会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

有価証券報告書の作成・提出に際しての留意すべき事項ほか(金融庁)

有価証券報告書の作成・提出に際しての留意すべき事項及び有価証券報告書レビューの実施について(平成29年度)

金融庁は、平成29年3月期以降の事業年度に係る有価証券報告書の作成・提出に際しての留意すべき事項を、取りまとめ、公表しました(2017年3月31日付)。

「新たに適用となる開示制度・会計基準に係る留意すべき事項」として、以下の2つを挙げています。

・有価証券報告書の記載内容に「経営方針」を追加する「企業内容等の開示に関する内閣府令」等の改正
・「リスク分担型企業年金の会計処理等に関する実務上の取扱い」等の公表を踏まえた財務諸表等規則等の改正

また、平成28年度有価証券報告書レビュー(法令改正関係審査、重点テーマ審査及び情報等活用審査)を踏まえた留意すべき事項が、別紙(PDFファイル)で示されています。

以下のような事項です(別紙1より)。

1.企業結合等の開示

・主要な取得関連費用が生じている場合、「取得による企業結合が行われた場合の注記」において、その内容及び金額を記載する必要があること(連結財務諸表規則第 15 条の 12 第1項第5号、財務諸表等規則第8条の 17 第1項第5号)

非支配株主との取引によって親会社の持分変動が生じている場合、「共通支配下の取引等の注記」において、非支配株主との取引によって増加又は減少した資本剰余金の主な変動要因及び金額を記載する必要があること(連結財務諸表規則第 15 条の 14 第1項第4号)

2.工事契約に関する会計処理・開示

工事契約に係る認識の単位は、当事者間で合意された実質的な取引の単位とする必要があること(工事契約に関する会計基準第7項)

・工事契約の変更としての対価の変更は、それが何らかの形で合意された時点で、それに基づく信頼性のある見積りができる場合に限り、合意された変更を工事収益総額に反映すること(工事契約に関する会計基準の適用指針第5項、第 21 項)

工事損失引当金の見積りは、合理的な見積データを基礎として行う必要があること(工事契約に関する会計基準の適用指針第6項、第 22 項、第 23 項)

・工事損失引当金の認識は、原則として工事契約の認識の単位ごとに行う必要があること(工事契約に関する会計基準第6項(1)、第 19 項、第 20 項)

3.棚卸資産に関する会計処理・開示

・棚卸資産の正味売却価額については、売価から見積追加製造原価及び見積販売直接経費を控除して算定する必要があること(棚卸資産の評価に関する会計基準第5項)

・売却市場における合理的に算定された価額を売価として用いる場合、当該価額は同等の棚卸資産を売却市場で実際に販売可能な価額として見積ることが適当であること(棚卸資産の評価に関する会計基準第 48 項)

4.包括利益計算書

組替調整額は、当期及び過去の期間にその他の包括利益に含まれていた項目が当期純利益に含められた金額に基づいて計算する必要があること(包括利益の表示に関する会計基準第 31 項)

繰延ヘッジ損益について、ヘッジ対象に係る損益が認識されたこと等に伴って当期純利益に含められた金額を組替調整額として開示する必要があること、また、ヘッジ対象とされた予定取引で購入した資産の取得価額に加減された金額は組替調整額に準じて開示する必要があること(包括利益の表示に関する会計基準第 31 項(2))

為替換算調整勘定について、連結子会社に対する持分の減少(全部売却及び清算を含む)に伴って取り崩され当期純利益に含められた金額を組替調整額として開示する必要があること(包括利益の表示に関する会計基準第 31 項(3))。

年金資産(退職給付信託を含む)の返還に伴い損益として認識した、当該年金資産に対応する未認識数理計算上の差異の金額については、組替調整額として開示する必要があること(退職給付に関する会計基準の適用指針第 45項、第 106 項等)

5.1株当たり情報

ワラントが存在する場合における潜在株式調整後1株当たり当期純利益の算定においては、ワラントが期中に消滅、消却又は行使された部分について、期首又は発行時から当該消滅時、消却時又は行使時までの期間に応じた普通株式数を算定する必要があること(1株当たり当期純利益に関する会計基準第 26 項)

・ワラントが存在する場合における潜在株式調整後1株当たり当期純利益の算定にあたっては、希薄化効果を有するワラントが期首又は発行時においてすべて行使されたと仮定した場合に発行される普通株式数から、期中平均株価にて普通株式を買い受けたと仮定した普通株式数を差し引いて算出した普通株式増加数を用いる必要があること(1株当たり当期純利益に関する会計基準第 26 項)

6.重要性の判断

重要性が乏しいことを理由として記載を省略する場合には、重要性の有無について、慎重かつ総合的に検討すべきことに留意されたい(「企業会計原則注解」注1、「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」第 35 項等)。

また、平成29年3月期以降の事業年度に係る有価証券報告書のレビューの実施についても公表されました。以下の内容で実施されます。

(1) 改正が行われた会計基準等の適用状況の審査

以下に関連する会計基準等の適用状況について実施

・ 繰延税金資産の回収可能性
・ 企業結合及び事業分離等

(2) 情報等活用審査

適時開示や報道、一般投資家等から提供された情報等を勘案して審査を実施
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