企業会計基準公開草案第80号「中間財務諸表に関する会計基準(案)」等に対する意見について
日本公認会計士協会は、2023年12月15日に公表された企業会計基準公開草案第80号「中間財務諸表に関する会計基準(案)」等(→当サイトの関連記事)に対して提出した意見について、公表しました。
まず、「中間会計基準の適用初年度における比較情報の取扱いの明確化」を要求しています。
「(理 由)
上場会社において、中間会計基準を適用する会社及び非上場会社で同じく中間会計基準が適用される半期報告書を提出することを選択する会社の各々で、中間会計基準の適用初年度の比較情報の取扱い(経過措置)が明示されていない。特に、非上場会社においては、会計処理それ自体や開示が大きく変更され、これについては実務的に遡及できるかどうかという点が懸念されるところ、現行の定めを前提とすると、比較情報に遡及処理することになるものと想定される。
現時点で公開草案が公表されている「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則」及び「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」の改正に係る経過措置(附則の規定)とも調整されるべき事項かとも思われるが、同規則の改正附則案が示されていないこともあり、両者の整合性についても現状では明らかではない。
このため、会計基準と開示規則の整合性を図っていただくことをお願いしつつ、会計基準でも遡及処理の要否について取扱いを明確にする必要があると考えられる点、ご検討いただきたい。」
たしかに、厳密には、四半期会計基準による前の期の数字を新・中間会計基準による数字の比較情報として、そのまま載せていいのかという問題はあるのでしょう。従来の会計処理をほぼ踏襲しているとはいえ、第1四半期と第3四半期がなくなる影響はあるでしょうし、また、これを機会に会計処理を変更する場合もあるかもしれません。非上場会社で、新・中間会計基準を選択する場合も同様です(むしろ影響はより大きい?)。協会の意見のとおり、本来は遡及処理が原則なのでしょう。
遡及処理の要否や注記の方法なども含めて、はっきりさせる必要があるのかもしれません。すごい大問題というわけではないとは思いますが...
「中間洗替え法と中間切放し法の従前の会計方針との継続性」に関する意見もあります。
「(理 由)
本公開草案において、中間決算における有価証券の減損処理(中間洗替え法と中間切放し法)については、会計方針として継続的に適用する旨が定められている。しかしながら、これまでの四半期決算における四半期切放し法及び四半期洗替え法との継続適用については特に明示的な言及がない。
この点、実質的に同様の会計処理を定める中間会計基準の開発方針からは、継続適用を求めるべきと考えられる一方、四半期決算と改正後の中間決算が異なる会計基準(制度)であるところからは、継続適用が求められないと考えることが自然とも捉えられる。
この点について、実務の多様性が生じる可能性があることから、その取扱いを明示すべきと考えられる。また、仮に継続性を求めない場合でも、これまで四半期洗替え法を適用していた会社が、中間切放し法を採用した場合又はその逆のケースでは、中間財務諸表に注記を求めて、財務諸表利用者へ適切な情報が提供されるような手当をすべきであると考えられる。
なお、棚卸資産の評価についても同様と考えられる。」
この際、洗替法に変更したい(あるいはその逆)というニーズはあるのかもしれません。それは、会社ごとの正当な理由がなければ変更できないのか、それとも、そもそも、新・中間会計基準という異なる会計基準(制度)になるのだから、継続性は必要ないと考えるのか、どちらもありえそうです。
そのほかにも、さまざまな意見を述べています。
本当は、四半期会計基準を作る際に、四半期でも半期でも適用できるような汎用的な基準にしておけば、少なくとも会計基準レベルでは不整合になることはなく、よかったのかもしれませんが、今さらいってもしかたがありません。
今後、状況が変わって、四半期報告書復活ということになれば、また、もめるのでしょう。