オービックが、保有するロシア関連の私募債の減損処理を行うとともに、過年度の有価証券報告書や決算短信を訂正するという記事。
「投資などを手掛けるロシア系の「アルジグループ」が発行した私募社債120億円と未収利息12億円が対象。アルジ社は6月に東京地裁から破産手続き開始の決定を受けている。
連帯保証人の存在などからこれまで十分な回収可能性があるとみていたが、11年12月期に連帯保証人が債務超過だった事実が新たに判明したとし、減損に踏み切ることにした。修正するのは12年3月期の有価証券報告書や11年10~12月期の四半期報告書、決算短信など。」
会社のプレスリリース
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過年度有価証券報告書等、 決算短信等の訂正に関するお知らせ(PDFファイル)
「当社の保有している私募社債(ARUJI GROUP株式会社第1回私募方式普通社債・元本120億円) について、過年度決算における貸借対照表計上額の算定に要した情報に誤謬があった事実が判明しました。
第45期第3 四半期 (2011年12月期)決算において、連帯保証人である外国企業の決算情報及びその後の変動状況の確認により、充分な回収可能性が見込めると判断しておりましたが、直近に受領した同社の最新決算書から、同社が2011年12月時点で債務超過であった事実が判明しました。
その後、 事実関係の確認に努めた結果、その原因として連帯保証人の財政状態を構成する重要な資産(プロジェクト)が低廉で譲渡されていたことなどが判明しました。 また、このような重要な情報が連帯保証人から適時に提供されておりませんでした。
上記事実から連帯保証人の信用力が著しく低下していたため、提出された決算書などの財務情報を評価の基礎情報として利用することができなくなりました。
その結果、金融商品会計に関する実務指針 (会計制度委員会報告第14号) に基づき回収可能額を裏付ける根拠が立証できないため、 会計上は当該社債の回収可能性が無いものと評価すべきであると判断しました。
当社の会計監査人と協議した結果、情報に誤謬のあった2011年12月の当社第45期第3四半期決算まで遡り、当該社債の元本120億円及び未収利息12億67百万円、合計132億67 百万円の全額を投資有価証券評価損等として減損処理することを決定いたしました。」
当サイトでもお伝えしたとおり、オービックは、2012年3月期の第2四半期まで、この私募債について「信用リスクに応じた償還不能額を合理的に算定するに足りる充分な情報が得られていない」として、監査意見・四半期レビューの結論が限定付となっています。「回収可能額を裏付ける根拠が立証できない」ことを減損処理の理由とするのであれば、前期の第3四半期まで遡るのではなく、それ以前の決算においても、減損処理すべきなのではないのでしょうか。
監査人は限定を付けていて、この部分の責任を負わないので、会社に強く訂正を求めないのかもしれませんが、それであれば、監督当局がきちんと調べて、適切に指導すべきでしょう。
そもそも、この私募債に投資した経緯などの説明が、開示書類を見ても十分ではないようです。金額からすれば、大王製紙の不正貸付金に匹敵するぐらいなのですから、どういう経緯で投資したのか、最終的にその資金がどのようなプロジェクトに使われたのか、なぜプロジェクトがうまくいかず回収不能となったのかなどを明らかにすべきでしょう。
プレスリリースをみる限りでは、第三者委員会などを設置する予定はないようです。
当サイトの関連記事
ARUJI GROUP(株)/破産開始決定 大口債権者オービック?(JC-NET)
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債務者が破たんしたことは、6月末には報道されています。
雑誌ZAITENの9月号でも報じられています(「オービック「ロシアに消えた200億円」の怪」)。
「6月、ロシア投資を謳うコンサルティング会社がひっそりと破産した。しかし、その負債総額は240億円超。しかも、大半は会計ソフト「勘定奉行」で知られるオービックによる投資だった……。キャッシュリッチ企業の200億円がロシアの霧の彼方に消えようとしている。」
負債の大半がオービックだとしたら、実質的にこの会社を支配していたのでは・・・。連結範囲の問題も検討する必要があります。
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