あらためて問われるコーポレートガバナンス―2つの象徴的な倒産=2024年を振り返って(9)
2024年を振り返る連載のうちのひとつで、今年倒産した環境経営総合研究所と船井電機を取り上げた記事。
マスコミではあまり多く取り上げていないようですが、環境経営総合研究所はひどい粉飾をやっていたようです。
「9月に東京地裁から会社更生開始決定を受けた(株)環境経営総合研究所(TSR企業コード: 294046615、以下ERI)は、異例づくめの倒産劇だった。環境に優しい新素材の開発・量産に成功した新進気鋭の成長企業は、脱プラやSDGsの流れを追い風に高い評価を得て、日本政策金融公庫(DBJ)からも出資を受けた。政府系金融機関が増資を引き受けたアナウンス効果は大きく、成長の原動力にもなった。ところが、その内実は代表主導による10倍以上に水増しした売上や架空在庫の操作を通じた粉飾決算によるものだった。
一連の倒産劇は、資金繰りに行き詰まった代表が粉飾決算をDBJに告白したことからスタートする。事態を看過できないDBJは、ただちに債権者の立場でERIの会社更生手続きを申し立てた。粉飾決算は15年以上にわたったが、その背景には「反社勢力」からの脅しによる資金流出があったという。裁判所に提出された会社更生申立書には、生々しい記録も記されていた。」
「ERIは代表主導による独善的な粉飾決算。一方の船井電機は、経営権が創業家から離れたことが、凋落の分岐点になった。両社の経営体制は対照的に映るが、ともにガバナンス(企業統治)が著しく欠如していた点は共通している。その結果、様々な人物や勢力の介入を許して身を滅ぼした。」
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膨らむ債務、しぼむ想像力=2024年を振り返って(4)(東京商工リサーチ)
「船井電機の準自己破産の申請代理人は奥野総合法律事務所、破産管財人は阿部・井窪・片山法律事務所だ。奥野総合は(株)日本リース(TSR企業コード: 291155308、1998年9月会社更生、負債2.1兆円、商号は当時)の保全管理人、阿部・井窪・片山は(株)日本航空(TSR企業コード: 295556064、会社更生、グループ含め負債2.3兆円)の管財人をそれぞれの筆頭弁護士が担った「倒産村」の超一流事務所だ。ベテラン審査マンはこの情報だけで多くを感じ取る。また、準自己破産にも関わらず、申請日に破産開始決定がなされ速やかに従業員へ解雇予告がなされている。司法も含めた綿密な事前調整が伺われ、入り組んだ利害関係と全体像の大きさを突きつける。」