会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

リスク管理が働かず 積水ハウスが詐欺事件の報告書公表(日経より)

リスク管理が働かず 積水ハウスが詐欺事件の報告書公表

積水ハウスが、同社が被害者となった不動産取引詐欺事件に関し、調査報告書の概要と再発防止策を公表したという記事。

「本社のリスク管理部門が機能しないなど詐欺の被害に至った問題点や、社長や会長の責任などについて言及。重要投資案件を検証するための経営会議を設置するなど、再発させないための対策も盛り込んだ。」

「同社は1月24日の取締役会で仲井嘉浩取締役常務執行役員が社長に昇格し、阿部(俊則)氏が社長から会長、和田勇氏が会長から取締役相談役に就く2月1日付の人事を決めた。人事の発端となったのがマンション用地を巡る詐欺事件だ。

2017年に土地の所有者と名乗る人物から土地購入を進め約63億円を支払ったが、後日、別の所有者がいることが判明。損失計上に追い込まれた。」

株主から、阿部会長を提訴して損害賠償請求するよう求める請求があったそうです。

「また、同社は同日、3月5日付で個人株主から同社監査役に対し、阿部俊則会長を善管注意義務違反などで訴え、損害額と同額の損害賠償と遅延損害金の支払いを求める請求があったと発表した。」

取引事故の概要。

分譲マンション用地の取引事故に関する経緯概要等のご報告(PDFファイル)

全3ページというごく簡単なものです。

「3 月末頃に、本件不動産の売却情報を入手した担当部署は、直ちに購入に動き出しましたが、A氏のパスポートや公正証書等による書面での本人確認を過度に信頼し切って、調査が不十分な状況で契約を進めてしまいました。

また、不動産購入稟議では、起案した東京マンション事業部に対して、マンション事業本部が一線を画し、リスク感覚を発揮すべきところ、その役割が果たされませんでした。さらに、本社のリスク管理部門においても、ほとんど牽制機能が果たせなかったと考えられます。

稟議審査時に、リスク管理の側面から内容をもっと吟味し、追加調査を指示する等の対応が必要であったと考えます。本社から地面師詐欺を意識した特別な対応を要求することは非常に困難ですが、本件不動産の取引内容を勘案すれば、審査期間の確保とリスクの洗い出しを指摘すべきでありました。」

「売買契約締結後、本件不動産の取引に関する複数のリスク情報が、当社の複数の部署に、訪問、電話、文書通知等の形で届きました。しかし、本社のリスク管理部門は、マンション事業本部の判断に追従する形で、これらのリスク情報を取引妨害の類と判断し、十分な情報共有も行われませんでした。その結果、本社からの牽制機能が働かず、現場は契約の履行に邁進することとなりました。個々のリスク情報を一歩引いた目線で分析すれば、本人確認に対する考え方も違っていた可能性は高く、リスク情報の分析と共有を現場と本社関係部署が一体となって実施する必要があったのではないかと考えます。」

株主からの請求についてのプレスリリース。

株主からの提訴請求について(PDFファイル)

「本提訴請求においては、分譲マンション用地取引での巨額詐欺事件が発生したことの結果として、当社が被った 55 億 5,900 万円の損害について、代表取締役 阿部俊則に業務執行上の判断の誤り及び他の取締役・使用人に対する監督監視を怠ったという、任務懈怠があり、善管注意義務・忠実義務違反があるとして、同額の損害賠償並びに遅延損害金の支払いを求める責任追及等の訴えを提起することが請求されております。 」

会社が応じなければ、株主代表訴訟ということになるのでしょう。

そのほか、社長・会長の交代に関する報道について、プレスリリースが出ています。

当社取締役会の議事に関する報道について(PDFファイル)

報道どおり、もめたことは事実のようです。

「本取締役会では、「阿部社長の代表取締役及び社長職の解職の動議」(理由:分譲マンション用地取引事故に関する責任の明確化)及び「和田会長の代表取締役及び会長職の解職の動議」(理由:新しいガバナンス体制の構築)その他動議が提案されました。」

積水ハウス 1月に社長と会長「解任」騒動(NHK)

「積水ハウスは、ことし1月の取締役会で当時の和田勇会長が相談役に就き、阿部俊則社長が会長に就任する人事を決め、記者会見をしました。

積水ハウスは6日、この人事を決めた取締役会では、55億円余りの特別損失を計上することになった東京都内の土地取引の責任をめぐって、阿部社長の解任を求める緊急動議が出されたほか、和田会長の解任を求める緊急動議も出されていたと発表しました。社長の解任を求める動議は否決され、会長はみずから辞任を申し出たということです。会長は解任動議が可決される情勢だったため、辞任を申し出たと見られます。

この日は、社長と会長双方の解任が議論される異例の事態の末に、経営トップの交代が決まりましたが、積水ハウスは人事についてこれまで「世代交代を図るため」と説明していました。」

積水ハウス「クーデター」の元凶となった地面師事件「その後の深層」(現代ビジネス)

日経新聞の積水ハウス「会長解任」記事に、副会長が大反論!(現代ビジネス)

積水ハウス、絶好調の業績に漂う不安の正体
人事問題は幕引き、問われるガバナンスの質
(東洋経済)
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