会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

トレンド、特別益36億円 7~9月、オプション不行使で (日経より)

トレンド、特別益36億円 7~9月、オプション不行使で (記事冒頭のみ)

8月26日の日経朝刊によれば、東証1部上場のトレンドマイクロ(2010年12月期の純利益が127億円の会社)が、ストックオプションの不行使により特別利益36億円を計上するそうです。

「トレンドマイクロは過去に発行したストックオプション(株式購入権)が株価低迷で権利行使できなかったことに対応し、発行費用36億円を2011年7~9月期に特別利益(戻し入れ益)として計上する方針だ。10月以降も同様の利益が発生するとみられ、11年12月期の配当政策を見直す。」

「「戻し入れ益を配当原資とみなすことには抵抗がある」(マヘンドラ・ネギ最高財務責任者)といい、12月メドに配当政策を見直す。」

新株予約権の不行使を利益計上するのは、日本基準独特の処理です。

現行基準でも、新株予約権は資本(純資産)項目であり、発行時には株式の発行と同様の考え方で会計処理されるのに、不行使の際に利益計上されるのは矛盾しています。企業会計原則の「資本取引と損益取引とを明瞭に区分」すべきという原則にも反しますし、純利益に企業の経営努力とまったく無関係な項目が含まれてしまう(自社の株価の低迷により利益が計上されるなど)という点でも問題があります。日本基準は、純利益を重視しているといいながら、こうした基準になっているのは理解しがたいところです。

トレンドマイクロのCFOが、ストックオプション不行使による利益を配当原資とみなすことに抵抗を感じているのは、もっともだと思います。

(ストック・オプションをデリバティブ取引による負債として毎期時価評価する(評価差額は損益計上する)のであれば、つじつまはあいますが・・・。)

(資本項目でもその他包括利益によって生ずる項目はリサイクルによって利益計上される場合がありますが、新株予約権は該当しません。)
名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最近の「企業会計」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事