破綻した独ワイヤーカード社の不正会計の実態がある程度わかってきて、ドイツの監督当局も監督強化に動いているという記事。
「欧州を代表するフィンテックだった独ワイヤーカードの破産申請から1カ月、旧経営陣が長年にわたって組織的に決算の粉飾に手を染めていた実態がおぼろげながら浮かび上がってきた。不正を見逃した監督当局や会計事務所への批判が一段と高まっており、ドイツ政府は監督強化に向けた法改正の検討に入った。」
前CEOらは、5年前から粉飾決算スキームを考えていたそうです。
「検察の調べによると、ブラウン氏ら旧経営陣は5年前の2015年に売り上げや資産を水増しすることで意見を擦り合わせ、その後、偽りの決算情報をもとに銀行や投資家から32億ユーロを引き出した疑いがある。ワイヤーカードの破産申請によって、これらの資金は「失われてしまった可能性がかなり高い」(ライディング検事)という。
水増しの手段になったのが「TPA」と呼ばれる海外のパートナー企業との取引だ。ワイヤーカードはクレジットカードなどの資金決済サービスを請け負う会社だが、免許のないアジアなどでは第三者のパートナー企業を通じて業務を行っている。TPAを通じ、実態のない取引が売り上げに計上されていた疑いが強まっている。」
自社や子会社が直接行っている決済サービスであれば、監査人も、その取引データを入出金のデータと照合するなどして、架空のものではないことを確かめることができそうです(当然、全取引ではなく試査になりますが)。また、膨大な量の取引データを、つじつまが合うようにねつ造するのも困難でしょう。しかし、パートナー企業を通じたサービス提供であれば、もともとの取引データはパートナー企業がもっていて、収益計上はそこからの報告に基づいて行うということにすれば、架空収益計上は比較的簡単だったのかもしれません。
ヤン・マルサレク前最高執行責任者(COO)(ロシアに逃亡した、ビットコインで多額の送金をしたという報道もありました)が事件の中心人物とみられていましたが...
「だが、検察が新たに示したシナリオはマルサレク氏だけでなく、ブラウン氏らの責任を厳しく問うものといえる。少なくとも5年前から粉飾決算が行われていたという見立ては、不正を見抜けなかった独連邦金融監督庁や大手会計事務所のアーンスト・アンド・ヤング(EY)を厳しい立場に追い込んでいる。」
監督強化策の内容は...
「南ドイツ新聞などによると、金融監督庁に対して金融市場に関係するあらゆる企業に特別検査を実施する権限を持たせるなど、監督機能の強化が柱となる。
企業に監査法人を10年ごとに交代することを義務付け、監査法人の助言業務と監査業務も厳しく切り分ける。」
監査事務所の規制強化という方向になりそうです。
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