会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

地銀の私募投信購入、急膨張 当局はリスク管理に懸念(日経より)

地銀の私募投信購入、急膨張 当局はリスク管理に懸念

私募型の投資信託への地銀の投資が急増しているという記事。

「日銀のまとめによると、2月時点の金融機関の投信保有残高は20兆円。このうち地銀が10.5兆円と最大で、メガバンク(5.3兆円)の2倍の規模になった。...14年末に比べ地銀の残高は2.2倍、伸び率でメガバンク(6割増)を大きく上回る。その大半が私募投信とみられる。」

会計上の「メリット」もあるそうです。

「私募投信は会計上、「その他有価証券」に分類されることが多い。期中の価格変動で含み損益が発生しても決算時の損益に計上する必要はない。一方で投信を持つことで得られる毎期の分配金や、投信の売却益は本業のもうけである「コア業務純益」に計上できる。」

これはまさに、先日ASBJが公表した「金融商品に関する会計基準の改正についての意見の募集」の検討項目に挙がっていた論点です。

IFRSでは、評価損益も売却損益もPLに計上する方法と、逆に全てその他包括利益に計上する(「リサイクリング」は認められない)方法のどちらかを採用するので、もし日本基準をそれに合わせると決まれば、いいとこどりはできなくなります。

「IFRS では、①金融資産の管理に関する企業の事業モデル(以下「事業モデル要件」という。)及び②金融資産の契約上のキャッシュ・フローの特性(以下「契約キャッシュ・フロー要件」という。)に基づき、有価証券、債権、デリバティブ等、すべての金融資産について、それらの分類及び測定(償却原価測定、その他の包括利益(以下「OCI」という。)を通じて公正価値で測定(以下「FVOCI 測定」という。)又は純損益を通じて公正価値で測定(以下「FVPL 測定」という。))を決定する(IFRS 第 9 号 4.1.1 項)。 」(上記意見募集26項)

「IFRS では、普通株式への投資等、資本性金融商品に対する投資については、第 29 項の判断によると FVPL 測定となるが、売買目的保有でない場合には、当初認識時に公正価値の事後の変動を OCI に表示するという取り消しできない選択を行うことができる(以下「OCI オプション」という。)。

この場合、当該投資の売却時において、累積された OCI を当期の損益に計上すること(以下「リサイクリング」という。)は認められず、また当該投資には減損の定めは適用されない(IFRS 第 9 号 4.1.4 項、5.7.1 項(b)及び 5.7.5 項)。 」(32項)

金融商品会計はできるだけ早く改正して、銀行があやしい私募投信にのめり込むインセンティブを取り除くべきでしょう。

地銀の資金運用に関する記事。

地銀や信金が「運用のプロ」を雇うのが非常に危険な理由(2018年7月)(DOL)

「資産運用に注力しようと思っている金融機関の経営者に、是非覚えておいてほしい5ヵ条をお伝えしておこう。

【金融機関経営者、運用の5ヵ条】
その一 甘えを捨てて「本業」として運用に取り組む(できなければやるな!)
その二 許容できるリスクを自分で計算して運用する(できなければやるな!)
その三 完全な時価評価ができない対象への投資は避ける
その四 「運用は分からないが、人は判断できる」ことはあり得ないと知る
その五 市場の条件以上の「うまい話」などないとわきまえる」
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