日本税理士会連合会が定めた「「中小企業の会計に関する指針」の適用に関するチェックリスト」です。顧問税理士が作成・押印のうえ、会社に提出し、会社は金融機関に提出して、有利な借入金利や保証料率にするために使われます。
これをみると冒頭に「私は、貴社の平成 年 月 日から平成 年 月 日までの事業年度における計算書類への「中小企業の会計に関する指針」の適用状況に関して、次のとおり確認を行いました。」とあります。これは「監査」という言葉を「確認」と言い換えただけではないのでしょうか。財務書類の監査証明業務は、公認会計士法上、会計士しかできないはずであり、厳しく解釈すれば公認会計士法の脱法行為です。
また、このチェックリストは勘定科目ごとに、例えば「取立不能のおそれがある金銭債権について、取立不能見込額を貸倒引当金として計上したか」といったチェック項目を確認する形式になっています。もし顧問先の引当金が不足していて、そのために金融機関が損害を被った場合、チェックリストに押印した税理士の責任はどうなるのでしょうか。科目ごとのチェック項目についてチェックしたと言明することは勘定科目ごとに意見を表明していることになり、総合意見しか表明しない監査よりも、(全体では問題がなくても個々の科目で不正があれば責任を負うという意味で)厳しい責任を負うことになります。
以上のような問題点を理解したうえで、税理士の先生方は押印しているのでしょうか。
もちろん、中小企業に正式の監査を求めるのは無理ですし、税理士や、税務をやっている会計士が中小企業の決算書の信頼性を上げるために何らかの関与をするのはいいことです。しかし、監査報告書まがいのチェックリスト提出を求めるような仕組みは、検討し直してほしいものです。
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