11月16日に開催された企業会計審議会総会・第8回会計部会の議事録が公開されています。(会議資料はこちらから→当サイトの関連記事)
この会議では、まず、監査に関する品質管理基準の改訂案の説明と承認が行われました。
副大臣の挨拶より。
「今回改訂された監査に関する品質管理基準は、監査事務所に監査業務の質を合理的に確保することを求めるものであり、監査基準と一体として適用される重要な基準と考えております。今回の改訂により、監査事務所が、経済社会の変化に応じ、主体的にリスクを管理し、質の高い品質管理を実現していくことを期待しております。」
その他は、最近の動向に関して、金融庁事務局やASBJからの説明のあと、委員が自由に意見を述べています。上記基準の承認の他は、特に何かを決める会議ではなく、有識者のご意見拝聴といった感じです。
以下、気になった部分。
「収益認識会計基準が2021年4月から適用開始されています。当協会ではこれまで、会員向けに研修を行うとともに、基本的な論点について図表や設例を用いて解説するQ&Aを公表したほか、業種別の切り口でポイントを絞って解説した追補版も公表しています。このほか、当協会の会員向け相談窓口には、収益認識会計基準に関連して中小監査事務所を中心に昨年から30件ほどの質問が寄せられ、回答を行っております。これまでのところ、収益認識会計基準は円滑に適用されており、重要な問題は生じていないと認識をしています。
なお、期末においては開示項目が大幅に増加することになりますため、参考情報として、表示、注記に関する基本的な論点を解説するQ&Aシリーズを公表する予定であり、収益認識会計基準の円滑な導入に今後も取り組んでいきたいと考えております。」(小倉臨時委員)(会計士協会の人です。)
「現在、大規模監査法人のマンパワー不足により中小監査法人による監査が増加していることを前提に考えるならば、報告書の4ページにあるように、デジタライゼーションに関する規模の小さい法人の設備投資の援助はぜひ必要なアジェンダになるのではないかと思いますし、さらに、市場へのアプローチとして難しい問題もたくさん含みますけれども、中小企業の規模が妥当なのか、監査報酬は妥当なのか、そういったことについてもヒアリングをし、監査活動を維持できるような環境というのがどのようなものなのかについても、踏み込んで考える必要もあるかもしれません。」(松井臨時委員)
「私は、内部統制部会長も拝命しておりますので、今回、ほかの色々な検討事項が示されたわけですけれども、この内部統制報告制度については、まずは課題分析などから進めていきたいと思っておりますので、御協力のほどよろしくお願いいたします。」(橋本委員)
「私の専門分野から見ますと、サステナビリティ情報の保証が重要な課題となってくるかと思います。御案内のとおり、EUではサステナビリティ情報に対して、財務諸表の監査人による限定的保証業務の受審を義務づけ、3年後には、それを合理的な保証に切り替えることも検討すると、こういう提案がなされております。もちろん、必ずしもこれに完全に歩調を合わせて制度改正をするという必要はありませんけれども、今後の国際動向を注視しながら、どういう対応をするか検討することになりますから、その際、保証の対象となる情報は何か、情報の何を保証するか、誰が保証するか、どのように保証するか、それから法定の制度とするのか、任意とするのかということを検討しなければなりません。...この機会に、保証業務意見書の改訂も視野に入れて議論を進めるべきではないかと考えております。」(林委員)
「ディスクロージャーワーキング・グループが有価証券報告書という法定開示の中に、気候変動を入れることを提言されたことはよかったと思うんですけれども、有価証券報告書については、既に相当な分量がありまして、例えば、財務諸表に限っても注記を読むだけでも手いっぱいのところに、どのような形で読み手に注目されるような、埋もれないような書き方ができるのかというのがポイントだと思うのです。
そうしますと、ディスクロージャーする側の企業の誠実性というのも大事ですけれども、情報量が多ければいいというわけではないわけで、開示される情報の質とか信頼性、比較可能性、比較可能性というのは時系列で比較できるのかと、それからクロスセクションで比較できるのかといったことが大事になってきます。」(挽委員)
「FRS任意適用会社が増える中で、投資家の中には日本企業間における財務諸表開示の比較可能性の低下を懸念する声も聞かれます。具体的な例として、営業利益の表示があります。...今後のIFRSの改正動向にもよりますが、複数の会計基準が並存する中で、日本企業間において、営業利益での比較ができるようにするなど、日本企業間の比較可能性向上のための施策が必要ではないかと考えております。」(大瀧臨時委員)
「サステナビリティ情報に代表されるように、財務諸表以外の情報の重要性が、上場企業の開示において、格段に増しているという状況を踏まえまして、上場企業の開示制度全般の見直しをすべきではないかと思います。開示制度は、これまで一貫して新たな開示を積み重ねる方向で制度改正が進められてきましたけれども、金商法、会社法、上場規則に基づく開示の3つの開示要請の中で役割が重複しているものもあると思います。サステナビリティ情報の開示負担の大きさを考えますと、既存の開示のうち重複感のあるものを整理していくことは不可欠ではないかと思います。在り方懇のその他の論点で頭出しされていますけれども、有価証券報告書と会社法の事業報告等の一元化を、まず実現すべきではないかと思います。改正会社法により、金商法の開示と事業報告の一元化の道筋は示されておりますけれども、法令レベルで一元化を求めていきませんと、なかなか選択する会社も少ないというのが現状ではないかと思います。会社の作成負担の軽減にもつながりますし、金商法の開示における監査役等の役割の明確化にもつながるのではないかと思っております。
