国際会計基準審議会(IASB)は、8月1日に、IAS第1号「財務諸表の表示」及びIFRS実務記述書第2号「重要性の判断の行使」の狭い範囲の修正案を公表しました。(これはそのプレスリリースの和訳)
「IAS第1号は、「重要な(significant)」会計方針を開示することを企業に要求している。当審議会は、情報の開示に関する閾値を明確化するため、「重要な」への言及を「重要性のある(material)」会計方針を開示するという要求に置き換えることを提案している。
この提案は、会計方針に関する情報は、企業の財務諸表に含まれている他の情報と合わせて考えた場合に、当該企業に関しての財務諸表利用者の意思決定に影響を与える可能性があるならば、重要性があると述べている。」
原語の「significant」と「material」の違いはよくわかりません。和訳の方もどこがどう違うのか...。(会計監査における「重要性」は「material」の方です。ただし、「特別な検討を必要とするリスク」は、元の言葉では「significant」なリスクです。)
公開草案の企業会計基準委員会による和訳も掲載されています。
具体的な規定(案)をみると、「重要性がある」かどうか判断する際に考慮する事項が示されています。
「117 企業は、重要な重要性がある会計方針を開示しなければならない。ある会計方針に関する情報は、企業の財務諸表に含まれている他の情報と合わせて考えた場合に、一般目的財務諸表の主要な利用者が当該財務諸表に基づいて行う意思決定に影響を与えると合理的に予想し得るならば、重要性がある。」
「117B ある会計方針は、当該会計方針に関する情報が、財務諸表における他の重要性がある情報を理解するために必要とされる場合には、重要性がある。例えば、ある会計方針が重要性がある取引、その他の事象又は状況に関連していて、かつ、次のようなものである場合には、企業は、当該会計方針は財務諸表に対して重要性があると考える可能性が高い。
(a) 企業が方針を変更することを要求されるか又は選択したことにより、当報告期間中に変更され、この変更により、財務諸表に含まれている金額に重要性がある変動が生じた。
(b) ある IFRS 基準における1つ又は複数の代替的選択肢(例えば、投資不動産を取得原価又は公正価値のいずれかで測定する選択肢)から選択された。
(c) 具体的に当てはまる IFRS 基準がない場合に、IAS 第8号に従って策定された。
(d) 企業が会計方針の適用にあたって重要な判断又は仮定を行うことを要求されていて、IAS 第1号の第122項及び第125項に従って当該判断又は仮定を開示している領域に関連している。
(e) IFRS 基準の要求事項を、企業の特定の状況を反映する方法で(例えば、ある基準の要求事項が、重要性があるクラスの取引、その他の事象又は状況についての事実及び状況にどのように適用されるのかを説明することによって)適用している。」(公開草案和訳より)
日本基準(企業会計原則注解)では、代替的な会計基準が認められていない場合には、注記省略可となっていますが、今回の改正案(従来から考え方はあまり変わらない?)では、会計方針に選択肢があるかどうかは、判断する際の一要素にすぎないようです(選択肢がなくても重要性があれば要注記)。こういうところも、日本基準と海外基準の微妙な差異なのでしょう。
そのほか「定形化された記述や IFRS 基準の認識又は測定の要求事項を単に繰り返すだけの情報」ではだめだともいっています(117C)。(IFRSになじみがない日本のIFRS財務諸表利用者には、そういう注記でも有用だと思いますが)
また、117項より、「重要性がある取引、その他の事象又は状況に関連」しない会計方針は、重要性なしとなりそうです。
プレスリリースの原文。公開草案原文もこちらから。
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IASB proposes amendments to IFRS Standards to improve accounting policy disclosures
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