ローソンの子会社、ローソンエンターメディア(ジャスダック上場)の役員が、不正に資金を流用し、被害総額が最大150億円にのぼる見通しであるという記事。
「ローソンによると、LEM(注:ローソンエンターメディア)は一部のチケットなどの販売の際、チケットやチケット代金を都内の仲介会社「プレジール」(東京都港区)を通してコンサートの企画会社とやりとりしていた。
プレジールが代金を流用したため、平成20年10月以降、企画会社への支払いが滞った。専務らはプレジールの不正流用が原因と知りながら、独断でLEMに企画会社へのチケット代金支払いを肩代わりさせるなどしていた。損害は最大約150億円にのぼるとみられる。」
ローソンエンターメディア取締役による不正行為の発覚について(ローソンのプレスリリース)
プレスリリースによると、チケット販売会社であるLEMは、コンサート企画会社からチケットの販売を直接受託していたのですが、2007年から、問題のプレジール社に仲介させる仕組みにしていったそうです。
「この三者間契約の仕組みは、LEMの実質NO2である専務が持ち込んだものです。チケット販売業界では、コンサート等のチケット販売を受託するために、チケット販売事業者がコンサート企画会社に協賛金を支払う場合があります。この仕組みでは、プレジール社がLEMに代わりコンサート企画会社に協賛金の一部または全部を支払うことにより、従来に比べてLEMの協賛金支払額の減額等が見込めました。
しかし、LEMからのコンサート等のチケット代金受領日からコンサート企画会社への支払日までは期間が長く、長期(2ヶ月~6ヶ月)にわたり資金がプレジール社に滞留していました。これを利用し、プレジール社は資金を流用していました。」
(プレジール社に資金が滞留するようなスキームをなぜ採用したのかという点はさておき)ここまでは、取引先の資金繰りが苦しくなってきたというだけで、(プレジール社の不正ではあるが)ローソン子会社の不正とはいえないかもしれません。
しかし、その後の対応はまさに不正な資金流出です。
「2008年10月頃より、プレジール社からコンサート企画会社への支払いが遅延するようになり、コンサート企画会社から専務へクレームが多数寄せられるようになりました。そこで専務は取締役に相談し、両名は、プレジール社が流用していることを認識しながら、社内の正式な決裁を経ず、LEMがプレジール社に肩代わりして直接コンサート企画会社へ支払いました。さらに2009年10月頃にはチケット販売前のコンサート企画のチケット代金をプレジール社に前払いする等、資金を不正に流出させていました。」
被害予想額の内訳は、「プレジール社に肩代わりして直接コンサート企画会社へ支払った金額(約46億円)、プレジール社への前払金額(約46億円)、LEMのプレジール社からの未回収金額(約8億円)、以上の3点を合わせた金額約100億円と、今後LEMがプレジール社に肩代わりして直接コンサート企画会社へ支払わなければならない金額約50億円」とのことです。
「今後LEMがプレジール社に肩代わりして直接コンサート企画会社へ支払わなければならない」というのは、実質的にプレジール社の企画会社に対する債務をLEMが実質的に保証していたということになるのでしょうか。それとも、法律的には責任はないが、興業が中止になったり、チケットが無効になったりすると、顧客に対する責任を負わなければならないので、そうせざるを得ないということでしょうか。
また、この件に関して第三者による調査委員会が設けられたそうです。公認会計士も1名入っています(株式会社KPMG FAS 執行役員パートナー)。
(補足)
ローソンエンターメディアの直近の四半期報告書(2009年11月末)をみると、前期末(2009年2月末)との比較で、営業未収入金と営業未払金の増減がたしかに異常です。営業未収入金が大幅増になっているのに対し、営業未払金が半分以下になっています。販売したチケット代を(プレジール社に対して?)どんどん支払って未払金を減らす一方で、未収入金は回収が遅れていたということでしょうか。
最近の「不正経理」カテゴリーもっと見る
最近の記事
カテゴリー
バックナンバー
2000年
人気記事