経産省が4年後の手形廃止を目標としていることを取り上げた記事。
手形の取引は激減しているそうです。
「2021年には手形交換高枚数が3588万2000枚、交換高金額が122兆9846億5200万円、取引停止処分件数が242件となり、2006年以降の15年間で手形交換高枚数は73.3%減、交換高金額は74.3%減、取引停止処分件数は96.2%減とものすごい勢いで減少している。
実際、金融機関の現場からはこんな声が聞こえてくる。「流通枚数の減少とともに手形割引の依頼の減少も顕著です。印紙代の節約目的などもあり、大手企業による電子手形への切り替えが大きく影響しているのではないか」(都内信用金本部の審査担当)」
手形廃止のメリット、デメリットは...
「まずメリットは「融通手形」がなくなることだ。実際に商取引がないにもかかわらず、他の企業と共謀して手形を振り出して現金化したり、支払い手段として利用したりする不正な手形利用(融通手形)は、資金繰りが悪くなった企業が手を染めるケースがほとんどだ。そして、その期間が長くなるだけ取引先などへの被害額も拡大していく。そうした不正がなくなれば、善意の取引先は守られ、健全な取引が増えていくことになる。
一方、デメリットは「経営者の支払いモラルの低下」だ。手形は「人質」と同然、振り出した以上、決済できなければ「不渡り」となり、前述のように倒産に至ってしまう。かつて筆者が金融機関で当座預金を担当していた頃、手形決済のための当座資金を集められない中小企業の社長が奥さんと泣きそうな顔をしながら奔走したのを覚えている。それだけ手形を振り出す責任は重いものなのだ。
しかし近年はどうだろう。手形を利用する文化のないIT関連(サービス業)を中心とした企業ばかりが設立され、「今の若い社長は手形を知らないし見たこともない」(地方銀行審査担当)状況だ。
そして、手形文化を知らない社長が増えて現場で目立ち始めたのが、振り込みや入金の複数カ月にわたる遅延情報の増加だ。手形による支払いではないので約束の日に支払いができなくても不渡りにならないし、取引先は「待ってください」と言われれば待たざるを得ない。ゆえに経営者の決済に対するモラル低下を強く感じている。もし仮に、新興企業の決済に手形が利用されていたら、相当数の企業が早期に倒産に至っていたのではないかと考える。」
融通手形がなくなるのはよいことですが、会社間で実体のない取引をぐるぐる回すという点で似ていなくもない循環取引(融通手形と同様に資金繰り確保目的のものもある)は、令和になっても健在です。
支払いモラル低下という指摘は、たぶんあたっているのでしょうが、そもそも、不渡り2回で有無を言わせず実質倒産というのも、債務者に厳しすぎたのかもしれません。また、昔なら倒産していたような財政状態が悪い会社も、生き残っているということになるので、債権管理は、よりきちんとやらないといけないということなのでしょう。
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