9月15日開催の「会計監査の在り方に関する懇談会(令和3事務年度)」(第1回)の議事要旨(議事録の代わりのもの)が公開されています。
事務局による資料説明の後に、委員がそれぞれ見解を述べたようです。
その一部。
「質には、知識やスキルという実務能力面と、誠実性といった倫理的な側面の2つの要素がある。...知識面、能力面においては非常に大きな変革期にある。したがって、この変化に対して能力を適応させるために、公認会計士試験、試験合格者に対する実務補習、それから公認会計士登録後の継続的専門研修(以下、「CPE」という。)について、その内容や実施方法が適切かどうか検討する時期にあると考える。」
「監査業務に従事していない者に対し、どのように指導・監督・支援を行き渡らせていくかという問題も大きくクローズアップされている。」
「大手監査法人から中小監査法人への上場会社の監査人変更は、おそらく向こう数年は確実に続くと思う。したがって、中小監査法人において、人手が不足するという問題が出てくる可能性があると考える。また、非営利法人や公的機関を担う人材や地方のニーズに応える人材が十分かというようなアロケーションの問題もある。」
「海外も我が国と一緒で、不正会計が発覚するたびに自主規制の領域が狭められ、官の力によって独立性や監査に関する基準を詳細かつ厳格にし、そして監査人を基本的には監査業務に専念させるという方向になっている。これが本当に質の高い監査というものの実現につながるのか、疑問を持っている。監査の不備や自主規制が機能していなかったというのは、我が国においても過去指摘され、厳しい批判もあったと認識しているが、現在の欧州の潮流や監査に係る国際基準設定をめぐる動向は、かえって監査の質を水面下で徐々にむしばんでいくのではないかと懸念している。また、規制強化をする場合には、監査に対する規制と発行体である企業側の規制のバランスを取って実施すべきである。」
「監査法人の規模という点については、上場会社の監査をするためには、ある程度の規模が必要ではないかと思う。ただし、今後、監査法人の合併が進むという報道もされているが、それでは実際には監査品質の問題に対する解決策にはならないのではないか。公認会計士・監査審査会(以下、「審査会」という。)の指摘によると、合併を繰り返してきたある中小監査法人の検査結果においては、合併前のそれぞれの監査法人の監査の品質管理で問題は無いとトップが思い込んだ結果、不正を見過ごしたという事例がある。個人事業主の集まりのような、中小監査法人が合併しても監査品質は向上せず、不正が繰り返されるだけではないのかと感じた。そういう意味では、前回の会計監査の在り方に関する懇談会で議論された監査法人へのガバナンス・コードの導入について、大手監査法人あるいは準大手監査法人では定着してきているが、中小監査法人に対しても導入を検討すべきではないか。」
「リソース不足という点については、報酬依存度15%ルールが導入されると、淘汰される監査法人も出てきて合併も進むと思うが、先ほど申し上げたように、合併では監査品質の問題は解決しないのではないかと思う。そのため、監査法人の成立要件として、公認会計士が5人集まれば設立できてしまうという公認会計士法そのものの検討も必要ではないかと考える。」
「「第三の眼」というチェック機能について、先日、企業が大手監査法人から準大手監査法人、中小監査法人へ監査法人を変更しているという報道があった。邪推かもしれないが、企業側が内部統制を軽く見ている証拠ではないか。不正や不祥事の防止の為に払うコストが安過ぎるのではないかと思う。チェック機能を向上させる前に、内部統制や不正防止に対するコストをもっと高くすべきではないかと思う。」
「デジタル化への対応は、新型コロナウイルスの影響とも相まって、一気に加速している。各監査法人とも投資・研究を行い、実装する監査ツールも年々増加していると聞いており、特に不正取引を発見するための仕訳のスクリーニングなどで利用するケースがかなり見られている。IT化による監査の効率化は、新基準への対応や品質モニタリングへの対応による監査工数の増加と打ち消され合って、なかなかその効率化の部分を企業側に享受いただけない状況であると認識している。」
「中間財務諸表と中間監査は、我が国特有の制度になっており、監査基準が改訂されて国際基準ベースで対応を見直すが、この我が国特有の制度への対応に非常に工数がかかっている。中間財務諸表というのは、非上場の金融商品取引法の適用会社と早期是正措置の適用になる銀行等が適用になっているが、2021年3月期で年間500社から提出されている。こういったところについては、ぜひ見直しを議論していただけるとよいと考える。」
