のれん償却廃止を政府が検討するという1月27日の日経記事の背景について書かれた記事。
日経記事に書かれているような動きが本当にあるのか(ベンチャー有識者会議で会計基準について何か決めたからといって、それが政府の方針になるとも思えない)、記事は経産省が書かせたのか、経産省が書かせたとすればどういう意図なのか、それとも、日経が独自に書いたのかなどを知りたいところですが、そこまではふれておらず、のれん償却廃止をめぐる一般的な背景説明にとどまっているようです。
「会計基準の違いが、国際競争する企業にとって大きな障害になっているのだ。巨額のM&Aを外国企業と競った場合、費用計上での業績悪化を気にしなければならない日本企業が不利になるからだ。大型買収に乗り出している新興の上場企業などの間で不満が強い。日経新聞の記事もこうした声を取り上げたものだった。経済産業省の有識者会議で、記事が載った同じ日に一部の経営者が提言することになっていた。」
このような意見がすんなり通るかといえば、なかなか難しいようです。ASBJの独立性を尊重しなければならないということのほかに、いままでの日本の主張を引っ込めるのが難しいという事情もあります。
「日本基準での「のれん」の扱いを変え、経費として計上しない「非償却」にしようという意見がすんなり通る可能性も低い。なぜならIFRS採用に抵抗している反対派が「のれんは償却すべきだ」と強硬に主張しているからだ。
・・・日本基準を作ってきた斎藤静樹・東大名誉教授らが、日本基準自体をのれん非償却に変えることに同意するとも思えない。
実際、IFRSの基準を決める国際舞台で、長年、日本がのれんの償却を主張してきた結果、非償却の問題点なども議論されるようになってきた。それを今さら、足下の日本基準を180度転換するのは、ちょっと無理な相談なのだ。」
IFRS採用企業は、のれん償却問題がきっかけになっているようです。
「日経の記事でも指摘していたが、巨額の買収を実行した武田薬品工業はのれんの負担が重く、IFRSへの変更に踏み切った。エーザイなど他の医薬品会社もIFRSへの変更に動いている。また、住友商事など総合商社も軒並みIFRSに変えた。
M&Aを行い、ビジネスをグローバル化していこうと考える企業は、国際的に通用する会計基準の利用が必須になっている。どちらの基準が得か損かという話ではなく、競合相手の欧米企業と同じ条件で競争できることが大事だと感じ始めているのだ。」
日本基準はのれん償却をかたくななまでに守り続け、それが気に入らない企業はIFRSを採用するというようになれば、むしろそれがIFRS導入促進策になるのかもしれません。会計基準間で競争するのが健全だという考え方もあるようですから、おかしなことではありません。
いずれにしても、記事の題名に「?」がついているように、経産省の意図がよくわかりません。
「これまで経産省はどちらかというと大企業の反IFRS派に与し、日本独自の会計基準を守る方向に動いてきた。経産省がのれんの扱いを変えるよう求める方針を決めたとすれば、従来の会計基準に対する方針を大きく転換したことになる。そうだとすれば、会計の国際化に向けた日本国内の議論が一気に加速する可能性もある。」
「・・・方針を決めたとすれば」とありますが、本当に決めたかどうかが、少しあやしい感じです。ともかく、日経記事が、経産省と日経のどちらか(あるいは両方)による世論操作である可能性は高そうです。
企業開示を所管する金融庁がまったく登場しないのも不思議です。
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