AI技術を用いて不正会計を予測する取り組みについて解説した記事。
「AIが具体的にどのように会計・監査に生かせるのか、という点についての考察や研究は少なく、監査に関して言えば、目先のデータアナリティクスの活用と将来の自動監査の未来予想図の間に情報の空白を感じる状況です。」
これはそのとおりだと思います。AIといっても、データ分析を高度にしたものという感じで語られることも多いようですが、それは誇大表示でしょう。
しかし、実用化段階のデータ分析と将来のAIの間には深い溝があるといってしまうと、話がAIにまで進めないのでしょう。不正会計の予測という分野とAIを(無理やりに?)結びつけて説明しています。
監査法人としての具体的な取り組みについては...
「当法人では、企業の公開情報に基づいて財務諸表単位で不正会計を予測するモデルを構築し、その確率をリスク指標として品質管理の向上に役立てています。リスクが高いと示唆された場合、それが合併などのモデルが想定していない事由によるものであるかどうかを人間の目で確認し、一定の絞り込みを行います。その上で、監査チームに対し、財務諸表にどういった傾向があったためにリスクが高いと予測されたのか、説明や注意喚起を行っています。
この取り組みは、監査手続としてデータ分析ツールを用いてクライアントの仕訳データや元帳・補助元帳データの分析を行う取り組み(以下、データアナリティクス)と幾つかの点で異なります。データアナリティクスは対象となる企業一社について、その内部の詳細な情報を用いて分析を行うミクロレベルのアプローチと言えるでしょう。一方で、不正会計予測モデルの運用は財務諸表などの公開情報しか用いないものの、過年度も含め利用可能な上場企業の財務諸表を広くパターン学習に用いており、他社との比較の中で、企業の財務諸表を相対的に分析するマクロレベルのアプローチになっています。監査の現場では、ミクロレベルの分析により疑わしい取引や仕訳や商品などの抽出を行う一方で、マクロレベルでの分析により監査法人としてポートフォリオ全体のリスク管理・品質管理を行っていくことを目指しています。」
会計監査では会社のデータに直接アクセスできるわけですから、ミクロレベルのアプローチがやはり中心でしょう。公表財務情報による不正会計予測は、補完的な位置づけのようです。監査チームが、木を見て森を見ない状態に陥るのを防ぐ効果もあるのかもしれません。
(公開情報だけであやしいと判断できるのは東京電力ぐらいなものでしょう。AIは不要ですが)
最近の「会計監査・保証業務」カテゴリーもっと見る
最近の記事
カテゴリー
バックナンバー
2000年
人気記事