦観の境地?)。
アスクル株主総会、「社長解任」でヤフーが残す禍根(JBpress)
「「支配株主が少数株主の権利を蹂躙する行為」というコーポレートガバナンス専門家の批判もある中、当の少数株主は、この展開をどう考えているのか。まずは総会の会場に集まった個人株主に聞いてみた。
——社長の取締役選任を含め支配株主であるヤフーとプラスが全てを思い通りに進め、アスクル少数株主の権利が無視されているという指摘もあります。
「まあ、(ヤフー、プラスを合わせて過半数の)株を持たれてんだから、しょうがねえよなあ。岩田さんの言い分もわかるけど、そもそも自分が蒔いた種でしょう(業務資本提携の時にヤフーに40%を超える株式を与えたことを指す)。何を言っても悪あがきだよねえ。辞めるしかないんじゃないの。今日は高みの見物だね」(70代男性)
——ヤフーという支配株主がいることを知った上でアスクルの株主になったのですか。
「どうだったかなあ。そこまでは考えていなかったかもしれない。とにかく、アマゾン(・ドット・コム)がすごい勢いでのして来ていて、『ヤフーとアスクルでアマゾンへの対抗勢力を作る』というから、これは日本勢を応援しなくちゃと思って買ったんだよね。岩田さんのことは応援してますよ。ただ、ロハコはやっぱり(アマゾンや楽天に比べて)サービスで劣るところがあるからね。もっとドンと積極的に投資して頑張って欲しかった、というのはありますね」(50代男性)」
「——ヤフーは、アスクルとロハコの業績不振が岩田社長を取締役に選任しない理由だと説明しています。
「それはヤフーが無責任だよね。ロハコはヤフー主導で運営してきたんだから。
社長を替えれば何とかなる、という次元の話ではないよ。少数株主の意見が無視されてるって? そんなの日本じゃ、どの会社でも同じでしょ。まあ私は岩田さんの再任に丸をつけましたけどね」(60代男性)」
ヤフー・アスクル騒動で暴落、経営者・孫正義の評判(JBpress)
「川邊:「ま、僕は別にそんなに孫さんと毎月やらなくてもいいと思ってるんですけど、宮内(謙)さん達以下、孫さんが大好きなので、毎月食事をするんですね。そうすると必ず孫さんが(私たちに)する質問は、『いつ楽天を抜くんだ』、『いつアマゾンを抜くんだ』と、この2問しかないんですよ。『ロハコとヤフーの方でやります』って回答をするんですけれども、要するに(孫さんの質問は)『今のロハコのままで大丈夫なのか?』というものに、いま変容しつつある」
川邊社長の発言からは、孫社長からの強いプレッシャーの存在がうかがえる。」
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