東京商工リサーチによると、 2019年に「不適切な会計・経理」を開示した上場企業は70社あったそうです(前年比29.6%増)。
「不適切会計の開示は、2008年は25社だった。その後、増勢をたどり、2016年に過去最多の57社を記録した。2017年は53社、2018年は54社と落ち着いていたが、2019年は再び増加に転じ70社と過去最多記録を塗り替えた。」
同じ不正金額でも、重要性の関係で、中小規模の上場会社では開示し、図体の大きな企業では開示しないということがありえます。開示されたのは氷山の一角とまではいいませんが、隠されているケースも多いでしょう。
関係会社での不適切会計も多いそうです(2019年だけではないと思いますが)。
「拡大する営業網にグループ会社のガバナンスが徹底せず、子会社や関係会社に起因する不適切会計の開示に追い込まれる企業が増えた。
(株)MTGは2019年5月、中国子会社の不適切会計を開示したが、同年11月にも韓国子会社での不適切会計の可能性について開示した。」
「企業会計は、当然だが厳格な運用を求められる。だが、経営側に時価会計や連結会計など厳格な会計知識が欠如すると、現場で会計処理を誤る事例も生じる。この背景には会計処理の高度化(能力不足)だけでなく、現場の人手不足も要因の一つにあげられる。こうした状況を改善できずに不適切会計を開示した企業もある。藤倉コンポジット(株)は中国子会社の不適切会計処理を開示したが、要因には中国実務に精通する人材不足があったことを理由の一つにあげている。」
「不適切」の内容は...
「内容別では、最多が「誤り」で31件(構成比42.5%)だった。(株)明豊エンタープライズは、外部からの指摘で中国プロジェクト貸付債権に関する貸倒引当金の計上を過年度に遡り実施を迫られた。
次いで、「架空売上の計上」や「水増し発注」などの「粉飾」で28件(同38.3%)。
(株)テーオーホールディングスの子会社は、取引先への請求額を水増し請求し、売掛金を過大に計上していたことを8月7日に公表している。
また、子会社・関係会社の役員、従業員の着服横領は14件(同19.2%)だった。「会社資金の私的流用」、「商品の不正転売」などで、個人の不祥事にも監査法人は厳格な監査を貫いている。」
個人の着服横領でも、会社の決算に大きな影響を与えるような場合は、監査人も訂正を求めることになります。また、虚偽記載であることに違いはないので「誤り」だから大目に見るということもないでしょう。(本当に「誤り」なのか判断できない場合もあるでしょうし、また、あえて「誤り」を放置した場合は「不正」でしょう。)
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