企業会計基準委員会は、企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」と企業会計基準適用指針第33号「リースに関する会計基準の適用指針」を、2024年9月13日(金)に公表しました。これに関連するいくつかの基準・指針の公表・改正も行われています(その明細は当ページの末尾に掲載しました)。
大きな基準なので、ここではまず会計基準レベルの内容のうちポイントと思われるところをまとめてみました。
1.定義(会計基準5~24項の一部)
- 「リース」とは、原資産を使用する権利を一定期間にわたり対価と交換に移転する契約又は契約の一部分をいう。(「リースの識別」に関する規定あり(25~30項))
- 「原資産」とは、リースの対象となる資産で、貸手によって借手に当該資産を使用する権利が移転されているものをいう。
- 「使用権資産」とは、借手が原資産をリース期間にわたり使用する権利を表す資産をいう。
- 「ファイナンス・リース」とは、契約に定められた期間(以下「契約期間」という。)の中途において当該契約を解除することができないリース又はこれに準ずるリースで、借手が、原資産からもたらされる経済的利益を実質的に享受することができ、かつ、当該原資産の使用に伴って生じるコストを実質的に負担することとなるリースをいう。
- 「オペレーティング・リース」とは、ファイナンス・リース以外のリースをいう。
- 「借手のリース期間」とは、借手が原資産を使用する権利を有する解約不能期間に、次の(1)及び(2)の両方を加えた期間をいう。(31項も参照)
(1) 借手が行使することが合理的に確実であるリースの延長オプションの対象期間
(2) 借手が行使しないことが合理的に確実であるリースの解約オプションの対象期間
(貸手の処理はほぼ従来どおりであり、「ファイナンス」と「オペレーティング」の区分は残るようです。そのほか、引用はしませんでしたが、「所有権移転ファイナンス・リース」と「所有権移転外ファイナンス・リース」の区分も残ります(使用権資産の償却にも影響)。)
2.借手のリース
(1)リース開始日の使用権資産及びリース負債の計上額
- 借手は、リース開始日に、第 34 項に従い算定された額によりリース負債を計上する。また、当該リース負債にリース開始日までに支払った借手のリース料、付随費用及び資産除去債務に対応する除去費用を加算し、受け取ったリース・インセンティブを控除した額により使用権資産を計上する。(33項)
- 借手は、リース負債の計上額を算定するにあたって、原則として、リース開始日において未払である借手のリース料からこれに含まれている利息相当額の合理的な見積額を控除し、現在価値により算定する方法による。(34項)
(リース開始時点で、必ずしも「使用権資産」=「リース負債」とはならないようです。)
(2)利息相当額の各期への配分
- 本会計基準第 34 項における利息相当額については、借手のリース期間にわたり、原則として、利息法により配分する(適用指針[設例 9-1])。(36項)
(3)使用権資産の償却
- 契約上の諸条件に照らして原資産の所有権が借手に移転すると認められるリースに係る使用権資産の減価償却費は、原資産を自ら所有していたと仮定した場合に適用する減価償却方法と同一の方法により算定する。この場合の耐用年数は、経済的使用可能予測期間とし、残存価額は合理的な見積額とする(適用指針[設例 10])。(37項)
- 契約上の諸条件に照らして原資産の所有権が借手に移転すると認められるリース以外のリースに係る使用権資産の減価償却費は、定額法等の減価償却方法の中から企業の実態に応じたものを選択適用した方法により算定し、原資産を自ら所有していたと仮定した場合に適用する減価償却方法と同一の方法により減価償却費を算定する必要はない。この場合、原則として、借手のリース期間を耐用年数とし、残存価額をゼロとする
(適用指針[設例 9-1])(38項)
(このほか、「リースの契約条件の変更」や「リースの契約条件の変更を伴わないリース負債の見直し」に関する規定もあります。)
3.貸手のリース
- 貸手は、ファイナンス・リースについて、通常の売買取引に係る方法に準じた会計処理を行う。(45項)
