金融庁は、仁智監査法人に対し、2022年5月31日付で処分を行いました。
処分内容は、「契約の新規の締結に関する業務の停止1年(令和4年6月1日から令和5年5月31日)」と「業務改善命令」です。
「契約の新規の締結に関する業務の停止」なので、契約済みの監査は続けることができますが、「契約の新規の締結」に契約の更新も含むとすると、1年後にはクライアントはゼロになってしまいます(クライアントの決算期などによってはそれ以前に)。契約更新を含まないとすれば、大きな影響はないかもしれませんが、実際には、上場監査クライアントが同法人から離れているようです。
処分理由は、公認会計士法第34条の21第2項第3号に規定する「運営が著しく不当と認められるとき」に該当することです。
当サイトの関連記事(公認会計士・監査審査会による処分勧告について)(審査会の指摘内容など)
ちなみに、金融庁には、「公認会計士・監査法人に対する懲戒処分等の考え方(処分基準)」というのがあり、それによると、「運営が著しく不当」の基本となる処分は「業務改善命令」で、「特に重大な場合」や「重大な場合」は、業務停止となっています。今回は「重大な場合」だから業務停止1年なのか、それとも、2015年にも処分を受けている(業務改善命令)ので、それにより処分が加重されたのか、金融庁のリリースを見てもはっきりしません。監査法人の処分のプレスリリースは、だいたいが、これでもかこれでもかと、不備を列挙するものなので、重大な不備なのかそうでないのか、読み取るのが難しくなっています。審査会ができた当初の大手監査法人への処分勧告(例)などは、今から考えると非常にシンプルでした(シンプルでも「業務の運営が著しく不当」という結論は同じですが)。
それにしても、虚偽証明により、監査先の利害関係者に迷惑をかけたのなら、厳しい処分もやむを得ませんが、虚偽証明がなかったのに(もしかしたらあったのかもしれないがそのような指摘はなされていない)、監査法人の存続にかかわるような長期の業務停止というのは、バランスを著しく欠いているようにも思われます。
もっとも、虚偽証明で処分されるよりも、「運営が著しく不当」で処分される方が、パートナー個人にはダメージが少ないのかもしれません(虚偽証明だと個人も処分される)。
金融庁、仁智監査法人に業務改善命令 コナカなど担当(日経)(記事冒頭のみ)
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