ASBJにおける繰延税金資産の回収可能性に関する指針の検討は大詰めを迎えており、4月30日の会議でも、相当長時間をかけて議論しています。議事の動画を見ると、当サイトで気になっている、ルール変更が会計方針変更なのか、見積変更なのかについては、やはり、当初案のとおり会計方針変更という扱いで、変更の影響はPLには計上せず変更年度の期首の利益剰余金に直入する(ただし過年度には遡及しない)ということで決まりそうです。
作成者側の何人かの委員からは見積り変更としてPL計上すべきではないかという意見が出されていますが、新ルールを通すことを優先して、しぶしぶ承知したというような感じになっています。ただし、公開草案で意見を求める質問項目にはするようです。
事務局側の返答を聞くと、変更年度に説明のつかない損益が計上されるのはまずいということのようです。過年度遡及会計基準の趣旨からするとわからないでもありません。
会社にとって一番損なパターンは、新ルールに従い多く繰延税金資産を積めるようになったので、その増加額を期首剰余金に計上したが、その後、期末時点で業績見込みが急に悪化し、期首に増額した分も含めて、取り崩すことになった(取り崩し額はPL計上)というものでしょう。上場会社であれば、四半期報告書でいったん繰延税金資産を増額するのであきらめもつきますが、年度決算だけの場合は、一つの決算のなかで、利益剰余金を増やした額だけ、PLの法人税等調整額で損益のマイナスになり、何をやっているのかということになるでしょう。もちろん、こういう極端なケースでなくても、繰延税金資産はいずれ取り崩すので、同じことなのですが・・・。
また、見積り方法の変更が会計方針の変更だとすると、金融商品の時価評価モデルを変更するような場合や、貸倒引当金の見積り方法を監督当局のマニュアル変更に合わせて見直すという場合(そういうことがありうるのかはわかりませんが)、会計方針の変更であり、過年度遡及が必要になるのでしょうか。
いずれにしても、いろいろと考えさせられる議論です。
関係する会議資料はこちら
↓
「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針(案)」-適用時期等の検討(PDFファイル)
「27. 遡及基準の基本的な考えは、以下の通りであると考えられる。
会計方針を変更した場合、過年度の財務諸表との比較可能性を確保するために、過年度の財務諸表を変更後の方法により遡及修正を行う。
見積りの変更は、「新たに入手可能となった情報」に基づくものに限られる。
これらの遡及基準の基本的な考えに基づくと、代替案 A、B 及び C いずれの代替案も課題があり、採用することは難しいと考えられる。」(資料より)(注:代替案は影響額をPL計上するなどの案)
新指針自体が、適用年度以降における回収可能性見積りに関するより妥当な方法という「新たに入手可能となった情報」とは考えられないのでしょうか。
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