9月29日に開催された企業会計審議会総会(+会計部会)の議事録が公開されました。(会議資料についてはこちら→当サイトの関連記事)
この会議では、前半は、内部統制に関する審議、後半は、その他の会計・監査関連のトピックの報告と質疑応答が行われ、内部統制に関しては内部統制部会でさらに検討することが決まりました。
以下、気になった発言を引用します。
まず、内部統制に関して。
「日本における内部統制というのは形骸化、報告書の形骸化とか、経営者による無効化を含めたコンプラのレベルで問題が生じている可能性を示唆しているわけですが、他方で、途中に出てきた国際的なCOSO-ERMというのは、これは経営マターとしての効率性を考えたリスクマネジメントをどうするのかという潮流であって、2つ、二兎を追うということではあるかと思いますけれども、相反する部分もあります。」(松井委員)
(財務報告にかかる内部統制に焦点を絞らないと、まとまらないのでは。少なくとも会計監査人による監査の対象は財務報告にかかる内部統制に限定すべきでしょう。)
「経営者が記載する内部統制報告書についてです。この記載内容は、現状は、特に問題がない場合、重要な不備がない場合には、どこの会社の報告書を見ても、大体、表紙と合わせて2枚、書いてある内容はほぼ同じという定型的なものになっています。ただ、企業にとってのリスクはそれぞれ違うはずですので、それぞれどこにリスクがあって、それに対する内部統制はどこが重要であり、それゆえにどういう内部統制を構築したのかというようなところをもっと説明することによって、内部統制のポイントが分かってくるのではないかと思います。」(金子委員)(会計士の委員です。)
「現状は、経営者が作成した内部統制の適正性を監査するということになっておりますので、内部統制に重要な不備があっても、適正に記載されていれば適正の監査意見が出るというところは利用者にとっては分かりにくいのではないかと考えます。それからさらに、内部統制の評価範囲等について、経営者と監査人で見解の相違等がある場合にあっても、質的な違い、質的な判断というところにはかなり主観的な判断も入りますので、評価の見直しを促すというのは隔靴掻痒というところもあるかと思います。経営者が評価するということは非常に重要であり、その結果を利用するということも十分あり得ますけれども、やはり監査人自身が自ら評価範囲を決めて有効性を評価するということも非常に意義があるのではないかと考えておりますので、こうした点も含めて検討課題に乗せていただけるとありがたいなと思っております。(金子委員)
(これは,ダイレクトレポーティングを求める意見でしょうか)
「特に各企業とも、例えばガバナンス委員会とか、コンプライアンス委員会とか、リスクマネジメント委員会だとか、トップも参加する委員会もあり、かつ財務・経理・総務部門で特化して担当している担当者あるいは兼任の担当者もおりますけれども、スタッフ数は圧倒的に足りないと思いますし、どうしても漏れが出てきてしまう部分はあって、言わば内部統制の理念と、現場でどう対応していくかというところのギャップをどのように埋めていくかというのが大変大きな課題だと認識しております。」(川村(雄)委員)
「コーポレートガバナンス・コードの領域になるかもしれませんが、取締役会がちゃんと機能しているかとか、あるいは監査役等が機能しているかというようなことも内部統制の実効性を高めるためには必要なのではないかという気がいたします。
そういう意味で今後引き続き検討することは賛成ですけれども、今までのボイラープレート化した報告書について、さらに詳しく出せとか、より細かい監査が必要だという方向ではなく、省力化するところは省力化しながら、ポイントを絞った検討が必要なのではないのかなという感じがいたします。」(岡田委員)
「会計監査の動向として、監査報告書におけるKAMの開示をはじめ、ここ数年で大きな制度改正が複数あります。本年度は重要な虚偽表示リスクの識別と評価に関する監査基準の改定が行われ、監査従事者は所要の研修を受けて、現在実務対応を行っているところです。さらに、監査に関する品質管理基準の改訂や倫理規則の改正など、高品質な監査を遂行するための新基準の適用が予定されています。加えて、今後、グループ監査についても大幅な改正が予定されています。監査の現場においてはまず、これらの国際的な基準と同等性を保つための制度改正対応が最優先課題であると考えており、内部統制基準等改正の検討に当たっては、優先課題やリソースの制約を踏まえつつ、拙速にならないように時間軸も十分考慮いただきたいと申し上げます。」(小倉委員)(会計士協会の役員)
(協会は、あまり乗り気ではないのでしょうか。財務諸表監査の基準への対応で手一杯なのでしょう。)
「まず1点は、内部統制というのは最終的に企業自治の問題ですので、企業の実情は様々ですが、その実情・状況に応じた柔軟な体制整備が可能な基準にすべきだろうと、こういうふうに考えております。」(林委員)
