当社に関する一部報道について(PDFファイル)
東邦瓦斯(東証プライム)のプレスリリース(2024年9月11日)。
当サイトでも取り上げた200億円申告もれ報道(→当サイトの関連記事)について説明しています。
「本件は、当社が実需の都市ガス原料の仕入れ価格を安定させるために実施しているデリバティブ取引の評価損益の取り扱いについて名古屋国税局と見解の相違があり、当社がデリバティブ取引の評価損益を都市ガス原料の仕入れ時まで繰り延べたことに対し、税務上の繰り延べ要件を満たしておらず期末時点の評価益に課税するものとして更正処分を受けたものです。
今回の更正処分に関し、追徴税額は 2023 年 9 月に全額納付済みですが、当社は、法令・通達などに照らして適切な税務処理を行ったと考えており、承服できるものではないことから、2023 年 11 月に名古屋国税不服審判所に審査請求を行い、現在、同審判所で審理がなされています。なお、財務会計上は引き続き本件のデリバティブ取引の評価損益に関して繰り延べ処理が認められております。」
原料を仕入れる取引とデリバティブ取引は、そもそも別個の契約に基づく別個の取引です。それを無理矢理紐付けするのがヘッジ会計であり、金融商品会計の一番難しい分野ではないかと思われます。税務が絡んでくるとさらに難しくなるのでしょう。
(ところで、税務当局の主張が正しいとした場合、問題のデリバティブ取引の評価損益の変動(損益計上されない部分)に対する当期の法人税等は、改正企業会計基準第 27 号により、損益計算書の「法人税等」ではなく、「その他の包括利益」に計上されるということでしょうか。リサイクリングまで考えたら頭が混乱しそうです。)
東邦ガス 約200億円申告漏れ指摘に“見解相違で不服申し立て”(NHK)
「関係者によりますと、金融資産の運用リスクを避けるために行う「デリバティブ」と呼ばれる金融商品の取り引きで生じた利益について、「税法上は認められない会計処理をしている」と名古屋国税局から指摘されました。」
このケースでは、金融資産のリスクではなく、仕入れ価格変動のリスクを相殺するための手段でしょう。
専門家のコメント。
「国税庁の元職員で、税制度や税務行政に詳しい中央大学法科大学院の酒井克彦教授は「為替変動リスクなどが高まっている今日では、リスクを回避するためにデリバティブ取引のニーズが、これまでにも増して高まり、今回と同じような税務当局の指摘が今後、増えていく可能性があると思う。悪質な事案ではないが、取り扱う金額やその影響も大きくなるので、企業側には適正な税務申告に向けた細心の注意が求められていると言える」と話していました。」