東芝の監査を引き継ぐPwCあらた監査法人の代表執行役へのインタビュー記事。
「2017年3月期から東芝の監査法人を務めるPwCあらた監査法人の木村浩一郎代表執行役が28日、取材に応じ「不正を見逃さない体制を築く」と述べた。本社だけでなく事業部門にも担当を置き、実態に即した会計処理がされているかを確認する。監査チームは国内外合わせて会計士ら500人体制とし、日本の会計監査の信頼回復へ最大規模の陣容で臨む。」
このほか、以下のようなことを述べています。
・海外子会社も含めて引き継ぐ。(国内子会社についてはふれていない)
・500人のうち、国内は100人超
・独立性担保のため、PwCも含め、東芝グループとの(監査以外の)取引関係を解除、見直しする。
・東芝の監査委員会との情報共有を行う。事業部門ごとに担当者を置く。
肝心の、東芝を監査クライアントとして受け入れていいと判断した理由についてはふれていません。ほんの1年前まで、会社ぐるみで監査人に虚偽の説明をしていたわけですから、簡単に引き受けていいものではないでしょう。
そのほか、やや細かい話ですが、監査基準と違うことも言っています。
「木村氏は「不正発見が会計監査の第一の目的ではないが、監査報告書を出す以上は間違っていたらおしまいだ」と話す。東芝が市場からの信頼を確保するためにも「厳格な監査を実施していきたい」と意気込みを語った。」
「監査報告書を出す以上は間違っていたらおしまい」というのは正しいのですが、その前段がちょっと間違っています。「財務諸表監査における総括的な目的」という監査基準委員会報告書では、監査人の総括的な目的として、
「不正か誤謬かを問わず、全体としての財務諸表に重要な虚偽表示がないかどうかについて合理的な保証を得ることにより、財務諸表が、すべての重要な点において、適用される財務報告の枠組みに準拠して作成されているかどうか(適正表示の枠組みの場合は、財務諸表がすべての重要な点において適正に表示されているかどうか。)に関して、監査人が意見を表明できるようにすること」
を挙げています。つまり、重要な虚偽表示にかかわるような不正の発見は、監査の第一の目的に含まれていることになります。不正発見は監査のおまけではありません。(そんなことはわかっているが、口が滑ってしまったのでしょう。)
監査法人概要(PwCあらた監査法人)
東芝の監査報酬は約10億円だそうですから、日数にすれば延べ1万人日ぐらいでしょう。50人が一年中東芝の監査にかかりっきりで1万人日ということになります。他の会社の監査も兼任で100人が関与するということでしょう。
「監査法人概要」によると、あらたは、事務職員を除くと人員は約1,900人です。売り上げの半分は非監査業務のようですから、監査人員は約千人ということになります。東芝の次年度監査が始まる約半年後までに、50~100人を確保しなければなりません。初年度は監査時間がかかるのが普通ですから、もっと必要になるかもしれません。「現有人員+新規採用」からぎりぎりで確保できるかできないかという人数だと思われます。新日本からの引き抜きも考えているのでしょうか。当然、人員確保のめどがつかないのに監査を引き受けた場合には、監査基準違反となります。
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