日産自動車に関する解説記事。
「仏ルノーの筆頭株主であるフランス政府が持ち株会社方式を軸に日産自動車とルノーを統合させたい意向を日本政府関係者に伝えた、というニュースが今週初めに報道された。」
めずらしく、日産に批判的なことをいっています。
「ゴーン被告は会長から解任されたが、西川社長ら残りの経営陣も一定の責任は免れない。
日産は法人として有価証券報告書の虚偽記載の罪で起訴されたが、その容疑対象である2018年3月期の報告書の冒頭に、会社の代表者として明記されているのは西川社長である。
これをもって西川氏が辞任すべきかどうか。最終判断を下すのは日産の株主だ。同社は臨時株主総会を4月中旬に開催する方向で検討しているという。さらには今月から始まった日産のガバナンス改善特別委員会も、何らかの見解を表明すべきだろう。
20日に初会合を開いた同委員会は経団連前会長の榊原定征氏らの豪華メンバーで構成され、日産の企業統治のあり方を議論するものだ。
榊原氏は初会合後に記者団に「ガバナンスの問題点を解明することが目的で、個々人の責任は問わない」と述べている。しかし西川氏が日産のCEOとして信任に値するかどうかは個人の責任うんぬんを超えて、日産という企業の統治の根幹に関わる問題であり、ガバナンス委が一定の見解を示すべきテーマではないのか。
その判断から逃げるなら、「ガバナンス委は事態に正面から向き合っていない」との批判は避けられない。」
虚偽記載は、当サイトの見方では、無実の罪の可能性が高く(裁判では有罪にするのでしょうが)、日産もゴーン氏も西川社長も責任はないと思いますが、日産としては罪を認めているようですから、関与している西川社長も責任をとるのが、会社の姿勢と整合的です。また、報道されているゴーン氏の公私混同が本当だとしたら、取締役としてそれを見逃してきた責任はあるでしょう。以前から公私混同を知っていたのに、自分たちの利益のために見逃してきた(ゴーン氏排除が自分たちの利益になると判断したとたんに摘発した)のであれば、今後のガバナンスを担う資格はないといえます。
この記事でいっているように、その点も含めて、ガバナンス委員会で検討すべきなのでしょうが、その前提となる事実関係が、中立的な調査によって明らかになっていない(調査の対象となるべき西川社長らが主導して調べている)のですから、まともな結論は出ないでしょう。むしろ、日産現経営陣に都合のよい体制をつくるための道具にすぎないように思われます。
「...日産の一部が今回の件を奇貨として、「ルノー優位のアライアンス構造をひっくり返す機会」として色めきたつ気持ちは分からなくもないが、あまり健全とも言えない。」
奇貨としてというよりは、アライアンス構造をひっくり返すこと自体が目的だったとしか考えられないのですが...。
[社説]日産・ルノー連合は企業価値の向上を軸に(日経)(記事冒頭のみ)
ルノーやフランス政府に釘を刺すようなことも言っていますが、日産も批判しています。
「一方で日産側にも今回の事態を「ルノー優位の提携構造をひっくり返す好機」と政治的にとらえる向きもあるが、これも健全とは言えまい。」
学者兼コンサルタントによる解説。こういう説もあり得そうだなという程度のものですが。
↓
フランス政府、日産・ルノーの経営統合へ本格始動…比較的容易に実現か(Business Journal)
「フランス政府にとってゴーン氏が絶対に必要というわけではなかったのではないか。要は、フランス政府が表に出たくないので、ゴーン氏が要となって統合を進めてくれるのであれば、いてくれてよいというスタンスだったのではないか。統合を進める過程で、今回の日産の日本人経営陣(オールジャパン)による奇襲攻撃というゴーン氏の逮捕は想定外であったろうが、統合が進めば、日本人経営者の拒否反応が起こることは想定の範囲内であっただろう。」
「フランス政府と同床異夢のなかでルノーと日産の統合を進めるうちに、ゴーン氏は自主独立という名の愛社精神の強い日産の日本人幹部、具体的には西川廣人社長と外部の勢力に刺されたわけである。想定外だったかもしれないが、ゴーン氏の逮捕はフランス政府にとっては、いずれは来るであろうゴーン氏の切り捨てとルノー・日産連合への介入の正当化をもたらしたようなものだった。この意味で、フランス政府はゴーン氏逮捕の事前通報に対して強い難色は示さず、「これ幸い」と思ったかもしれない。
