会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

かんぽ、違反契約6327件 年内は保険販売自粛(日経より)

かんぽ、違反契約6327件 年内は保険販売自粛

日本郵政グループが、9月30日、かんぽ生命保険の不適切販売をめぐる調査の中間報告を公表したという記事。顧客を食い物にしてきた実態の一部が明らかになったようです。

法令違反と社内規定違反が合計で6327件あった。調査を終えた顧客のうち、2万6036人が二重払いした保険料の返金など不利益の解消に向けた説明や対応を求めていることも公表した。」

「日本郵政の長門正貢社長とかんぽ生命の植平光彦社長、日本郵便の横山邦男社長が記者会見して、中間報告の内容を説明した。長門社長は「一人残らず、最後の1円になるまで不利益を解消する。一日も早い信頼回復に向けて、全身全霊を傾け打ち込むことが経営責任だ」と述べ、辞任は否定した。植平氏と横山氏も顧客対応や再発防止に取り組むとし、辞任を否定した。」

「9月27日までに4割弱にあたる6万8千件の調査を終えた。

虚偽説明や不利益を被る可能性を伝えないといった保険業法違反や説明に指定の書式を使わないなどの社内規定違反が合わせて6327件あった。このうち2割強にあたる1400件は法令違反の可能性があるという。」

不適切販売、全容解明遠く かんぽ問題で中間報告(日経)

「不利益を与えた疑いのある18万3千件の4割弱しか調査できておらず、全容解明にはほど遠い。」

「具体的には「新契約を結んで半年間は旧契約を解約できない」と虚偽の説明をして保険料を二重徴収した事例が多かった。逆に旧契約の解約から3カ月間は新契約に加入できないとの虚偽説明で顧客を無保険状態に置いた事例もあった。顧客に契約の変更を勧めながらも、旧契約の解約後に新契約に乗り換えできなかった事例も確認した。」

金融庁が調査に入っているそうですが、保険の不適切(一部は違法)販売そのものだけでなく、不正があることの開示を遅らせたのではないかという、開示不正疑惑についても徹底的に調べるべきでしょう。(たぶん、金融庁は、他の役所を忖度して、何もしないのだと思いますが)

それにしても、4割しか調査が済んでいなくて、第2四半期決算を締めることができるのでしょうか。まず、調査済み分については、顧客の意向に従って、契約の訂正を会計上すべて反映させる必要があるでしょうし、調査が済んでいない分は、何らかの方法で引き当てをする必要があるのか検討しないといけないでしょう。漫然とスケジュールどおりに決算発表するなとということは許されません。ちなみに、日本郵政の会計監査人はあずさです。

日本郵政は、NHKの報道に対して、圧力をかけていたそうです。

NHKは日本郵政の「圧力」になぜ屈したか、ウラに隠された事情(現代ビジネス)

昨年4月に放送されたNHKの「クローズアップ現代+」では、かんぽ生命保険の不適切な営業実態を取り上げた。のちに金融庁の立ち入り検査を受けるなど、日本郵政グループを揺るがす事態となったこの問題を最初に報じたのがこの番組である。

NHKは番組終了後にさらなる続編の放送を目指し、情報提供を呼びかける動画をツイッターに投稿した。この動画に対し日本郵政が「犯罪的営業を組織ぐるみでやっている印象を与える」などと抗議して上田良一会長宛で削除を求めたため、番組の幹部が日本郵政に事情を説明したが、その際に「番組制作と経営は分離し、会長は番組制作に関与していない」などと発言したという。

これを突破口とみたのだろう。日本郵政は、「放送法では番組の最終責任者は会長だ」「NHKで全くガバナンスが利いていない」と反論し、釈明を求める文書を昨年8月にNHKの上田良一会長宛に送付。すると、NHKは動画を削除し、続編の放送もいったん延期した。

