オリンパスのジャイラス社買収に絡んで多額の報酬を受け取っていた投資助言会社の中心人物が、バブル崩壊期にオリンパスの「損失先送り」処理に関与していたとみられるという記事。
「オリンパスは07年に英医療機器メーカー、ジャイラスを2117億円で買収したが、その際に「アクシーズ・アメリカ」を投資助言会社に選び、関連会社と合わせて6億8700万ドル(当時のレートで687億円)という破格の報酬を支払っている。この会社の代表者は野村証券出身の佐川肇氏となっているが、佐川氏らを知る関係者は、実質的に指示を出していたのは、アクシーズ・ジャパン証券(東京・中央区)(現アクシーズ・ジャパン)の社長を一時期務めていた中川昭夫氏だと説明している。」
「中川氏を知る関係者によると、同氏はバブル期の80年代には一般事業法人に財テクを指南。その後、1990年の日経平均株価の暴落をきっかけとするバブル崩壊で、財テクにのめり込んでいた企業が一挙に損失を抱え込むことになると、損失の表面化を避ける「損失先送りスキーム」の組成に携わり、企業に持ち込んでいた。
同スキームは、投資損失が出た有価証券を決算期の違う別の企業やファンドに一時的に売り渡すなどのテクニック。政府は1992年の証券取引法改正で証券会社が顧客企業の投資損失を埋め合わせる「損失補てん」を禁止したが、損失先送りスキームが「損失補てん」とみなされるかどうかはその内容によって決まるため、「取引のグレーゾーン」(外資系証券幹部)として、90年代には損失計上を避けたい日本企業が多用し、内外の証券会社が企業に提供していた。」
「複数の関係者によると、中川氏が財テクや損失先送りを提案していた主要顧客の1社がオリンパスだった。同氏はバブル絶頂期の88年に入社したドレクセル時代に、すでにオリンパスを顧客として持ち、他の事業会社と同様に投資商品を売り込んでいたという。」
「中川氏はドレクセル破たん後、91年から96年までペイン・ウェーバーに在籍し、同社東京支店のマネージング・ディレクターの立場で株式部長を務めた。「企業の財テクの指南役から一転して、損失処理策に携わり、『ポートフォリオの入れ替え』という名目で『損失先送りスキーム』を編み出しては提案していた」(証券関係者)という。株式に限らず、海外投融資の失敗による「損失隠し」も請け負うなど「企業からはとても重宝がられていた」(大手銀行出身者)との指摘もある。複数の関係者は「オリンパスにも同様のスキームを提案していた」と証言している。」
記事によれば、「損失先送りスキーム」は、ペイン・ウェーバーだけでなく、クレディ・スイス・ファースト・ボストン・グループ(当時)も提供しており、オリンパスは「信託受益権再売買スキーム」を契約していたのだそうです。
現行の会計基準では、有価証券は原則時価評価ですし、いわゆる市場価格がないような金融商品も、ポートフォリオの入れ替えのために売買すれば、新たに取得した資産はその時点の時価が当初の帳簿価額となります。連結基準も支配力基準であり、SPCを絡めたからといって簿外にすることはできません。したがって、こういうスキームは無効です。
仮に、オリンパスがつい最近までこういうスキームを継続し含み損を抱えたままであり、そしてそれを巨額報酬で精算しようとしたとすれば、極めて悪質な粉飾決算ということになります。
ただし、今回の記事で指摘された事項だけでは、状況証拠にすぎません。会社が自ら明らかにしない限り、いつまでも疑惑は解消しません。監査人も怖くて監査報告書を出せないでしょう。監査報告書が出なければ上場廃止になってしまいます。
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