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第一三共、初の赤字へ 印製薬買収で特損3540億円

asahi.com(朝日新聞社):第一三共、初の赤字へ 印製薬買収で特損3540億円 - ビジネス

製薬大手の第一三共が、昨年秋に買収したインド製薬大手ランバクシー・ラボラトリーズの株価が大幅に下落したため、09年3月期決算で3540億円の特別損失を計上するという記事。

「第一三共によると、ランバクシー株の約64%を取得するために4883億円を投じたが、取得した株は昨年末時点で1288億円まで下落し、差額の大部分を特別損失に計上した。」

ランバクシー・ラボラトリーズ・リミテッドに係る関係会社株式評価損の計上、 及びのれんの一時償却に関するお知らせ(PDFファイル)

会社のプレスリリースによれば、個別財務諸表において、ランバクシー株の株価下落により関係会社株式評価損3,595億円を計上し、連結財務諸表においては「個別決算においてランバクシーの株式に係る関係会社株式評価損を計上することに伴い、連結決算においてのれん一時償却額3,540億円を特別損失として計上」するとのことです。

現行基準では子会社株式も時価下落による強制評価減の対象であり、また、会計士協会の資本連結実務指針により、子会社株式を評価減した場合には、連結上の子会社の純資産の簿価(のれんを含む)が個別における評価減後の子会社株式簿価を上回らないよう、のれんを一時償却することになっているので、現行基準に従った処理といえます。

しかし、前から気になっているのですが、支配の対価を取得原価に含む子会社株式を、たまたま上場株だからといって、取引所の相場(支配の対価は含まない)まで評価減するのは、若干抵抗を感じます。もちろん、株価が大幅に下がっているということは、市場が子会社の事業の先行きを悲観的に見ているということですから、評価減が必要かどうかを検討することは必要ですが、市場で売却するしか回収する手段がないその他有価証券と同じ評価をする必要はないようにも思われます。

また、資本連結実務指針により、個別における評価減がのれんの一時償却に直結するというのも疑問があります。減損会計基準では、固定資産の減損処理においては将来キャッシュフローの現在価値(あるいは時価の方が高ければ時価)で評価するとされているのと整合していません。もちろん、株価が下がっているということは、減損の兆候であり、減損しているかどうかの検討は当然必要ですが、個別で評価減したから連結上ののれんも自動的に評価減されるというのは、少しおかしいように思われます。

さらに、日本の基準では、企業結合においてのれん以外の無形の資産を(企業結合前から子会社において計上されていたもの以外に)計上することはあまりないようですが、海外の実務は、さまざまな無形資産を企業結合時に計上するとも聞きます。そうなると、結果としてのれんの計上額は少なくなり、減損処理のやり方も違ってきます。第一三共の例では、取得原価の相当部分をのれんが占めているようですが、海外基準であれば、異なる配分になるかもしれません。たとえば、昨年末の企業結合会計基準改正で論点のひとつとなった試験研究費の扱いなどは、大きな影響を与えることになるでしょう。

子会社株式はそもそも金融商品か、また、のれんの減損処理はどうあるべきか、についてあらためて考えさせられる事例でした。
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