第三者委員会、不祥事の責任どう果たす 国広正氏/久保利英明氏/伊藤ゆみ子氏/三瓶裕喜氏(記事冒頭のみ)
企業不祥事の際に設けられる第三者委員会について、弁護士ら4人に聞いた記事。
はっきり対立しているわけではありませんが、そのうち3人は、第三者委員会を改善すべきという意見で、1人は第三者委員会という仕組み自体にやや批判的です。
弁護士 国広正氏。
「第三者委員会には不良なものもある。ステークホルダー(利害関係者)を代表するはずが、独立・中立性を欠いたり、弁護士のビジネスとして会社側に甘くなったりするケースがある。」
「外部専門家が忖度(そんたく)せず徹底的に事実と真因を究明すべきだ。その上で利害関係者に説明し、再発防止や再生につなげる。企業社会を透明化し、他山の石となり得る。」
「会社法に沿えば、社外取締役や社外監査役が第三者委を主導するのが本来の姿だが、それほど世の中に信頼されているだろうか。社外役員が調査対象になることも多い。社外役員は平時の苦い薬、第三者委は非常時の苦い薬であるべきだ。」
弁護士 久保利英明氏。
「近年の報告書は、安易に結論を出しているものが多い。億円単位の費用をかけたにもかかわらず、不祥事の「真因」を究明できていない。
原因の一つに、第三者委の独立性が確保できていないことがある。メンバー選定は最高経営責任者(CEO)主体になりがちだ。結果として、経営陣に寄り添うような弁護士を選ぶことにつながる。」
「経営陣から独立した第三者委をつくるには、取締役会改革が不可欠だ。第三者委のメンバーは、業務執行者から独立した社外取締役が主導する取締役会が選任すべきだ。」
「独立社外取が機能すれば、米国のように社外取だけで不祥事の調査を担う法律事務所を選定することもできる。調査のあり方も変わっていくだろう。」
神戸製鋼所社外取締役・弁護士 伊藤ゆみ子氏。
「日本弁護士連合会の指針に沿った運営については、シャープで執行側の役員を経験し、複数企業で社外役員を務める立場から、批判的にみている。
同指針は「第三者委は、報告書の内容を提出前に当該企業に開示しない」と定めるが、不祥事後もビジネスは続いている。当局や金融機関、取引先や顧客などから様々な意見や質問を受ける企業が「報告書が出るまで何も分からない、言えない」では、つらい。
顧問弁護士は一律に「企業と利害関係を有する者として委員に就任できない」など委員の形式的な独立性を強調する。しかし、会社の内情を知らない弁護士などが限られた期間で、会社側の意見聴取もなく、本当に事実認定や真因分析ができるのかという不安は残る。
同指針は「調査報告書は原則として開示する」と求めるが、米国などで訴訟を受ける可能性のある企業には法的リスクが大きい。私が社外取に就く前の2018年、神戸製鋼所は品質不正問題で外部弁護士の調査報告書の公表を避け、自社名義で概要を説明した。
なにより現状の第三者委は、誰からもガバナンス(統治)されておらず、誰にどのような責任を負うのかよくわからない点が問題だ。調査費用や報告書の質を検証する仕組みもない。
米国企業が不祥事を起こすと、社外取が調査委員会をつくって弁護士に調査を依頼することが多い。報告書は一般に非公表のようだが、米証券取引委員会(SEC)などの規制当局や検察の評価にさらされる。」
アストナリング・アドバイザー代表 三瓶裕喜氏。
「第三者委について重視するのは、不祥事からの独立性だ。社外取が主導した調査を推す声もあるが、事案が発生した時にいた社外取は監督不行き届きであり、むしろ調査対象となる。
執行側が設置したとみられる社内の調査委員会に社外専門家として参加した弁護士らが、引き続き第三者委を担う実務も投資家には好まれない。問題に対して新鮮な第三者の目で見て、新たな発見が生まれることを期待するからだ。」
これら弁護士の意見を読むと、社外取締役が機能するようになれば、社外取締役の主導と責任で、外部専門家と契約し調査させるという方向なのでしょう。
監査法人のビジネスとしては、会計不祥事に関しては、同グループの弁護士法人と一緒になって、ワンストップで対応できるというのを売り物にしていくのかもしれません。監査法人が絡んでいれば、一応、独立性確保にはなれているはずであり、職業倫理上のしばりもあるでしょう。(会社に監査法人対策を指南していながら、調査委員会に入って、その監査法人をたたいて、会社の責任を軽くしようとするといったことも、独立性を厳しくすればできないはず)
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