会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

東芝が米原発産業の「ババを引いた」理由(ダイヤモンドオンラインより)

東芝が米原発産業の「ババを引いた」理由

東芝の米国原子力事業巨額損失問題を取り上げた記事。特に新しい情報が書かれているわけではありませんが、全体の構図はこうなのだろうと思わせる記事です。

ストーンアンドウエブスター(S&W)の買収について。

「買収が実行された2015年12月、東芝は粉飾決算で大騒ぎしていた。「不適切な会計処理」が問題化したのは3月。損失を先送りするバイ・セル取引など姑息な操作が明るみに出て、西田厚聰元会長と佐々木則夫元社長の確執が話題になった。粉飾の根源に米国子会社WHが抱える損失が浮上したのがこの年だ。訴訟でS&Wに負ければ「WHの経営は順調」と強弁してきた東芝に大きな打撃になる。

呑みこんでしまえば会社間の揉め事はなくなる。だが訴訟にまでなった赤字要因が消えるわけがない。原発工費の膨張がもたらす損失を東芝グループは抱え込むことになった。」

両社でもめていたわけですから、どちらの会社の決算にも反映されていない原価があったのでしょう。買収して一体になれば、相手会社の負担分だといって、言い逃れはできず、決算に取り込むしかありません。

S&Wの元親会社側について。東電原発事故以降、リスクを東芝に押しつけることに成功し、東芝は「ババを引いた」結果になったようです。

「CB&Iは米国最大のゼネコン、ショウ社を買収して成り上がった会社だ。ショウは東芝が頼りにしてきた会社でもあった。2006年にWHを買収した時、協力したのがショウ。原発工事で稼ぐショウにとってもWHが健在であることが必要だった。東芝は77%、ショウが20%の株式を持つことになった。

スリーマイル島の事故を経験しているショウは原発に不安を抱いていた。「将来、株を手放すときは引き取る」と東芝に約束させたのである。そして3・11福島事故が起きるとショウは権利を行使してWHから手を引いた。更に会社を丸ごとCB&Iに売却して原発事業から撤退してしまった。

CB&Iも原発を不安視した。WHと組んで工事を担ってきた子会社S&Wの損失処理が課題となっていた。結果から見ればCB&Iは訴訟合戦でWHを追い詰め、S&Wを引き取らせることに成功した。「ゼロ円」で売却しながら240億円の負い銭を取って、7000億円の損失を置き土産にした。」

WHの買収自体がババ抜きだったそうです。

「WHが売りに出た時からゲームは始まっていた。米国の電機産業を代表したGEやWHは1980年代からモノづくり企業として存続するのは難しくなっていた。GEはパテントやメンテナンスなどサービス産業に活路を見出し、改革できなかったWHは売りに出された。

電機部門はドイツのジーメンスが買い、原子力部門は1999年、英国核燃料会社(BNFL)が引き受けた。だが再生は困難だった。スリーマイル島の事故以来、安全検査は厳しく、電力自由化が重なり電力会社は疲弊し、原発に逆風が吹いていた。BNFLはWHを持て余す。原子力産業は米国にとって戦略分野。売り先はどこでもいい、とはいかない。英国がダメなら日本。米エネルギー庁から経産省に売却が持ちかけられ2006年、入札で東芝が買い取った。

ライバルの三菱重工が「相場の2倍」と驚くほどの高値。純資産3000億円程のWHを、後のショウからの引き取り分を含め6600億円で買ったことになる。喜んだのは売り抜けた英国公社とWHの処理に困っていた米国。背景には日米原子力協定で優位に立つ米国の政治力があった。事実上の経営権を米国に残しながら、日本から資金を引き出しWHを支える、という日米同盟である。」

経産省が立てた国策に迎合すると、ろくなことがないようです。
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