6月10日に開催された企業会計審議会の内部統制部会の模様を伝える記事。前回に引き続き、財務報告に係る内部統制報告制度の見直しについて議論を行ったそうです。
少し予想外の論点ですが、「欧州ではレビュー方式を採用するケースが多い」という背景から、内部統制監査の「レビュー化」の議論が行われたようです。
「委員の町田祥弘氏(青山学院大学大学院教授)は、「レビュー化するならその目的はコスト削減」と説明。そのうえで「内部統制の評価範囲の大幅な絞り込みを実施している日本の制度の場合、評価範囲の検証についてはレビューであっても現在と同様の手続きが必要」と指摘し、「監査人の関与を減らすことにはならず、コスト削減にならない」と話した。」
ということは、現行の内部統制監査は、レビューのレベルだということでしょうか。
ただし、財務諸表監査において従来から弱いとされていた内部統制の検証手続が、J-SOX導入を機会に拡充された面はあるので、内部統制監査がレビューに代わっても、財務諸表監査の監査基準で要求されている以上、その水準を落とせないとすれば、コスト削減効果は限られるのかもしれません。
記事によれば「レビュー化は今回も採用されない見通し」とのことなので、結局、制度への反発の火種をここで消しておこうという意図だったのでしょう。
ちなみに、記事で引用されている八田教授の発言によれば、制度制定当時もレビュー化について大激論となったそうですが、「財務報告に係る内部統制基準・実施基準」の前文を読み直してみても、「公認会計士等による検証の水準とコスト負担の考慮」という項目であっさりふれているだけで「大激論」のあとは見い出せません。欧州の状況についても「米国以外でも、英国、フランス、韓国等において、同様の制度が導入されている」と記述されており、欧州でも、米国同様、内部統制「監査」が行われているように読めます。
レビュー化以外の論点として、「「重要な欠陥」という用語については、見直される方向」とのことです。「退却」を「転進」といいかえるようなもので、それほど意味のある議論とはいえません。
そのほか、「評価対象範囲の絞り込みについては「売上高の3分の2」という数値基準は残す」ということで、現行からの大きな変更はなさそうです。
結局、見直しの目玉は「重要な欠陥」の言い換えだけということになるのでしょうか。
企業会計審議会第18回内部統制部会議事次第(金融庁)
資料1「内部統制報告制度の運用の見直しに向けての論点について(案)」(PDFファイル)に見直し論点がまとめられています。
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