(評論家が書いた一般向けのものですが)「コーポレートガバナンス・コード」に人権尊重に関する規定が盛り込まれることを取り上げた記事。
「金融庁と東京証券取引所は、上場企業における企業統治の指針である「コーポレートガバナンス・コード」に人権尊重に関する規定を盛り込む方針を固めた。中国のウイグル問題をきっかけに国際社会における人権意識が高まっており、機関投資家は企業に対して人権を意識した経営を求めるようになっている。日本企業の人権意識が低いと評価された場合、投資資金が引き揚げられてしまうリスクがあるため、企業に対して自発的な対応を促すことが狙いだ。」
ウイグル問題について、ファーストリテイリング、無印良品、カゴメの対応を紹介しています。
ウイグル以外にも日本企業はさまざまな人権問題をかかえています。
「今回の指針はウイグル問題がきっかけだが、日本はこれ以外にも数多くの人権問題を抱えており、グローバル社会をよく知る市場関係者からは抜本的な改革が必要との声が出ていた。だが、日本企業あるいは日本政府の人権問題に対する感覚は極めて鈍かったというのが現実であり、長年、この問題を放置してきたといってよい。」
ミャンマー問題については、日本は中国と同じような立場です。
「軍によるクーデターで再び国際社会の関心が高まっているミャンマー問題もその1つである。日本は中国と並んで、人権弾圧が指摘されているミャンマーの軍事政権を積極的に経済支援してきた国だが、ミャンマー問題も一歩間違えば、日本にとって大きなダメージをもたらした可能性がある。」
「各国企業はミャンマーには積極的に進出していなかったが、例外となっていたのが中国と日本である。
ミャンマーは欧米各国から制裁を受けているにもかかわらず、平均6.5%という高成長を続けている。同国の高成長を支えてきたのが中国と日本による積極投資であることは明らかだ。2019年におけるミャンマー最大の輸出先は中国で全体の31.7%を占めており、タイに続いて日本は3位となっている。ミャンマーには、三菱商事、スズキ、トヨタ、ユニチャーム、キリンなど400社以上の日本企業が進出しおり、同国への直接投資額は、香港を区別すると中国よりも多い。」
そのほかにも、「外国人技能実習制度」、日産ゴーン事件で明らかとなった刑事司法の後進性などがあります。
女性差別の問題も...
「広い意味では女性の活用を阻んでいることも人権問題のひとつであり、女性登用と人権保護、そして企業収益はすべてリンクしている。日本では女性問題と人権問題について別テーマだとして反発する人も多いが、これも典型的なガラパゴスであり、国内だけでしか通用しない理屈である。」
他方、中国は、イスラエルやイスラエルを支援する米国を人権侵害だといって批判しています。
ガザ空爆、中国が米国の「イスラム教徒の人権軽視」を真っ向批判(JBpress)
「5月16日、中国を代表する国際紙『環球時報』は、「パレスチナとイスラエルの衝突を緩和させよ、人権を軽視してはならない」と題する社説を出した。中国紙に「人権」という文字が踊ると、思わず目が向くが、その長い記事の核心部分を訳出する。
<パレスチナ問題は、アメリカのイスラムに対する態度を最も切実に映し出す鏡である。パレスチナとイスラエルの衝突が発生したのは、西洋文明とイスラム文明の歴史が重なるホットスポットだ。イスラエルによる東エルサレムの侵略的占領は、多くのイスラム世界にとって受け入れがたいものだ。...
アメリカは、パレスチナとイスラエルの話し合いを進めているが、それは単に二つのうち一つを選択するという状況が起こっている。すなわち、永遠にイスラエルの側に立つということだ。イスラエルを目標にしたハマスなどの襲撃に対しては、ワシントンは一貫して譴責(けんせき)する。だがイスラエルによるパレスチナを目標とした大規模な爆撃は、死傷者の数が比較にならないというのに、ワシントンの批判は甚だ軽微なもので、虚偽に満ちている。
アメリカが新疆ウイグル問題で、声高らかにイスラムの人権保護を謳っていることを考えてみてほしい。そのアメリカが、中東では自ら戦争を発動して多くのイスラムの民間人を殺戮しているのだ。
また、イスラエルによるパレスチナのイスラム教徒への殺害や圧力には、実際とても寛容なのだ。ワシントンのこの二枚舌の態度の背景を考えると、ワシントンの虚偽は、もはやさらに覆い隠せなくなってきている。...」
そのうち、有報の記述が、人権問題に関する踏み絵みたいなものになるのでしょう。
人権、企業が向き合う理由
酒井幹夫氏/カリーヌ・スミス・イヘナチョ氏/若林秀樹氏/大村恵実氏(日経)(記事冒頭のみ)
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