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新国立競技場建設で初の契約 大成建設と33億円分(朝日より)

新国立競技場建設で初の契約 大成建設と33億円分

大成建設が、新国立競技場の建設について、スタンド部分の工事契約を締結したという記事。事業主体の日本スポーツ振興センター(JSC)が発表したものです。

「JSCによると、契約金額は一部建設資材の発注などにかかる32億9400万円。・・・大成建設は昨年秋に公募型のプロポーザル方式で施工予定者に決まっており、今回は随意契約。」

2520億円を大成建設と竹中工務店で分けて、それぞれ一括して契約するのかなと思っていましたが、まず、30億円強だけ契約したようです。

こういう場合は、工事契約会計基準を適用する単位はどうなるのでしょうか。

同基準7項では以下のように規定しています。

「工事契約に係る認識の単位は、工事契約において当事者間で合意された実質的な取引の単位に基づく。

工事契約に関する契約書は、当事者間で合意された実質的な取引の単位で作成されることが一般的である。ただし、契約書が当事者間で合意された実質的な取引の単位を適切に反映していない場合には、これを反映するように複数の契約書上の取引を結合し、又は契約書上の取引の一部をもって工事契約に係る認識の単位とする必要がある。 」

「当事者間で合意された実質的な取引の単位」は、大成が担当すると報じられているスタンド部分全体を指すのか、それとも、契約を締結した単位なのでしょうか。前者だとすると、スタンド部分の工事全体での収益と原価を、今回の契約を締結した現時点で見積もって、赤字工事であれば、赤字全額を引き当て処理しなければなりません。後者だと、今回契約した分だけで会計基準を適用すればいいということになります。あるいは、後者だけれども、次回以降の契約分は、別単位とはせず、今回契約分に次々と「結合」していくのでしょうか。

工事契約会計基準の実務に詳しい人に聞いてみたいところです。

ちなみに、会計士協会から公表された「工事進行基準等の適用に関する監査上の取扱い」では、「意図的な工事契約の認識の単位の設定による工事損益率の調整」が不正事例のひとつとして挙がっています(10項)。

また、取引の単位の決定にかかわるリスクについてもふれています。

「実質的な取引の単位をどのように判断するかに当たっては、当該工事契約の管理者以外の者には容易に判断することが困難な場合や、一つの案件に対して複数の部署が関与している場合がある。このような場合には、工事進行基準に関する会計処理が適切に行われるように情報が共有及び収集されていなければ、工事契約に係る認識の単位が適切に決定されない可能性もある。 」(24項より)

判断が難しい面もあるようです。

(こういう問題は、完成基準の場合にもあるわけですが・・・)

当サイトの関連記事(「工事進行基準等の適用に関する監査上の取扱い」について)

新国立競技場:建設に向けた初契約を締結…大成建設と(毎日)

「JSCによると、建設に向けた契約は初めて。この契約では、地盤の掘り起こし作業に向けて、掘り出した土が崩れないための壁を設置するための鉄骨材などを発注した。」

新国立競技場、大成建設と最初の契約…本体部分(読売)

「JSCによると、この日の契約は免震装置の金属製部品など資材調達に関するもの。総工費2520億円の内訳は、本体部分と周辺整備を行う大成建設が1570億円、巨大アーチなど屋根部分をつくる竹中工務店が950億円で、同社との契約時期は調整中という。」

新国立契約、見切り発車 資材発注 大成建設と33億円(東京新聞)

「いずれも随意契約で、現行の消費税率8%が適用される年内に全ての契約を結ぶ方針。」

そうであれば、4-12月期でみれば、どの方法でも、あまり変われないことになります。しかし、いろいろな報道を読むと、年内に、すんなり合計2520億円という確定金額で契約ができるとも思えないのですが・・・。
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