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企業会計審議会総会議事録(平成29年9月8日)(金融庁)

企業会計審議会総会議事録

9月8日に開催された金融庁の企業会計審議会総会の議事録が公開されました。

ASBJからの報告などもありましたが、メインは会計監査の議論だったようです。

越智副大臣のあいさつより。

「さらに近年、国際的な潮流として、金融危機の発生により損なわれた会計監査への信頼性を確保する観点から、会計監査に関する情報提供の充実・透明性の向上のための取組みが進められつつあり、我が国においても「監査報告書の透明化」など、会計監査に関する株主などへの情報提供を充実させていくことが課題となっていると考えております。」

副大臣にこういう挨拶をさせたということは、一応やるつもりなのでしょう。

企業開示課長からの監査をめぐる動向に関する説明より。

監査人ローテーションについて。

「監査法人のローテーション制度につきましては、ほかにもいろいろ調べるべきことがあるということでございまして、今後、国内の監査法人、企業、機関投資家等関係者からのヒアリングを実施いたしまして、さらなる調査・検討を進めていくことが適当であると考えておりまして、引き続き調査・検討をしていく方向でございます。」

KAMについて。

「「在り方懇」の中ではいろいろな開示の情報提供の充実方法についてご提言を頂戴いたしておりまして、..その中でなかんずく「監査報告書の透明化」について検討すべきというご提言を頂戴したわけでございます。

「今回、透明化として議論されている中身につきましては8ページ目以降にございますように、監査におきまして監査上のリスクというものについてどう考えたかということとその理由、それからそれに対してどういう監査上の対応をとったか。また、それが企業の開示する情報上、どういうところに書いてあるかということを記載することが実務として諸外国で入ってきているということでございまして、その具体的な義務づけの内容については、国によってやや異なっているところがございますが、今ご紹介させていただきました記載事項は、先ほど申し述べたIAASBにおきまして合意をされた内容でございます。」

海外動向、経団連などとの意見交換での意見の内容などについてもふれています。

委員発言より(監査報告に関係する部分)。

岡田委員(三井物産㈱常勤監査役)「KAMについてなのですけれども、私としては制度の有無にかかわらず、個々の監査現場で監査人と会社が監査リスクや決算の不正、誤謬リスクについて真摯に議論するということは大変有意義なことだと思っております。一方で、私は監査役協会の副会長という立場もありますが、利用者への情報提供、監査役等とのコミュニケーションの強化など、監査報告の透明化の狙いは協会内部での説明会を通じ十分に理解をしております。導入する場合は監査役等としても所期の狙いが達成できるよう努力する所存でございます。

しかしながら、海外では、UKなどの例はございますが、日本では企業統治、ガバナンスに係る制度が違いますので、監査役等に何が求められるかということなどが明確にならないと、実務における混乱も懸念されます。日本の制度に合わせた調整は必須だと思います。」

水口委員(アナリスト)「財務諸表利用者といたしましては、会計監査上のリスクに関する情報、つまり通常KAMといわれているものによって、注目すべきリスクの所在の勘所を押さえつつ、有益な企業との対話を何度も積み重ねることで、先を見据えた形でさまざまなリスクがどのように企業の財務を圧迫し得るかということなどについて、理解がより深まることを期待するところです。」

関根委員(会計士協会会長)「ただ、同時に注意にしなければならないのは、KAMは諸外国で導入されていますけれども、それをそのまま導入して、日本で実効性のあるものになるのかどうかは、よく考えていかなければいけないことです。先ほどご紹介がありましたように、実効性のあるものにするために、私ども日本公認会計士協会において、監査人及び作成者の方々のご協力をいただきながら、試行的な取組みを進めているところでございます。」

八田委員(青山学院大学)「今回のKAMの議論を見てみると、どうもそういった方向に行きたいのかなと。つまり、監査人が提供する情報を増やすとともに、さらにその情報利用者との対話あるいはコミュニケーションを強化するためには、もっと多くの情報がいるのだと捉えられています。しかし、実はこれについても昔は議論があって、外部監査の場合、一般大衆投資家保護に対して、本当に長々とした監査報告書が必要なのか。そうではなく、結論だけを端的に表明することの方が分かりやすいし、投資家はその監査結果がどういうものなのかを踏まえて、財務諸表の利用度合いを考えていくことになる。これも一理あると思うのです。...」

「...考えなくてはならないのは、現行の短文式監査報告書はやはりだめなのか、どこに欠陥があるのか。そして、それを補強、補充するために本当に長文式にするべきなのか。そうではなくて、このKAMの部分は単なるアペンディックス、すなわち補足資料とか附属資料という形での開示でも良いのではないか。ただ、プロの投資家、アナリスト、こういう方々は、それなりの知見もありますから、別枠で、詳細な監査関連情報を開示すれば十分なのではないかなという視点もありますから、ぜひ監査報告書のありようについての議論を深めるべきだと思います。先ほど関根委員がおっしゃったように、海外ではこうだからというよりも、日本の投資家、市場、あるいは利害関係者にとって納得いく方向の姿を見届けていくことが極めて重要だと思います。」

挽委員(一橋大学)「結果だけではなくて、その結果に至る監査プロセスを開示することになれば、企業の側も今まで以上に監査法人の方とのコミュニケーションも増えるでしょうし、監査プロセスを開示することが企業の側にいい影響、つまり監査法人による監査への協力姿勢が改善ないし向上され得るのではないかと期待されるわけです。つまり、透明化というものは情報利用者だけではなくて、情報作成者側である企業にも影響を与える。監査法人が監査をする際に、重要なリスクがあるところに集中できるように企業側が情報を積極的に提供したり、インターラクティブなコミュニケーションをはかることにつながるのではないかと考えております。」

住田委員(会計士協会理事)「今まで監査報告書の記載内容について、監査法人の同僚や作成者の立場の方等と議論をするというようなことはまずなかったと思うのですけれども、実際に出されている監査報告書のKAMの記載を読んで「こんなことまで踏み込んだ記載をする」と思うものと、至極あっさりとした記述で「利用者にとっては追加的な情報価値はないかも」と思うようなものまで、内容も数も千差万別です。この千差万別ということがKAMにとっては非常に重要なことなのだろうと思います。いろいろな立場の人が監査報告書を読んで、いろいろな感想を持って、それを議論し合う。そういう情報提供機能ということが今、求められてきていると感じております。あらゆる産業で顧客志向に基づく改革というものが起きてきましたが、その波が監査というサービスについても波及してきたと受け止めています。」

監査の学者や会計士(協会役員)の中でも意見が分かれているようです。慎重派は関根会長と八田教授、積極派は挽教授と住田理事というところでしょうか。そのほか、監査役協会は慎重派、アナリスト協会は積極派という感じです。

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