日大背任容疑事件を取り上げた記事ですが、背景としてガバナンスの問題なども取り上げています。会計士のコメントもあります。
「実は、他の法人とは異なる、学校法人独自の理事長の選任法に問題がある。
学校法人には評議員会があるものの、財団法人などのように評議員会が理事を選任する議決権はない。しかも現職の職員や教員が評議員を兼ねることもあり、彼らが理事長に逆らえるはずもない構図になっているという。
「さらに日大の場合、125人もの評議員がいます。これは私立大学ではかなり多い。そのため意見がまとまるはずもなく、また36人いる理事は実質的に理事長が決めているので執行部案に反対などできません。アメフト問題の際にもこうした日大のガバナンス体制が問題視されましたが、何も改革されることはありませんでした。井ノ口容疑者がわずか2年で理事に返り咲くことができたのもそのためです」(同)」
会計士のコメント。
「また、本来業務の発注先は理事会が決定すべきだが、日大事業部という完全子会社に発注したことにも問題がある。こうした子会社が学校法人の不正に使われるケースが増えているという。学校法人に詳しい公認会計士が語る。
「大学の決算書は企業で言えば単体決算で、子会社を含んだ連結決算になっていません。最近、学校法人では子会社を作って、学校法人自身が行ってきた管理業務などを委託するケースが増えています。あくまで別法人なので、理事会が把握できないまま事業の委託先を決めたり、会社の経費を理事長や一部の理事が使い込んだりするケースなどが問題になっています。ですから、日大事業部という子会社にいた腹心の井ノ口容疑者が、実質的な決定権限を握ることができたわけです」」
文科省の役人のコメント。
「文部科学省の中堅官僚は言う。
「近年、大学では不祥事が相次いでいて、ガバナンスの強化は喫緊の課題です。日大にも年間約90億円の助成金が国から出ており、今回の事件は国会でも追及される可能性があります。今、大臣の下に『学校法人ガバナンス改革会議』を置いて評議員会の権限を財団法人並みにする議論が進んでいます」」
当サイトの関連記事(「学校法人ガバナンス改革会議」について)
アメフト騒動を甘く見た日大~病院工事・背任事件の源流は(Yahoo)
「ここで、多くの大学事情に詳しくない読者は「なぜ、大学が株式会社を持っているの?」と疑問に思われるかもしれません。
大学が事業会社を運営することは戦後から認められています。
ただし、その大半は「●●大学出版会」など、学術書などの出版事業が大半でした。
2001年、文部省科学通知「学校法人の出資による会社の設立について」で、大学100%出資が認められるようになりました。」
「生活・教育用品の販売等は大学生協が担っています。しかし、全ての大学に大学生協があるわけではありません。
と言って、大学が直接運営するとなると、業務上のちょっとした変更等も理事会などに諮る必要があり煩雑です。
事業会社にすれば、業務がスムーズであり、一括受注によるスケールメリットも期待できます。しかも利益が出れば大学に寄付することもできます。
これは便利、ということで2000年代以降、規模の大きな大学を中心に設立が相次ぎます。
日本私立学校振興・共済事業団が学校法人に対して行った2015年調査(調査実施は2013年)では、415大学法人のうち144法人(34.7%)が会社を設立、と回答しています。」
「この背任事件を田中理事長はどのように乗り切ろうとしているのでしょうか。
一言でまとめれば、ダンマリ作戦です。
田中理事長は、過去のスキャンダル・騒動は大きなものでは3回、直面しました。不動産会社からの違法献金疑惑、黒い交際疑惑、そして2018年のアメフト騒動です。
他の大学であれば、いずれも理事長を辞任してもおかしくないほどの問題でした。このピンチを田中理事長はいずれもダンマリを決め込む、記者会見などは一切しない、という方針を貫きます。
結果、それぞれ、逃げ切りに成功しました。」
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