MSワラントに手を出す外食上場企業が増えているという記事。
「土佐料理店「わらやき屋」を軸にカラオケやホテル、結婚式場の運営などを手がけるDDホールディングスは昨年10月、MSワラントを発行すると公表、外食業界で「MSワラントに手を出すとは、相当に苦しいのだろう」(中堅外食企業の経営者)と耳目を集めた。相次ぐ店舗休業や自粛の影響で同社の自己資本比率は前年比23ポイントも低下、わずか4%という危機的水準に陥っていたからだ。
MSワラント発行に手を出す外食企業は、DDホールディングスだけではない。今年1月には長崎ちゃんぽん店を展開するリンガーハットもMSワラント発行による増資を発表している。同社も自己資本比率を前年比20ポイントも落とし、増資を迫られていた。そこでMSワラントによって約24億円を調達しようというわけだ。
4月以降も、「サンマルクカフェ」を運営するサンマルクホールディングスや、焼き牛丼「東京チカラめし」、イタリアン「パスタmama」などを展開する三光マーケティングフーズといった有名外食企業が相次いでMSワラント発行に踏み切っている。」
MSワラントとは...
「MSワラントの正式名称は、「行使価額修正条項付新株予約権」(Moving Strike Warrant)。」
「行使価格を固定せず、株価が高かろうが低かろうが、MSワラントの引き受け手は前日終値から10%ほど安い価格で取得できるルールになっている。引き受け手は証券会社であることが多く、先のDDホールディングスやリンガーハットが発行したMSワラント引受先はモルガン・スタンレーMUFG証券、三光マーケティングフーズのMSワラントはスターリング証券が引き受けている。
市場価格よりも確実に安く買えるのだから、証券会社は儲かる。発行企業にとっては、株価が低くても資金調達が進む。発行企業にとっても引き受け手の証券会社にとっても、“悪くない”資金調達手段なのだ。
だが、両者の割を食ってしまうのが既存株主である。権利行使がされればされるほど発行株数は増え、1株当たりの価値は希薄化する。さらに、MSワラントの引き受け手は権利行使の際にカラ売りをしかけることが珍しくないため、権利行使のたびに株価には下落圧力がかかる。日本経済新聞の調べでは、昨年9月から今年3月までにMSワラントを発行した54社のうち、6割の34社が株価を下げた。「悪魔の増資」と呼ばれるゆえんだ。」
「餓死寸前に追い込まれた人間が毒入り饅頭を口に入れるようなもの」なのだそうです。
コロナ前の解説ですが、MSワラントを擁護しています。
↓
活用広がるMSワラントでの資金調達
権利行使を発行会社がコントロールできる形態が多い(大和総研)
「◆MSワラント発行の発表後、発行企業の株価が大きく下落する例があったため、投資家から発行を疑問視する声が一部にある。しかし、全ての企業でそのような状況になっているわけではないことに留意が必要である。
◆株式市場で資金調達し、事業を拡大させていくことは上場企業にとって自然な行動である。調達手段として、必ずしも公募増資が全ての企業に適切な方法であるとは限らない。第三者割当によるMSワラントのように、事業の進捗、資金需要、資本政策に合わせて柔軟な設計が可能な方法を検討することは非常に有用なことであると思われる。」
証券会社は手数料を稼ぐ側だからそういうでしょう。たしかに、毒まんじゅうを食べたからといって、かならず発病するとは限らないのかもしれません。
最近の「企業会計」カテゴリーもっと見る
最近の記事
カテゴリー
バックナンバー
2000年
人気記事