会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

太平洋セメ、純利益3.1倍の過去最高350億円 14年3月期(日経より)

太平洋セメ、純利益3.1倍の過去最高350億円 14年3月期

太平洋セメントの2014年3月期は、連結純利益が前の期比3.1倍の350億円になるなど、好調だったようです。

しかし、同社は、業績予想修正と同じ日に過年度決算の巨額訂正を発表しています。連結には影響しない個別だけの訂正ですが、過去には三洋電機の例もあり、個別だけだからといって軽視はできません。

過年度決算(個別)の訂正に関するお知らせ(PDFファイル)

訂正の内容は、子会社に対する貸倒引当金の計上もれ(約100億円)です。

「平成18年3月期における当社の個別損益計算書において、清澄に対する貸倒引当金103億4300万円を計上することにより、平成18年3月期の当期純損失(個別)が、227億2200万円から、330億6500万円に増加する見込みです。また、その後の清澄の純資産額の変動に合わせ、貸倒引当金を若干調整する見込みです。」(清澄:ゴルフ場子会社)

「誤謬が判明した経緯」を読むと、監査人は、この子会社が債務超過であることと、子会社に対する敷金及び保証金が計上されていたことは、把握していたようです。

もともと、ゴルフ場資産は本体で保有しており、それを平成10年(1998年)に子会社に飛ばしたようです。その際、会員からの預託金債務は本体に残し、同じ額だけ子会社に預ける形をとっていました。その後、減損会計強制適用時期である平成18年(2006年)にゴルフ場資産を減損処理したため、債務超過額が拡大したそうです。引当金がもれていたというのは、このタイミングからです。

2014年3月期になって、この問題が浮上してきた経緯については、以下のように書いています。

「・・・平成25年度に会員からの預託金の預託期間(10年間)の更新期限を迎えるにあたり、会員の退会により減少した預託金について清澄への請求も見込まれたところ、当該請求分に見合う本件預託金については、清澄からの回収は困難と判断し、貸倒引当金の計上を行う方針で当社監査法人に相談しておりました。しかしながら、平成25年度の会計監査が行われていた平成26年3月、当社監査法人は当社に対し、本件預託金について上記のような取扱いではなく、平成18年3月期から貸倒引当金として約103億円を計上すべきであったと指摘するに至りました。」

「なぜ前期までではなく当期に処理するのか」という理屈がつかなかったので、訂正せざるを得なかったのでしょう。(当期儲かったからというのでは理由になりません。)
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