有価証券報告書から呻き声が聞こえる
東芝粉飾事件に関連して、東芝の「財務制限条項」に着目した記事。名門企業ではあっても、財務的には少し前からだいぶ傷んでいたようです。
「東芝にこれ(財務制限条項)が付いていた。それも昔からではない。突然、登場してくるのは2009年3月期から。言うまでもなく、前年秋にリーマンショックが起き、東芝はこの期、約3436億円の最終赤字に沈んでいる。しかもこれによって自己資本比率は前期の17.2%から一気に8.2%に急落している。元々、売上高(2008年3月期)7兆2088億円の規模の会社にしては低い比率だったが、もはや、債務超過すれすれという水準に落ち込んだのである。」
「財務制限条項の中身は明らかにされていないが、有報を点検すると、「連結純資産」「連結営業損益」「格付」か、その比率と見られる。これらが、銀行と取り決めた数値を下回れば、元々長期返済の予定だった約9545億円の社債・長期借入金(2008年3月期末)を一気に返済しなければならなくなる。それは黒字倒産すら思わせる激震である。
この時の有報の記述に、その際の恐怖がほの見える。
「2008年度の連結財政状態により、財務制限条項に抵触する懸念がありましたが、同決算の確定前に金融機関との間で財務制限条項の修正を合意し…」
恐らく、期末に近づいたところで財務制限条項に触れる可能性が高いと判断し、銀行と交渉して条件を緩めて貰ったのだろう。日本を代表する大企業も実はそれ程に内実は苦しかったのである。」
その後増資などにより財政状態はよくなっていますが、財務制限条項は残っており、それが経営陣への重圧になったのではないかといっています。(社債などを発行していれば、財務制限条項がついていること自体は異常ではないと思われます。)
監査的には、不正リスクを高める強い要因があったといえるのかもしれません。監査人はそれに対してどういう対応をしていたのでしょうか。
今後については・・・
「これら(減損や繰延税金資産取り崩し)を修正決算に考慮せざるを得なくなれば、東芝の財務体質は、さらに悪化する。となれば、一段と強い財務制限条項が必要になるはずだ。それが意味するのは、実質的な銀行管理である。」
いうまでもないことですが、財務制限条項抵触のおそれは不正リスク要因として挙がっています。
「経営者が、次のような第三者からの期待又は要求に応えなければならない過大なプレッシャーを受けている。
(例)
・(省略)
・ 取引所の上場基準、債務の返済又はその他借入に係る財務制限条項に抵触しうる状況にある。」(監査基準の改訂及び監査における不正リスク対応基準の設定に関する意見書付録1 より)
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