「今回の議論は、最終的には制度設計の問題ですので、もちろんコストベネフィットの比較考量というのは重要ですけれども、コスト負担面が強調され過ぎないように、どちらかというと、いかに有効性・実効性を高めるかというところに重点を置いて議論を進めていただきたいと考えています。」(林委員)
「これまで訂正報告の問題が度々出てまいりましたが、これにつきまして、法令改正等の関係もありちょっと自信がないのですけれども、訂正は一度で済ませるようにして、過年度に遡った訂正をやめる。これはダイレクトレポーティングを採用するかどうかということとも関連してきますけれども、内部統制報告書の訂正は財務諸表の訂正とは意味が違うのではないかと思います。また、過年度に遡った訂正というのは、あまりにも形式的な措置のようにも思います。」(堀江委員)
(訂正内部統制報告書の強化には消極的な意見のようです。)
「私どもも、個別の事案を多々見る機会がございますけれども、やはりできている会社とできていない会社の差が大きいというのが実感としてございます。不正会計の状況などを見ますと、問題がありそうなポイントがチェックの対象外になっていたり、内部統制の有効性が無効化されてしまっていたりということも非常に多く、見ていないポイントで問題が起きているということが不正の事案ではかなり見受けられるという感じがするところでございます。
そうなってしまいますと、手間がかかる割には効果がないということになってしまいますので、その点をよく考えていただけるとよいのかなと思います。必要なコストはしっかりかけるということは必要でございますけれども、そのときに効率性も十分に考慮した仕組みを構築するといった観点もぜひ御検討いただきたいと考える次第でございます。そのときのポイントになりますのが、内部統制の性格や目的がどういうところにあるのか、そこに応じて重点の置き方やメリハリを検討していくというのが一つの大事なことではないかなと思います。」(青委員)
その他のトピックから、四半期開示見直しや監査法人ガバナンスコードについて。
「次に、四半期開示の見直しについて簡単にコメントいたします。最も重要なことは、財務情報の開示後退がないように配慮していただきたいということです。...第1四半期・第3四半期については、決算短信を上場会社に義務づけるとともに、添付書類になっております財務諸表の同時開示をすること、そして、虚偽表示に対する規制当局のエンフォースメントを担保することが必要であると考えます。
また、第2四半期については、非上場有価証券報告書提出会社のバランス等も踏まえれば、非上場会社よりも社会的に影響が大きい上場会社は、中間監査報告書を添付した半期報告書を提出すべきだと考えております。」(大瀧委員)
「四半期開示について、エンフォースメントが非常に重要だと思います。これがないと何のためかということが分からなくなってしまうところもあるのですが、ただ、これはまさに岡田委員御指摘のとおり、要するに、うっかり凡ミスみたいな話から、かなり故意のある、悪性の強いものまでいろいろな段階があると思うので、これの程度のノッチをつけるということが工夫していただきたいなと思う点が2点目です。」(川村(雄)委員)
「四半期報告につきましては、速報性の確保と事務負担の軽減という観点で、ご提案の見直しには基本的に賛成でございます。ただ、保証という観点から、半期報告が復活したときに、中間監査は我が国独自の制度ということに加え、保証の水準が年度監査とレビューの間といったように非常に分かりにくい。それから、有用性意見という名称の是非。こういったところも含めると、中間監査基準の再検討も含め、情報の信頼性をどのように担保するかについての多面的な議論が必要になるのかなと思います。」(堀江委員)
(大瀧委員とはちがって、監査論の学者である堀江委員は、現行の中間監査ではまずいという意見のようです。)
「林委員からお話をいただいた監査法人のガバナンス・コードの見直しについて、私がこの公認会計士法の説明をする中で、この話を飛ばして御説明してしまって申し訳ございませんでした。ガバナンス・コードの理念とか今回の上場会社監査事務所登録制度を導入するに当たって、上場会社を監査される全ての監査事務所にコード自体は受け入れていただくということを考えていること、こういった趣旨に照らしまして、実質的なところでその趣旨が実現できるように検討を進めてまいりたいと思っております。今後、金融庁で、秋頃、10月頃になろうかと思いますが、有識者検討会というのも再開しまして、改訂に向けた検討を行っていきたいと考えてございます。」(廣川企業開示課長)
ということで、監査法人ガバナンスコードの見直しを、10月頃からはじめるようです。また、任意でコードを適用できるというのではなく、全ての監査事務所に強制されるようです。