「中小監査法人の中には、自分の力以上にリスクのある企業を監査しているところが多いのではないか。その背景には、監査法人の規模を合併などで大きくし、監査先を増やすという経営志向があり、一方で監査の品質は高まっていない、という現状がある。」
「大手監査法人の課題のひとつに、監査法人が被監査会社のビジネスモデルの変化が理解されておらず、加えて、その背景にある経済環境の変化が理解されていない、ということを最も強く感じている。」
「上場会社を監査する監査法人の数は115法人あり、非常に多いと少し驚いた。なおかつ、その中で中小監査法人の数が非常に多い。おそらく日本の監査業界で監査の問題が起きないようにしていくためには、このような中小監査法人がいかに品質の高い監査を実施することができる方向に持っていけるかというのがポイントである。」
「現行の公認会計士法では、監査法人は5人の公認会計士で設立することができるが、これは監査法人制度ができた昭和41年から変わっていない。時代が当時と今では随分変わってきており、上場会社は小さい会社といえども相応に大きくなって複雑になっていることから、上場会社の監査を担当する監査法人の最低社員数を引き上げることも検討したほうがいいのではないか。社員の数を増やすことにより、公認会計士である社員のローテーションに安定的に対応することができるほか、出資金が増えて監査法人の財政基盤も安定化するといった様々なメリットがあることから検討が必要と考えている。当然、そのような話をすると反対意見が出てくるので、監査法人の設立そのものは現在の公認会計士法の5人ということで手をつけず、上場会社の監査を担当する監査法人の社員数について検討すればいいのではないか。」
「能力ある公認会計士の活躍の機会に関して、公認会計士試験の試験科目や受験資格など、試験内容の見直しをする時期に来ているのではないか。現在の複雑化・多様化した経済環境の中で公認会計士として必要な能力を持った人材であるかを確認する必要があり、例えば、IFRSや、あるいはデジタルに関連する情報通信技術(ICT)の概論など、そういったものを試験科目の中に取り入れられないかというような検討が必要ではないか。」
「内部統制監査の形骸化というのは、今の日本のやり方はダイレクト・レポーティングでないために、内部監査部門の実施するモニタリングとか、あるいは内部統制の有効性の評価に対する監査人の監査が、毎年同じような監査を実施する傾向にあるということにあるのではないか。ダイレクト・レポーティングに変えるべきと言うつもりは毛頭なく、現在も、基準上は監査人が自ら十分かつ適切な監査証拠を入手することが求められていることから、それを徹底してもらうことが重要だと思う。内部統制監査の形骸化という批判を受けないように、日本公認会計士協会から監査人への注意喚起といった対応・施策が必要ではないか。」
どういう方向に議論を持っていきたいのか、よくわかりませんが、中小監査法人についてふれている委員が多く、報道されているように、そのガバナンスや管理体制強化が中心テーマになるのでしょう。
中間監査については、そろそろ廃止してほしいものです。四半期レビューと同様の保証水準でよいでしょう。保証水準は、大きく、監査とレビューの2段階しかないのです。
内部統制監査は、ダイレクトレポーティングにした方が、会社にも監査人にも負担が小さくなるのでは。内部統制監査がなくても、監査人は内部統制をテストしなければならないわけですから。
監査法人の最低社員数5名を引き上げるようにという意見もありますが、むしろ、1人監査法人を認めて、地域の監査ニーズに対応できるようにした方がよいでしょう。監査業務への新規参入を増やすことにもつながります。監査法人の社員が他の監査事務所が行う監査に関与すること(1日でも)を禁止する無意味な規制も撤廃すべきでしょう。競業避止が目的なら、所属監査法人の承認を要するルールにすればまったく問題ありません。監査リソースが足りないというのなら、いまあるリソースを最大限活用することと、新規参入をしやすくすることを考えるべきでしょう。
試験については、実務で必要な知識はどんどん変わっていくので、試験にだけ新しい内容を入れてもどうなのかなと思います。内容の見直しは必要なのかもしれませんが、基礎的な領域に限定した方が、受験生は勉強しやすいでしょう。
会計不祥事が起きるたびに、監査人への規制圧力が強まっていますが、本来は、不正会計に甘い態度の企業側をまず厳しく取り締まるべきでしょう。金融庁は政治に対して弱く、政治は経団連など産業界に対して弱いので、安易に監査業界を標的にして、やってる感を出しているのでしょう。少なくとも、そういうふうに見えます。
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kaikeinews
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