実際にフランス政府は、日産の株主総会を待たずに政府関係者を来日させ、日本政府関係者とも会い、ゴーン氏の長期拘留が避けられないことを理由に、フランス政府に近いとされるスナールミシュラ氏を会長に送り込み、ルノーの株主として日産への交渉圧力を強める動きに舵を切った。」
ゴーン辞任で火蓋、日産・ルノー統合の神経戦
4月の臨時株主総会が日仏対立の前哨戦に(東洋経済)
「ただ、ルノーは出資比率では4割超だが、議決権行使ベースでは単独で過半を超える可能性も十分にあり、臨時株主総会で経営統合を提案して強引に決議に持ち込めば、日産にルノー株買い増しの時間的猶予を与えないこともできる。当然、日産はRAMA違反を主張するだろうが、確実に覆せるかはわからない。日産としては最悪の事態も想定した対応策を今後練る必要にも迫られる。」
【ゴーン退場(下)】仏政府の統合圧力、事件の引き金…日産は日本政府の支援期待(産経)
「統合への圧力は、今回が初めてではない。何より、こうした仏政府の野望がゴーン事件の引き金を引いたとの見方が強い。両社の会長を兼務していたゴーンに仏政府が約束させた「不可逆的な関係づくり」について、日産社内は「経営統合のことにほかならない」(幹部)と警戒し、社内調査結果の捜査機関への提供につながった可能性があるからだ。仏政府のもくろみはゴーン逮捕で頓挫した。」
「「資本の論理」だけでいえば、日産に統合圧力をはね返す力はない。全ての株主が議決権を行使するわけではなく、ルノーの43%という保有比率は過半数とほぼ同義だからだ。本来なら、ルノーは日産の株主総会で全取締役を入れ替えることも不可能ではない。」
まさに、クーデターだったようです。
ルノー新体制発表で、日産の経営陣が晒した「弱点」(ビジネス+IT)
「ゴーン氏は有価証券報告書の虚偽記載で逮捕されており、その後、保釈請求が認められたことから、検察は引き続き身柄を拘束するため、今度は特別背任容疑で再逮捕している。いずれもゴーン氏のプライベートな犯罪ではなく、会社の不正行為と密接に関連したものであり、もしゴーン氏が推定有罪だというならば、現経営陣も直接的な利害関係者ということになる。
コーポレートガバナンスの本質的な考え方に従えば、社外役員以外の現経営陣は、後任人事や経営体制を含め、「今後の展開について直接、関与すべきではない」という結論にならざるを得ない。社外役員が中心となり、暫定的な執行体制や後任会長人事についてすみやかに動くというのが常識的な判断ということになるだろう。
ところが日産の社外役員は、あまり積極的に動いておらず、外部の有識者を招いて、ガバナンスの問題点を議論している状況だった。もしゴーン氏が会社を私物化して不正を働いていたのだとすると、ゴーン氏以外の経営陣が関係していないはずはなく(刑事事件に問えるのかという話とは別にして)、それをチェックできなかった社外役員も大きな責任を負っているはずだ。
ガバナンスに問題があったと自ら認めている以上、その現経営陣が招聘(しょうへい)した外部の有識者の報告書は十分な説得力を持たない。社外役員も含めて当事者能力を欠いている状況であり、そうだとするならば、株主総会を速やかに開催して、最終的な意思決定権者である株主の意向を仰ぐというのは、常識的な結論に思える。」
ルノーが経営統合に固執する理由、「日産不信」の根深さ(DOL)
「ゴーン氏逮捕から2カ月。いまだ、西川廣人・日産社長とティエリー・ボロレ・ルノー暫定CEOの両トップが、将来のアライアンスの方向性についてまともな議論を交わした形跡はない。ようやくゴーン氏を切り捨てたルノーではあるが、両社が冷静な協議を始められる状況にはない。
ルノーやその筆頭株主である仏政府の、日産に対する不信感はそれほどまでに根深い。ルノーを蚊帳の外に置いたまま、ゴーン氏失脚を演出した日産の奇襲攻撃は大きな禍根を残している。」
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