それから、四半期短信と金商法の四半期報告書の重複も検討していくべきだと思います。今後、ディスクロージャーワーキングで議論されていくものと思いますけれども、例えば、1Qと3Qは添付書類の見直しを含めて短信のみとして、2Qは金商法に基づいて中間監査を廃止してレビュー報告に一本化する、その上で四半期報告の提出を求めるというような抜本的な見直しも可能ではないかと思います。」(住田委員)
「のれんの国際的な議論に関しましては意見が割れているということは皆さんも御案内のとおりですけれども、大きく3つに割れておりまして、償却すべきだという方と、償却すべきでないという方と、状況によってどちらでもよいという方で、大きく3分の1ずつに割れているという形になっております。
その中で、2つ大きな要因がありまして、1つは、米国会計基準を作っているFASBの議論で、のれんの償却の再導入をすべきだという意見が支配的だということで、IASBとFASBで違う基準があってはいけないのではないかという考え方から、償却をしたほうがよいのではないかという考え方が出ているというのが、まず1つあります。
それから、もう一つは真ん中にいるどちらでもよいという方々から、先ほど御紹介しました、開示の充実がされれば償却を再導入してもいいという考え方の方が出てきたということで、IASBとしては、その意見を踏まえて、パッケージで考えれば、再導入ということも検討できるのではないかということで、検討が進んでいるということです。」(ASBJの川西副委員長)
「作成者側の立場からしてもデジタルオーディット、本当にうまくいけば負担が少なくなるということで大歓迎をしているところなんですが、グループの監査を受ける中でも、海外に比べて日本はなかなかベネフィットが難しいかなという感じがしています。根本的な原因はペーパーレスの問題かと思っています。いろいろな法令の問題、税務申告の問題等もありますけども、紙というものがある、これがデジタルオーディットの適用を非常に妨げている要素じゃないかと思っています。そういう中で、紙からペーパーレスというところのアクションをぜひサポートしていただけるように御検討いただけるとありがたいと思っています。」(谷口臨時委員)
「JMISについては、私も開発に関わらせていただきましたけれども、正直に言いまして、歴史的な使命を終えたのではないかと考えてございます。...
JMISは、我が国企業が任意適用できる会計基準の1つとして位置づけられています。しかし、結果として、JMISの採用企業がいまだにありません。また、ASBJの中に、IFRSのエンドースメントに関する作業部会という専門部会が残っております。JMISの維持には、そういうASBJのリソースを一定使っていかなくてはなりません。そうした諸々を考えますと、JMISの歴史的役割を鑑みまして、一定の成果というか、かなり大きな成果があったことは間違いないけれど、今後のJMISの取扱いを、廃止ということも含めて、企業会計審議会で検討していくことが、必要になってくるんじゃないか、そういう時期に来ているのではないかと考えております。」(熊谷臨時委員)
「住田委員の御指摘とも重なりますけれども、資本市場を支える周辺制度全体の見直し、例えば開示制度で有価証券報告書と事業報告の一体的開示、さらには一本化、それから、四半期の開示の見直しですとか、株主総会の開催時期なども含めて、全体的な見直しを行っていく時期が来ているんじゃないかと考えております。そうした資本市場関連制度の包括的な見直しの全体最適を目指していく中で、監査品質のみならず、それから国際競争力の確保も目指していくべきなんじゃないかと思います。
そうした場合に、こうなっていきますと企業会計審議会だけの議論ではなくて、金融審議会のテーマとも重なってきてしまいまして、恐らく審議会横断的な検討をせざるを得なくなってくると思います。現状ですと、やや縦割り的なところがありますので、そういう審議会横断的なテーマをどうやって検討していくのか、そういったところの課題も分析していっていただく必要があるんじゃないかと考えております。」(熊谷臨時委員)
「先ほど住田委員や熊谷委員から御発言のありましたように、有価証券報告書等における開示では、新しい項目が追加され、情報量が増えているとともに、パッチワーク的な印象を受けるところもございます。作成者、利用者、そして監査人の負担を減らし、活用しやすい制度設計が重要と考えます。特に、会社法の監査報告書日が短時間にやってまいりますので、監査時間の確保が課題になっております。」(金子委員)
金融庁の中でも、企業開示は、企業会計審議会(会計学者の縄張り?)と金融審議会(法律学者の縄張り?)に分かれており、さらに、会社法による開示は、巨大企業から零細企業まで、法務省の所管で、中小企業会計は、経産省が口を出したりと、まさに縦割りの世界です。すぐにどうにかなることはないでしょう。
JMISは早く廃止すべきでしょう。まさに、スクラップアンドビルドが必要です。(万一、JMISを採用する会社が1社でも出てくれば、ずっと基準をメンテナンスしていく必要があるので、ASBJには大きな負担になる。)
四半期に関しては、第1四半期と第3四半期の四半期報告書をなくしたとしても、短信のために決算をやらなければならないとしたら、そんなに負担軽減にはならないでしょう。決算を発表する以上、いい加減なものを発表するわけにはいかないからです。
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