それだけではない。昨年10月に日本郵政がNHKの経営委員会に、NHKのガバナンス体制の検証を求める書面を送ると、石原進NHK経営委員長(JR九州相談役)が、番組幹部の発言に誤りがあったとして上田会長を注意。翌月には上田会長が、番組幹部の発言は「明らかに説明が不十分で、誠に遺憾です」と事実上の謝罪文書を日本郵政側に送ったという。」

日本郵政は、大きな問題だと認識したから、わざわざ抗議したのでしょう。昨年の時点で、不正の規模をある程度把握していたのでは。

それにしても、自分たちを差し置いて、他の組織のガバナンスをうんぬんするとはひどい会社です。

NHKと日本郵政、「暴力団」に近いのはどちらか
メディアの「弱腰」が政治介入を招く
(プレジデント)

「なぜ、そんな弱腰の対応にNHKは終始したのか。実は、抗議をしてきた相手が、日本郵政の鈴木康雄副社長だったことが大きいだろう。謝罪文を受け取った鈴木副社長が、経営委員会宛ての文書を送り付けていたことが、報道で明らかになっているが、それを読むと、その強引さが分かる。

そこにはこうある。

「会長名書簡にある『放送法の趣旨を職員一人ひとりに浸透させる』だけでは充分じゅうぶんではなく、放送番組の企画・編集の各段階で重層的な確認が必要である旨指摘しました。その際、かつて放送行政に携わり、協会のガバナンス強化を目的とする放送法改正案の作成責任者であった立場から、ひとりコンプライアンスのみならず、幹部・経営陣による番組の最終確認などの具体的事項も挙げながら、幅広いガバナンス体制の確立と強化が必要である旨も付言致しました」

企画・編集段階で重層的にチェックをし、幹部・経営陣が番組を最終確認しろ、と言っているのだ。」

「NHKには組織のトップである会長のうえに、外部の経営者らからなる経営委員会があるが、経営委員が個別番組の編集に介入することは放送法で禁じている。経営委員会がガバナンスを理由に番組に口を出したことには、メディア界などから一斉に批判の声が上がっている。まして、NHKが報じたかんぽ生命の不正販売問題は、その後事実として明らかになり、大きな社会問題になっている。日本郵政側の抗議は、その事実を隠蔽しようとした形になったわけで、その余波は大きい。」

「前述の文書を送った鈴木副社長は今も納得していないようだ。10月3日に野党から国会内に呼び出された鈴木氏は、番組取材の手法や報道内容にも問題があったとNHKを改めて強く批判したのだ。

「まるで暴力団と一緒。殴っておいて、これ以上殴ってほしくないならやめたるわ、俺の言うことを聞けって。バカじゃねぇの」と記者団に語ったと朝日新聞は報じている。」

「この鈴木氏、文書でも「放送法改正案の作成責任者」だったと語っているように、元総務官僚で、事務次官まで上り詰めた人物だ。よほど、メディアに言うことをきかせるよう考えたうえで法改正したかと言わんばかりの発言をしている。おそらくNHKは鈴木氏が持つ総務省の影を恐れたに違いない。放送免許を所管する監督官庁である。抗議を無視することはとうていできないと考えたのだろう。」

「NHKはまるで暴力団」日本郵政副社長が記者団に発言(朝日)(動画あり)

かんぽ生命問題の中間報告、現場に責任押し付けの姿勢は変わらず(日経ビジネス)

「「外部のアンテナ、社内でのアンテナが十分立っていなかった」。日本郵政の長門正貢社長は、経営陣の間に現場で起こっていることを把握しようとする感度が不足していたと述べた。テレビ番組や雑誌などで、不適切な保険販売やノルマについて相次いで報じられた際も、当初は「偏向した報道であると思った」「アンフェアな取り上げ方だと感じた」という。そして、取り上げられた問題に関し、現場にきちんと確認することもせず、テレビ局に抗議したことを「反省している」と語った。」

取締役の略歴(日本郵政)

タイトル:日本郵政グループにおけるご契約調査の中間報告及び今後の取組について(日本郵政他)
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