三菱商事を例に挙げて、ハイブリッド債の問題点を取り上げた記事。
期限前償還の問題と、期限前償還した場合の格付けの問題があるようです。
三菱商事のハイブリッド債は、18日に期限前償還されたそうです。
「三菱商事が期限前償還したのは15年6月に発行した1600億円分のハイブリッド債だ。60年債として発行されたが、実際は5年で償還した。
社債でありながら信用評価上の資本性も備える点が「ハイブリッド」のゆえんだ。劣後債ともいう。負債を極力増やさず、株式を希薄化せずに資本を拡充する手段として三菱商事に追随する形で三菱地所、イオン、武田薬品工業なども相次いで発行に動いた。
こうしたハイブリッド債は主に超長期債として発行される。だが、期限前償還を発行企業が選択できるオプションが設定され、発行時に設定した最初の行使期間で償還するのが「信義則」(三井住友DSアセットマネジメントの中川朋春シニアファンドマネージャー)。このタイミングでの償還を見送ると支払う金利が上がるように設計されていることが多いほか、企業の信用が損なわれるリスクがあるためだ。」
2020年3月期における会計上の表示区分は、形式上は満期まで55年もあるので、6月に期限前償還する予定であっても固定負債なのでしょう(IFRSでの扱いはよくわかりません)。ちょっと変な感じはしますが...。
格付けの問題は...
「三菱商事が5月8日に期限前償還を公表した直後の同11日、米格付け会社のS&Pグローバルが「劣後債の期限前償還が借り換えなしに実施されれば、三菱商事の格付けへの下方圧力が強まる」と格下げの警告とも取れる発表をしたのだ。
三菱商事は「当初は(借り換えなしの)償還を想定していた。コロナ禍の状況でS&Pの格付けを維持するには借り換えが必要との指摘があったため、投資家目線の選択をした」(財務部)という。最終的にハイブリッド債と同様に資本性が認められる劣後ローンで借り換え、格下げは回避された。」
償還により「資本性」のものがなくなるわけですから、他の条件が同じなら、格付けは下がる方向でしょう。
会計上は負債だから、自己資本は膨らまず自己資本利益率は下がらない、しかし、格付けでは、一部が「資本性」だから、格付けは大きくは下がらないといういいとこどりを続けるのは、なかなか難しいということでしょうか。結局、ハイブリッド債や劣後ローンを継続しなければならないわけで、確実にもうかるのは金融機関なのでしょう。
三菱商事が劣後ローンによる借り換えを決定する前の記事。
↓
第1号劣後債の期限前償還にS&Pが借り換え注文、後続に影響も(2020年5月)(ブルームバーグ)
「劣後債は調達額の一部が資本と認められ、発行体にとって格付け評価上の負債を抑えるメリットがある。三菱商債は発行額の50%が株主資本との扱いだ。ただ、これは発行体が長期間バランスシートに保有する意思があることが前提。S&Pの西川弘之上席アナリストは、借り換えなしの早期償還は「その意思に反するとみなされ、ほかの劣後債、将来発行する劣後債も含めて資本性を認めないという判断になる」と説明する。
S&Pによると、同社が認める資本性が全て失われると三菱商の株主資本は3000億円減少する計算。三菱商の広報部はブルームバーグに対し、借り換えの判断は財務健全性の状況などを踏まえて現在、検討しているとコメントした。」
「ブルームバーグのデータによると、年度内に初回コールを迎える劣後債は三菱商と三菱地所で総額3100億円、21年度にもソフトバンクグループやイオンなど総額2921億円が控える。コロナ拡大に伴う景気低迷で財務に対する格付け会社の判断はさらに厳しくなる可能性もあり、借り換えに対するプレッシャーは三菱商に続く企業にもかかるものだ。」
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