日本公認会計士協会会長の2024年年頭あいさつです。
「公認会計士がこれからも社会の期待に応え、変化に積極的に対応し、「信頼を創る」という価値を実現していくべく」取り組むとのことです。
「会計監査の信頼性確保や公認会計士の一層の能力発揮・向上」
「上場会社等監査人登録制度の厳格な運用」
「多様な領域で活躍する公認会計士への支援」
「会計リテラシーの普及・定着」
といった言葉が並んでいます。
企業情報開示については、「制度全体を俯瞰し未来を見据えての在るべき姿を検討していく必要」があるとのことで、
金商法改正による「四半期開示制度の見直し」のほか、
「企業と株主との対話促進を目的とした株主総会開催前の有価証券報告書の提出」
「サステナビリティ情報開示の充実及びその信頼性の確保」
「企業の統合報告」
「会社法と金融商品取引法の法定開示書類との一元化」
などの論点を挙げています。
上場会社等監査人登録制度については、まずは、新しい制度からはじかれる監査事務所が出てくるかどうかが焦点でしょう(現在は経過措置で従来からの上場会社監査事務所はみなし登録されている)。中堅以上の事務所がはじかれると、監査難民が発生するかもしれません。制度を「厳格」に運用したら、そういう事態も考えられます。
最近事件化している政治資金問題をみると、会計リテラシーは、児童・生徒・学生だけでなく、国会議員にも必要でしょう。協会からの郵送物には、協会幹部と国会議員が並んで撮っている写真が掲載されたパンフレットが同封されており、コネクションがあるようですから、会計リテラシー・会計倫理の徹底を働きかけるべきなのでは(陳情する立場だから無理かもしれませんが)。
四半期見直しでは、第1・第3四半期の法定レビュー業務が消滅し、会計士協会の歴史でもめずらしい、会計士業務の縮減が生じています。その影響は、今年、どのように出てくるのでしょうか。
株主総会開催前の有価証券報告書の提出は、法定の有報提出期限を半月(確実には1か月)早めるだけで達成できるのではないでしょうか。
サステナビリティ情報開示の信頼性確保というのは、具体的には、サステナ情報を対象とする保証業務のことでしょう。個人的には、あまりおもしろい仕事ではないように感じていますが、たぶん大手監査法人などを中心に熱心に準備しているのでしょう。
会社法と金融商品取引法の法定開示書類との一元化は、法務省と金融庁という役所の縦割りがなくならない限り、難しそうです。会計士協会会長がテーマとして挙げているということは、何らかの目算があるのでしょうか。