- 貸手は、リース開始日に、通常の売買取引に係る方法に準じた会計処理により、所有権移転ファイナンス・リースについてはリース債権として、所有権移転外ファイナンス・リースについてはリース投資資産として計上する。(46項)
- 貸手における利息相当額の総額は、貸手のリース料及び見積残存価額(貸手のリース期間終了時に見積られる残存価額で残価保証額以外の額)の合計額から、これに対応する原資産の取得価額を控除することによって算定する。当該利息相当額については、貸手のリース期間にわたり、原則として、利息法により配分する。(47項)
- 貸手は、オペレーティング・リースについて、通常の賃貸借取引に係る方法に準じた会計処理を行う。(48項)
4.表 示
(1)借 手
- 使用権資産について、次のいずれかの方法により、貸借対照表において表示する。
(1) 対応する原資産を自ら所有していたと仮定した場合に貸借対照表において表示するであろう科目に含める方法
(2) 対応する原資産の表示区分(有形固定資産、無形固定資産、投資その他の資産等)において使用権資産として区分する方法(49項) - リース負債について、貸借対照表において区分して表示する又はリース負債が含まれる科目及び金額を注記する。
このとき、貸借対照表日後 1 年以内に支払の期限が到来するリース負債は流動負債に属するものとし、貸借対照表日後 1 年を超えて支払の期限が到来するリース負債は固定負債に属するものとする。(50項) - リース負債に係る利息費用について、損益計算書において区分して表示する又はリース負債に係る利息費用が含まれる科目及び金額を注記する。(51項)
(2)貸 手 (省略)
5.注記事項 (省略)
6.適用時期
- 本会計基準は、2027 年 4 月 1 日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用する。ただし、2025 年 4 月 1 日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から本会計基準を適用することができる。 (58項)
適用指針については、目次(「結論の背景」を除く)を載せておきます。
設例は「設例20」まであります。枝番もあるので、設例の数はもっとあります。
関連して公表・改正された基準・指針は以下のとおり。
企業会計基準第35号
「『固定資産の減損に係る会計基準』の一部改正」
企業会計基準第36号
「『連結キャッシュ・フロー計算書等の作成基準』の一部改正(その2)」
改正企業会計基準第18号
「資産除去債務に関する会計基準」
改正企業会計基準第20号
「賃貸等不動産の時価等の開示に関する会計基準」
改正企業会計基準第29号
「収益認識に関する会計基準」
改正企業会計基準適用指針第6号
「固定資産の減損に係る会計基準の適用指針」
改正企業会計基準適用指針第10号
「企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針」
改正企業会計基準適用指針第13号
「関連当事者の開示に関する会計基準の適用指針」
改正企業会計基準適用指針第15号
「一定の特別目的会社に係る開示に関する適用指針」
改正企業会計基準適用指針第19号
「金融商品の時価等の開示に関する適用指針」
改正企業会計基準適用指針第23号
「賃貸等不動産の時価等の開示に関する会計基準の適用指針」
改正企業会計基準適用指針第30号
「収益認識に関する会計基準の適用指針」
改正実務対応報告第35号
「公共施設等運営事業における運営権者の会計処理等に関する実務上の取扱い」
改正移管指針
「移管指針の適用」
改正移管指針第6号
「連結財務諸表等におけるキャッシュ・フロー計算書の作成に関する実務指針」
改正移管指針第9号
「金融商品会計に関する実務指針」
改正移管指針第10号
「特別目的会社を活用した不動産の流動化に係る譲渡人の会計処理に関する実務指針」
改正移管指針第13号
「特別目的会社を活用した不動産の流動化に係る譲渡人の会計処理に関する実務指針についてのQ&A」
【速報】「リースに関する会計基準」等公表(新日本監査法人)(5分程度の解説動画あり)